勇気と侠気を手に入れろ! 第2回

(初出:第48号 01.3.20)

勇気と侠気を手に入れろ! 「おじゃる丸」Ver.
    原案・制作 萩原晃一 
全シナリオ(決定稿版)01.2.13
発行人より注釈:
パロディとしての著作権等の問題につきましては現況を鑑みて問題無しと判断しております。
「おじゃる丸」について説明しておきますと、NHK教育にて月〜金朝7:46〜、夕17:30〜放映中の10分アニメであります。今までご覧になったことのない方が、この作品を読んで少しでも興味を抱かれることを願います。(01.2.20 ページ作成・SD発行人 高橋 基樹)
「おじゃる丸公式ホームページ」http://www.nhk-sw.co.jp/chara/ojaru/

(本編)
(背景変更中..続き)
(見るからに江戸時代の長屋風が立ち並ぶ舞台。
立ち尽くすオズマ。どうだと言わんばかりにオズマを見つめるデンポ)
オズマ「...ねえデンポ、ここって浜さんの店の前だよね。」
デンポ「左様にございますよ。」
オ「(舞台奥の背景を見回しながら)...気のせいかな?「喫茶満腹」が見当たらないんだけど?」
デ「いえいえ、目の前がそうでございます。」
オ「あ、そう?改装でもしたのかな?
(遠くを見て)あれえ?ここから僕ん家のマンションが見えるはずなんだけど..どこにもないよ。」
デ「勿論でございますねえ。」
オ「何で?」
デ「オズマ様のお宅である「スカイヒルズ日光町」が出来たのは平成6年のこと。オズマ様3才の時でございましょ?この時代には当然ありませんのでございます。」
オ「この時代って...今はいつなの?」
デ「江戸は文政5年にございます。」
オ「江戸時代!?僕が行きたかったのは..
デ「浜様の店にございますよね?はい、ここがまさに浜様のお店にございます。本日よりこちらにて開店しておりますよ。
「次元の狭間」をくぐれば、ほれこのように時間空間ひとっとび!ささ、用件をお済まし下さいませ!」
オ「時間って!時間は元のまんまでいいんだよ!回覧板は今すぐに必要なものなんだから!こんな昔に渡したって、分かるわけないじゃない!」
デ「何と!浜様に渡す重要なものとのことでしたから、確実にお渡し出来る日を選んだつもりでしたが...!」
オ「フウ、いい?デンポ。回覧板って、2、3日で町内を一周するお知らせを書いた紙なんだよ。何年もかかるものじゃないんだから、江戸時代の浜さんに渡したって、何のことか分からないよ。」
デ「ヒエー!!そうでございましたか!?
このデンポ、うかつにも早とちりしてしまいました〜っ!このお詫びはいかにして..
オ「もういいよ、デンポ。はっきり言わなかった僕も悪かったしね。」
デ「何とお優しいお言葉!このデンポ感激のあまり身が震えております〜!」(身を震わす)
オ「ちょ、ちょっと落ち着きなよデンポ。
それより、ここって江戸時代の日光町?うわー、何だかすごいなあ。「次元の狭間」って、ほんとにあっという間に移動出来るんだね!
...ところでここから戻れるの?ねえ、デンポ。いつまでも震えてないで。」
デ「へ?あ、はい。「次元の狭間」は出たところからも戻れますし、町内にいくつか開いておりますので。今度こそ確実に浜様の店へ!」
オ「そうなんだ、良かった。..でも、(辺りを見回し)すぐに戻るのは何だかもったいないな。
浜さんの店も分かったし、デンポ、ちょっとだけこの辺、散歩しない?」
デ「ようございますよ。オズマ様のお好きなように!私もお供させて頂きます。」
オ「ほんと?じゃあ早速..浜さんのお店に寄ってみようか!」
デ「はい、でございます。」
(すぐそばの店先に行き)
オ「へー、すごいね、時代劇みたいだ。こんな昔から浜さんの店ってやってるんだ。」
デ「こちらが「喫茶満腹」の前身、「満腹茶屋」にございます。ご主人は浜舞ノ介様。オズマ様の時代の浜様の15代前の方にございますね。」
オ「というと浜さんの曾々々..とにかくすごい前のおじいちゃんだね!
デンポ良く知ってるねえ!」
デ「いえいえ、日光町のみに生息する我等一族は、日光町のことなら全て把握しておりますですよ!
..といっても知らないことは全然知らないのでございますが。」
オ「だから言い方が何か違うような気がするんだけど..あ、じゃあさ、僕のおじいちゃんの事も分かる?」
デ「ええ!...はて...それは...オズマ様の一族である谷村家が日光町に越してきたのは先ほども言いました通りオズマ様3才の時でございま..すねえ?その後のことは分かるのでございますが..残念ながら...」
オ「ん?そうだっけ?
..そうか、そうだったね。まあいいや、僕まだ若いんだから、過去を振り返ってもしょうがないしね。」
デ「オズマ様もずいぶん枯れた物言いをなさいますね。」
オ「そう?僕小学生なんだけど?
それより、ずっとこうやって店の前で立ち話してるけど、誰も出て来ないよ。」
デ「そうでございますね、はて?
(奥に向かって)もし、誰かおられませぬか〜?」
オ「すいませーん。...何だか誰もいないみたいだね。」
デ「そのようにございますね。オズマ様、いかがなさいますか?」
オ「うーん、浜さんの...ご先祖様が出てきても、僕達お金ないからお茶も飲めないし..向こうも僕達が誰か分からないだろうから..
いいか、あっちに行ってみよう、デンポ。」
デ「お留守では仕方ありませんね。
参りましょうか。」
(「満腹茶屋」撤収)
(歩きながら)
オ「んん?デンポは何でも知ってるんじゃなかったっけ?」
デ「はい?何かおっしゃいましたか?」
オ「ん〜ん、何でもないよ。
僕、小学生だから難しいこと分かんないし...何より、ここは日光町だもんね!」
デ「おや、何やら怪しげな人物があちらに...」
(お茶仮面登場)
オ「あれ?浜さんじゃない?」
デ「どうやらそのようでございますが...オズマ様何故にお分かりになられたのでございますか?」
オ「だって浜さんって言ったら日光町を守る「紅茶仮面」をやってるって、みんな知ってるよ。あ、そうか、ここは江戸時代だっけ。じゃああの人はまさか..」
デ「そうでございます、浜様のご先祖、浜舞ノ介様にございます。」
オ「ずーっとやってるんだ..。ほんとに町のこと考えてるよなあ。
(コソコソと屑拾いをやっているお茶仮面に寄って)ねえ、浜さん。何やってるの?」
浜舞ノ介「ギクッ!
...坊や、何のことかな?私は「お茶仮面」ですよ。浜なんて人、知りませんね。」
オ「うわー、言い方も浜さんそっくりだあ!
浜さんもよくやるんだけど、たま〜にお店のエプロンつけたまま変身してるんだよね。この浜さんもお茶屋さんの前掛けしたまんまだよ。」
デ「はあ〜、言われてみれば確かに、「満腹」の屋号が書かれた前掛けをしておりますね。浜様、正体がバレておりますよ。」
浜「ギクギクッ!
...うっかりしていました!困りましたね..どうしましょう...
(向き直り)坊や達、私が浜舞ノ介だということ、どうか内緒にしてくれませんか...?」
オ「うん、いいよ。この時代で教える相手もいないし、現代でも一応、秘密ということになってるしね。」
デ「私も構いませんでございます。どちらにせよ我々の仲間内では話す必要もありませんし。」
浜「そうですか!有難うございます。日光町を守る「お茶仮面」は、正体を誰にも気付かれずに町のためのいいことをするのが使命でして...うーん、この前掛けをしたままでは..し、仕方ありませんね。今日の活動は止めにしましょう。
ちょっと待っていてくださいね...。」
(舞台裏で仮面を外して)
浜「やあ、お待たせたしました。今日から開店した「満腹茶屋」の主人、浜舞ノ介でございます。(逆方向を見て)「お茶仮面」はいずこへと消えたようですね。(オズマとデンポはちょっとシラけた表情)
ぼ、坊や達。黙ってくれるお礼に、お茶とお菓子を上げましょう。ささ、一緒に店まで行きましょうか。」
オ「いいの?わー、やったね、デンポ。」
デ「はい、ようございましたねオズマ様。せっかくですから浜様のご好意に甘えるといたしましょう!」
(3人退場)
(暗転)
(「満腹茶屋」店内。オズマ、デンポ、浜にお茶を振る舞われている。)
浜「それにしても、坊や達はあまり見かけない感じなのですが..どうして私の名前を知っているんでしょう?どこかでお会いしましたかね?」
オ「えーとね...僕達は実は..
デ「こ!こちらのお店が出来る前に通りかかりまして、浜様に何が出来るのかお尋ねしたのでございます!一月ほど前でございましょうか..
オ「(コソッと)デンポ...!何さその話...!」
デ「(コソッと)しーっ!過去をあまりいじると元の時代に帰れなくなってしまうのでございます!込み入った事情はお話しになられない方がよいのでございます!ここはこのデンポの話に合わせてくださいませ!」
浜「一月前ね..はて、あの頃は棟上げした直後でバタバタしていましたからね..そういえばそんな事を聞かれたような気もしますが..
オ「そ、そうそう!そしたら「お茶屋さんになる」って言われたから、僕達楽しみにしていたんだよ!」
デ「そうなのでございます!今日が開店初日ということで、駆けつけてみたのですが..お留守のようでしたので、帰る途中だったのでございます!」
浜「そうだったのですか。いやいや、それは申し訳ないことをしました。
私も開店したばかりで張り切っていたのですが、ついついいつものクセが出て..お客様の跡絶えた途端に思わず「お茶仮面」に..いやいや、それは秘密の話..
オ「いいんだよ、浜さん。そっかー、お茶屋さんだから「お茶仮面」なんだね。で、喫茶店だから「紅茶仮面」なんだ。..すごい歴史なんだね!何百年も代々続いてるんだもん..
浜「ええ?確かに「お茶仮面」は私の祖父の頃から始まった話ですが..何百年も続いているわけでは..それに「こうちゃ仮面」とは一体..?
デ「(割り込んで)いや〜〜!!しかし立派な店にございますね!間取りも広いし、店の外観も見事なつくりにございますよ!」
浜「ええ?へへ..そんなに凝ってはいないんですけどね。皆様のくつろげる場所になればと思いまして..ほれ外にもあのように長椅子を並べて..(外のほうに動く)
デ「(コソッと)オズマ様!せっかく話がうまく逸れましたのに、また危ない話を!」
オ「(コソッと)ごめんごめん、浜さんのご先祖様に会えてるから、うれしくてつい..」
デ「(コソッと)ともかく、慎重にお話しくださいませ!」
浜「(戻ってきて)どうか、しましたか?」
オ「あ〜いや〜(グルリと見回して)
あ、琴がある。浜さん、これ、浜さんが弾くの?」
浜「ええ、(ちょっとテレながら)これでも師匠でして...ま、お茶を飲んでいる皆様に、くつろいで頂ければと..」
デ「それは良い趣向でございますね!お茶を飲みながら、のんびりと琴の音を聞いて..(ウットリして)ゆったりとした時間が過ごせそうでございます!」
オ「へえ〜、ちょっと聞いてみたいねデンポ!浜さん、弾いてくれないかな..?」
浜「そうですね、ではちょっと弾いてみましょう。」
(浜、琴の方へ)
デ「オズマ様、ナイスフォローでございます。」
オ「え〜?何が?」
デ「ですからうまく話を逸らしましたでございますね。」
オ「話を逸らす?そんなこと僕した?」
デ「え...いえ、お気になさらずに。
ハーッ、少々ピントがズレているようでございますねオズマ様は。先が思いやられます。」
オ「あ、ほら始まるよ、デンポ。」
(ひとしきり琴の演奏。のんびりする二人)
(源太登場)
源太「よっ!舞さん来たぜい。お茶おくれ!」
(浜、演奏を止め)
浜「これはこれは。いらっしゃい、源さん。仕事は終わったのですか?」
源「いや、ちょっと一休みだ。舞さんの店の初日だからな、何はさておき駆けつけたって訳よ。」
浜「それはどうも。
(向き直り)坊や達、演奏はここまででいいかな?ちょっとお茶の支度をしないといけませんので。」
オ「うん、どうも有難う。すごく良かったよ!」
デ「ハーッ..結構なものを聞かせて頂きました。是非最後まで聞かせて頂きたかったのですが..浜様、有難うございます。」
浜「こちらこそ、有難う。じゃあちょっと失礼しますよ。」
(浜退場)
源「おや、かわいい坊やだな。いくつだい?」
オ「10才です。おじさんは?」
源「お、おじさんって...お兄さんといってくれよ。25のチャキチャキなんだから!」
オ「へえー。で、何をしてるの?さっき仕事の途中だって言ってたみたいだけど。」
源「うん?お兄ちゃんはな..うーん、つまり浪人の身なんだ。で、今は金魚売りをしてる。「金魚〜え〜金魚〜!」ってな。」
デ「そして前は傘張り、魚屋の見習い、大工、と転々と職を変えているのでございますね。金魚売りも一月後には辞め、絵師に弟子入りするのでございます。」
源「な、なんだお前さんは?この源さんの職歴を何故そこまで知っているんだい?」
デ「はっ!ついつい過ぎたことを話してしまいました!
源太様、失礼致しました!」
源「い、いや、その通りなんだから仕方ねえ。それよりも、俺の身の上がそこまで知られてるとは驚きだあ!ちったあ俺も有名になったってことかな?はっはっは!」
オ「源さんって言うんだ。うーん、何だろう?誰かに似てる気がするんだけど...知ってるような気がするんだよなあ。」
源「おっ!?誰だい?歌舞伎役者かい?それともどこかの殿様かい?」
オ「いや〜そうじゃなくて、すっごい一生懸命仕事をしてるんだけど、何かタイミングが悪くて、ちょっと頭の足りなそうな...
デ「次から次へと職を変えては、自分探しの旅を続ける、フリーターのタケシ様にございましょ?源太様はそのご先祖様にございますよ。」
オ「そうそう!」
源「おいおい、何だか良く分からんが、あまりいいことを言ってないようだな。」
デ「はっ!またしても失言を!い、いえいえ、今のはすべて誉め言葉にございます!」
オ「そ、そうそう!自分の存在意義を見い出して世の中のためになるような大人物になることを目指している、えーとえーと..何だか僕もよく分かんなくなっちゃったけど、とにかくすごい...知り合いに似てるって話しだよ!」
源「そうかい?まだ良く分からないけど、ともかく誉めてるんだな?ありがとよ!」
デ「ふーっ。間一髪にございます...。」
源「それにしても遅いな、おーい、舞さん、お茶はまだかい?」
(N.A)浜「はーい、今お持ちします。」
オ「でもさデンポ。江戸時代ってそんなに色々職業って変えられたっけ?確か駄目なんじゃなかったかなあ。」
デ「オズマ様...小学生はそんな突っ込んだ話はしないものでございます。
それになんと言ってもここは日光町なのでございますから!今後はこの手の矛盾には触れないで下さいませ。」
オ「う、うん。分かったよデンポ。自分の首を絞めることにもなりかねないもんね!」
デ「(独り言のように)...オズマ様は本当に小学生なのでございましょうか...」
(浜登場)
浜「はいはい源さん、お待たせしました。」
源「ほーう、これが舞さんの入れたお茶か。
(グーッと飲み)あ、あちゃちゃちゃ、熱い、熱い!」
オ「..やっぱりどこか抜けてる。」
デ「しーっ!これ以上の失言は..!
は、浜様。私どもそろそろお暇いたしとうございます。」
浜「おやそうですか。もっとゆっくりして下さって結構ですのに..。」
デ「いえいえ、私どもこれから少々用事がございますので..今日はこの辺で。」
オ「そうだった!浜さん、お茶とお菓子どうもごちそうさま。このお礼に今度はちゃんとお金払って飲みに来るよ。数百年後になるけどね..
デ「あーっ!どうもごちそうさまでございました!では失礼いたします!」
(デンポ、オズマの手を引いて店を出かかる)
源「坊や達、又会おうな!」
オ「それは無理だけど、タケシさんと会えば源さんに会うのと同じことだよね、やってること変わってないし..
デ「ヒーッ!それでは皆様ご機嫌よ〜〜う!」
浜「あ、約束の件、くれぐれも頼みますよ〜!!」
(デンポ、オズマ退場)
浜「はて、不思議なお客さんでございました。」
源「何だかこの辺じゃ見かけない坊や達だったな。
ま、それより舞さん。お茶、うまいよ!いやーこれならお茶屋で立派にやっていけるね。」
浜「それは有難うございます。」
源「俺もね、今の仕事辞めてまた違う職をやろうかと思ってるんだ。どうも今の仕事が向いてないんじゃないかなーっ、と思っててさ。新しい仕事はね、まだ全然芽が出てないんだけど「長井髪世」っていう絵描きさんがいてね。今度手伝いに行くんで、そのまま弟子入りってことにね...
浜「源さん...一つの仕事を長続きさせた方が...。」
(暗転)
(茶屋店内撤去、浜、源退場)
(デンポ、オズマ登場)
デ「オズマ様!最後の台詞はスレスレでございます!私もうハラハラドキドキものでございましたよ!」
オ「ごめんごめん、ついつい言いたいことが出ちゃったみたい。
それより、どうする?ここからすぐに戻れるんだよね。」
デ「あ、それはもう無理でございます。出た先から戻れるのは一定時間内でのお話し。時間が経てば出た場所の狭間は閉じられてしまいます。今からは固定の狭間を探すしかありませんのでございまして..この辺には..(キョロキョロと見回して)ないようでございます。はい。」
オ「そっか、でも良かった。あっという間に戻れるんだから、もうちょっと見て歩きたかったんだ。
さ、じゃあ「次元の狭間」を探しながら行こう!」
デ「なるべく穏やかに行きたいものでございます...。(オズマが先に歩き出す)あ、お待ち下さい、オズマ様〜!」
(散歩をしている感じにダンス。デンポは徐々にフェード・アウト)
(デンポ退場。ダンスここまで)
オ「へー、ここからは山道だ。登ったら町中が見渡せるのかなあ?」
(舞台奥へ行こうとすると、袖から川下登場。鼻唄を歌いながらオズマにぶつかる)
川下「ああ〜。すいません。すいませ〜ん。」
オ「いててて..おじさん、気をつけてよ。」
川「はい〜。うっかりよそ見をしていたものですから..気をつけます〜。
(以下独り言っぽく)...はあ〜、僕はダメなやつだなあ..」
(川下を横目に奥へ行こうとするオズマだが、通り過ぎようとするとフラリと川下が邪魔をする。フェイントをかけたり、色々試すが通れない)
オ「ちょっとおじさん!僕ここ通りたいんだけど!」
川「はい〜。私も邪魔にならないようにと思うのですが〜。何故かあなたの動きとかぶってしまうのです〜〜。」
オ「...おじさんわざとじゃないの?」
川「はい〜。私も急いでいるのです〜。早く店に戻らないとダンナ様に〜。ああ!また怒られてしまう〜〜。」
オ「あ!そうだ。じゃ、僕は動かないからおじさん、早く通ってよ!」
川「ああ、どうも有難うございます〜〜。それではご機嫌よう〜」
(川下、あっさり退場)
オ「やれやれ、何だったんだろ?
まあいいや、(舞台裏に向かって)デンポ、先に行ってるよ〜?」
(再び袖から今度は侍風の小本田登場。体育教師のように走ってきて、オズマの目の前で体操を始める)
小本田「オイッチニ、サンシ!いやー山道を走るのは気持ちがいいなあ!爽快、爽快!!ゴーロク、シチハチ!」
オ「ちょっとおじさん!」
小「んー?何だあ、君は?ニーニ、サンシ!君も一緒に体操するかあ?んー?」
オ「そうじゃなくて!僕ここを通りたいんだ!ちょっとどいてよ!」
小「ゴーロク、シチハチ!そう言われてもなあ。サンニ、サンシ!私はいつもこの場所で体操をするのが日課になっているんだ。ゴーロク、シチハチ!まあ終わるまで待っていてくれたまえよ。シーニ、サンシ!どうだい?君も?気持ちいいぞお!ゴーロク、シチハチ!」
オ「はぁ。..いいよ、待ってる。」
(この後10拍までやってやっと深呼吸)
オ「...終わった?」
小「いいや?ようやく第一が終わったところだ。次は第二体操〜!」
オ「(即座に)一体いくつまであるのさ!?」
小「拙者の考えたこの「東海道体操」は、その名の通り東海道五十三次、第五十三まであるぞー!まだまだ、旅は始まったばかりさ、ワッハッハッハ!!」
オ「...はああああ、もういいよ。」
(オズマ、小本田から離れる。小本田退場。入れ替わりにデンポ登場)
オ「ねえデンポ。何だかここから先へ行こうとすると、どうっしても邪魔が入るみたいなんだけど。山に登れないんだ。」
デ「はい、ああ、それは..ここが日光町と他の町との境目になるからでございます。「次元の狭間」を抜けてきたものは、日光町の外に出ることは出来ませんのでございます、よ。」
オ「なるほどね、どうりで行けないわけだ。じゃここは町外れなんだね。
...デンポ、そろそろ戻ろうか。何だか一気に疲れちゃったよ...。」
デ「左様でございますか。では「次元の狭間」を..(キョロキョロと見回して)ふーむ、どうやらこの辺にも無いようでございますね。もう少し、探さないといけないようでございます。」
オ「そっかー。うーん、どっちに行こう。(奥の方を指差して)こっちは町の外だから行けないでしょ。(出てきた方を指差して)来た道には..無かったんだよね?」
デ「はい、でございます。」
オ「(客席の方を指差して)こっちに行ってみる?デンポ。」
デ「今までの道には見当たりませんでしたので、こちらでいいといえばいいのでございますが..(逆袖を指差して)こちらの方がよろしいのではございませんか?」
オ「え?そう?じゃあこっちに行こうか。」
(といって客席の方へ行く)
デ「あ!そちらに行かれますと!」
(舞台ぎりぎりまで行って、慌てて戻る)
オ「行き止まりだった。こっちに行こう、デンポ。」
デ「...相当ひどい方向音痴にございますね、オズマ様は。」
(デンポ、オズマ退場)
(暗転)
(冷血斎、シロミ登場、陰になっている。先と逆側からデンポ、オズマ登場)
オ「どう、デンポ。見つかった〜?」
デ「(辺りを見回しながら)はて..なかなかございませんねえ。」
(冷血斎、シロミ(巨大な回転車で回っている)スポット)
冷血斎「お待ちなさい、そこのご両人。」
デ「お呼びにございます、か。」
冷「うむ、私は冷血斎と申す者。
ご両人、見たところ何か悩みがある。そうではないかな?」
デ「何と!お分かりになられましたか?
ええ、少々捜し物をしているのでございますが...」
冷「そうであろう、そうであろう!私には分かるのです!」(得意げに)
オ「(デンポに寄り、聞こえるように)単に僕らの会話を聞いてただけじゃないのかなあ。」
(一瞬の間)
冷「と、ともかく寄っていきなさい。失せ物消え物無くし物、お任せあれ!
ここにいる、南斗六星の模様を背負った希代の占い師、ハツカネズミのシロミちゃんが、たちどころに教えてくれるのです!」
デ「ほう、それは素晴しい話にございますね。是非とも教えていただきたいものでございますが..
冷「(間髪入れず)シロミちゃん、よろしく。」
(シロミ、ぐるぐると回転車を勢いよく回り、やがて止まって冷血斎の元へ寄り)
シロミ「チューチューチュー、チュチュッチュッチュー!」
冷「ふむふむ。
(向き直り)分かりましたぞ!ご両人の探しているものは、この道の突き当たりを左に曲がったところにある!...とシロミちゃんは申しておる。」
デ「これは素晴しい!この道をこちらでよろしいのでございますね!?」(袖の方を指して)
冷「うむ。」
シ「チュー!」
冷「何かな、シロミちゃん。」
シ「チュッチュチューチュー、(やれやれというそぶり)チュー...
(うなずく冷血斎、この会話の最中に)
オ「デンポ!」
デ「はい?なんでございましょうオズマ様。」
オ「占ってもらったのはいいんだけど、僕達お金持ってないよ。
お礼を言ってすぐ行こう。」
デ「し、しかし話の続きを..
オ「だめだよ!これ以上教えてもらったら、只じゃ帰れなくなっちゃう!
(向き直り)おじさーん、どうも有難う。急いでるから、僕達はこれで。じゃ〜ね〜!!」
(オズマ退場)
デ「あ、あ、オズマ様〜、待ってくださいませ〜。
(振り返り)冷血斎様、シロミ様、有難うございました。お礼はいずれ必ずいたしますので、今回は失礼致します〜〜。オズマ様〜お待ち下さいませ〜〜。」
(デンポ退場)
冷「あ〜〜〜。行ってしまった...。
シロミちゃん、今の話は本当かね?」
シ「チュッ!」(うなずく)
冷「やれやれ。場所はそこでいいんだが..この道を行ったら厄介なもめ事に巻き込まれるから回り道をした方がいい、とシロミちゃんが言っていたのに...
まあいい、見料をくれなかったのだからな。天罰だな、シロミちゃん。」
(暗転)
(冷血斎、シロミ退場。オズマ、デンポ登場)
デ「オズマ様!見損ないましたでございます!
親切にしてくれた人にろくにお礼もせず逃げ出すとは..!お金はなくとも感謝の気持ちはきちんと表すべきだったのではございませぬか?クーッ、情けないでございます!」
オ「(鷹揚に)い〜んじゃないの?親切な人に道を教えてもらったくらいのことで、お金払うのもおかしいでしょ?きちんとお礼ったって、僕達急いでいるのは確かなんだしさ。
だいたい僕達が占ってくれって頼んだわけじゃないじゃない。あれでお金取られたら、押し売りにひっかかるようなものだよ。
...デンポ、ひょっとして騙され易いタイプなんじゃないの?」
デ「な..!そ、そんなことは...」(ちょっとうなだれる)
オ「まあいいよ、結構疲れてきちゃった。早く「次元の狭間」に行こう。」
(おじゃま丸、馬車に揺られて登場)
おじゃま丸「うま、今日はいい天気じゃの。」
馬「そうだヒン。こんなに天気がいいと、思いっきり走りたくなるヒン。
あ〜〜〜、G1を思い出すヒン!」(ちょっと駆け足を踏む)
お「ちょっ、こ、これうま!駆け出すでない!まろが振り落とされるではないか。」
馬「(足踏み止め)おじゃま様、分かっているだヒン。ここは天下の街道。人が多いし、走るわけないヒン。」
お「(脇恃にもたれ)ほっほ。分かっているならよいのじゃ。
(前に乗り出し)おや..?うま、ちょっと止めてたも。」
馬「ん?おじゃま様どうしたんだヒン?」
(おじゃま、オズマたちに気付いて、馬を近づける)
お「これこれ、そちたち。」
オ「え?何?」
デ「これはかわいらしいお子様にございますね。見た目はそうではございませんが..
私どもに何かご用でございます、か?」
お「うむ。鳥はよい。(オズマに杓を向け)そちに用がある。そち、名は何と申すのじゃ?」
デ(割り込んで)「な!と、鳥呼ばわりとは失礼が過ぎまする!私には伝書鳩のデンポという立派な名前が〜
オ「僕?オズマっていうんだけど。君は?」
お「ほっほ。まろの名前かの。まろは坂下(さかのしたの)おじゃま丸と申す。よろしゅうにの。」
オ「へえー、おじゃま丸って言うんだ。..ちょっと言いにくい名前だね。「おじゃま」って呼んでいい?」
お「おじゃ..(杓を口に当て、しばし黙考)まあよいでおじゃる。」
デ(割り込んで)「お、おじゃま丸様!私はデンポと申しまして単なる鳥などでは〜
お(無視して)「それよりも(デ「それよりも!?キーッ!!」以下声なく憤慨)オズマとやら。
ずいぶんと珍しいかぶりものをしておるの。まろにちと見せてたも。」
オ「え?これのこと?いいけど。」(帽子を渡す)
お「(帽子をいじりながら)ふーむ、妙な形をしているでおじゃる。ほう、ひさしがついておるの。(自分の烏帽子を脱いで、帽子をかぶる)おじゃ!?ひさしが日除けになって、まぶしくないでおじゃる!これは便利じゃ。」
オ「デンポ、この時代には当然...」
デ「(我にかえり)へ?あ、はい、このような形の帽子はございませんですねえ。」
お「オズマ、まろはこのかぶりものが気に入ったでおじゃる。まろにこれを譲ってたも。」
オ「え〜っ?だめだよ!それ気に入ってるんだから。
おじゃまにはその烏帽子があるじゃない。そっちの方が似合うって、絶対!」
お「このかわいらしゅいまろに似合わぬものなどないでおじゃる。
それより..(帽子を手に取りながら)モチ肌のまろにとって、日光は大敵。これは日光を防いでくれるでの。頼む、オズマ。まろにこのかぶりものを譲ってたも〜。」
オ「だ、め、だって!返してよ!」(帽子を取り返す)
お「うじゅー。..このかわゆいまろの頼みを聞き入れてくれぬと申すのか?」
オ「い・や・だ・ね。」(いじわるく)
(N.A)アカベエ、アオネ「ちょっと待つでゴンス(待つんだよ)!!」
(アカベエ、アオネ登場)
アカベエ「オズマ!突然だが回覧板を渡すでゴンス!」
アオネ「早く渡すんだよ!」
(オズマ、デンポ混乱して固まる)
お(割り込んで)「何じゃそちたちは!?オズマはいま、まろと話しておるのじゃ。後にせい!」
アオ「(向き直り)おじゃま丸には用がないんだよ!」
アカ「さあ、おとなしく渡してもらうでゴンス!」
お「むきー!そ、そちに名前を呼ばれる覚えはないでおじゃる!
(杓で指しながら)青いの、赤いの、そちら何者じゃ?名をなのれ!」
(アカベエ、アオネうなずき合って)
アカ、アオ「合体!」(アオネがアカベエの上に乗る)
アカ「聞いて驚け!」
アオ「我等魔王エポック様の一の子分!」
アカ、アオ「はっ!」(バラけて組体操の要領で)
アカ「アカベエでゴンス!」
アオ「アオネだよ!」
お「おじゃ..分かったでおじゃる。アカベエ、アオネとやら、そちらの目的は何じゃ?オズマから何をもらいたいのじゃ?申してみよ。」
アカ「我々が欲しいのは回覧板でゴンス!」
お「かいらんばんとな?回覧板とは何じゃ?頭にかぶるものかの?」
アオ「違うよ!回覧板ってゆーのはね、こう、板にお知らせが貼ってあって、近所の人に順番に回して見せ合うものなんだよ!」(手ぶりを交え説明)
アカ「そう、オズマが今、右手に持っているものでゴンス!」
お「...ということは、かぶりものは関係無いでおじゃるか?」
アカ「関係無いでゴンスが...」
アオ「一体何の話だい?」
お「かぶりもののことでないなら良いのでおじゃる。(安心して脇恃にもたれ)
ではアカベエ、アオネよ。そちらの話はまろの話が終わってからにするが良い。」
アカ「何?我等の話の方が先でゴンス!」
アオ「そうだよ!こっちの方が急いでるんだからさ!順番を譲りなよ!」
お「(前に身を乗り出し)何を申すか!?オズマと話をしていたのはまろの方が先じゃ。そちらは話の途中で割り込んできたのであろう。おとなしく待っておれ!
これ以上まろを怒らすでない!ムフー!!」
アカ「うっ..いつにない迫力でゴンス..」
アオ「何だか怖いよ..今日のおじゃま丸は本気だよ..!!」
アカ「ひ、ひとまず退散するでゴンスー!!」
(アカベエ、アオネ退場)
オ「ねえ..デンポ。」
デ「は、はい?」
オ「この話の主人公って..僕だよね?」
デ「はい、そうでございますが..」
オ「今の小鬼たちって..僕に話しかけてきたんだよね?」
デ「は、はあ、そうでございましたねえ..」
オ「僕、何も答えてないよ...」
デ「何だったのでございましょう...はっ!!
あ、天晴おじゃま丸様!「ムフー!」にて見事、小鬼めらを蹴散らされました〜っ!!
..はっ!?私は何を?」
オ「何だか僕、疎外された気分だよ...」
お「ほっほっほ。さて、話の続きをしようでおじゃる。気が変わったかの?オズマ。」
オ「ダ〜メ!」(即答)
お「む、む、む。どうしてもまろの頼みを聞き入れてはくれぬのかの?」
オ「だーってこれ、ただでさえ手に入りにくいレアものなんだよ?
や〜っとパパに買ってもらったのに、会ったばかりのおじゃまにあげるなんて出来っこないよ。」
お「(流し目で)...無理に、とは言わんがの。そちは平民であろ?やんごとなきお子様の、まろの頼みを聞き入れてくれぬとあらば、ちと痛い目に合うかも知れぬぞよ?」
デ「はて..何やら不気味な物言いにございますね。オズマ様..ここは慎重にご返答なされませ。」
オ「(怒気を含め)も〜〜!疲れてるのにしつこいなあ!嫌だったら嫌なの!
おじゃまは貴族なんだろ?お金持ちなんだろうから、同じ形の作ってもらいなよ!」
お「(ひるまず)い〜や、まろが欲しいのはオズマのかぶりものでおじゃる。
...絶対まろのものにするでの。オズマよ、覚悟せい。」
(馬を下り、前に出て烏帽子を脱ぐ)
お「皆の者!出てきてたも!
まろの烏帽子が盗まれたでおじゃる!!早く、早く取り返してたも!!
誰かおらぬか!?坂下おじゃま丸から烏帽子を盗んだ不届き者がこれにおるぞよ!!!」(絶叫)
オ「お、おじゃま何を言い出すのさ!?」
デ「ヒエー!濡れ衣でございます!!そのようなことはしておりませんでございますよ〜!!」
お「えーい、何を申すか盗人ども!!まろの烏帽子を返すでおじゃる〜!!」
(人が集まってくる)
町人A「何だい?!ただごとじゃないな。」
町人B「この貴族様の烏帽子を、この子たちが取ったんだそうだ。」
町人C「まあ〜。なんてことを!坊やたち、早くお返しなさい!」
町人A「そうだそうだ!言う通りにしないと、無理やりでも返してもらうぞ!?」
デ「なんということ!我々がいつの間にか悪者になってございます〜?!
こうなればきちんと皆様に説明いたしまして、誤解を解かなければ〜?」
オ「デンポ、無理だよ!ほらみんな、僕達を捕まえようとしてるじゃない!
こういう時は三十六計逃げるにしかず。行くよ!デンポ!」
デ「オズマ様!?あ〜〜ますます収集がつかなくなりました!難しい台詞をスラスラと..小学生とも思えぬ言動ばかり!
(ちょっと振り返り)み、皆様、我々は決して怪しい者ではございません!盗人などでは..(気圧されて)し、失礼致します〜!!」
(オズマ、デンポ退場)
お「逃げたぞ!皆の者!追うでおじゃる!!
うま!まろを乗せて、すぐに行くでおじゃる!目一杯走ってたも!!」
馬「お、おじゃま様!?やりすぎではないのかヒン?」
お「(馬に乗り込み)よいのじゃ!(コソっと)絶対オズマのかぶりもの、まろのものにするでの!
(向き直り)皆の者もついてくるでおじゃる!」
町人一同「お、おお!」
(口々に「追い剥ぎだあ!」とか「そっちに逃げたぞ!」とか言いながら、おじゃまに続く。一同退場)
(オズマ、デンポ走りながら登場)
オ「(立ち止まり)突き当たりだ!「次元の狭間」って、どっちだっけデンポ!?」
デ「ヒイヒイ、ひ、左でございます!!」
オ「左だね!よし、行くよデンポ!!」(といって右に行く)
デ「あ〜〜〜!!オズマ様!そっちではありません!!
こちらにございます〜!!
(オズマ慌てて戻る)オズマ様が前に行くと、道を間違えてしまいます!私が先に参りますので、ついてきて下さいませ〜!!」
オ「頼んだよ!デンポ!」
デ「お任せくださいませ〜!」
(舞台を左右に走り回る。袖からおじゃまたちの声が大きく小さく聞こえる)
(のんびりと、源太登場)
源「おや、おーい、さっきの坊やたちじゃねえか!」
デ「おやこれは浪人の源太様!こんにちは!そしてさようならでございます〜!」(通りすぎる)
オ「あ、源さん!(擦れ違いざまに源太の木刀を抜いていく)
ちょ、ちょっとごめんね〜!!」
源「な、なんだなんだ?ずいぶんとドタバタしているな。せっかく会ったってのに、ご挨拶だな!
ん?」
(源太の方向から、おじゃるたちの声がひときわ大きく聞こえる。一部始終を知った源太は)
源「何〜!あいつら盗人だったのか!?ふてえガキどもだ!よし!浪人とはいえ武士の魂を持ったおいらがいっちょとっつかまえてやらあ!
この木刀でもって..あれ?..あれ〜?木刀が..あ〜!
あの坊主!持っていきやがった!」
(おじゃる一同登場)
お「これ、そこな町人!子供と鳥を見なかったかの!?まろの烏帽子を取って逃げているのでおじゃる!」
源「あ、ああ!今!ここで!木刀が!捕まえようと!茶屋で見かけた!木刀を!俺の!坊主と鳥坊が!持っていきやがった!!」
お「えーい何を申しておる!?会ったのか!会っておらぬのか!それだけでよいのじゃ!申せ!」
源「あ、会った会った!あっちに!お、俺の!木刀を!擦れ違った時に!」
お「あっちに行ったのじゃな!?良し!」
(一同退場)
源「俺ってやつは肝心な時にいつもどうしてこう...あ、あ、待って!俺も、俺も行く〜!!」
(源太退場)
(オズマ、デンポ登場)
デ「(舞台逆袖を指して)あ〜〜〜!!ありましたありました!オズマ様!こちらでございます〜!」
オ「(後ろ向きに木刀を構えながら)早く!早く逃げるよ!うわ〜おじゃま達が来てる!来てる!」
デ「おオズマ様!私の後に!行きますでございますよ〜!」
オ「あ、木刀..どうしよ..
デ「オズマ様!お急ぎ下さいませ〜!!」
オ「えーい!源さんごめん!!タケシさんに返すから!!」
(オズマ、デンポ退場)
(おじゃま登場)
お「う、うま!ちょ、ちょっと止まってたも〜〜!」(後半悲鳴)
馬「(止まって)ヒイヒイ..お、おじゃま様一体どうしたんだヒン?これじゃ追い付けなくなるヒン?」
お「お、おじゃ!まろ、は、早いのが苦手というのを忘れていたでおじゃる..」
馬「そういえばそうだヒン。いつものおじゃま様じゃないようだったヒン!」
お「う〜〜(回りを見回して)ちとはりきりすぎたかの。考えて見ればこのような忙しい役、まろのキャラクターではないの。疲れたでおじゃる〜。」(前に倒れ込む)
(町人たちが駆けつけてくる)
町人C「おじゃま丸様!盗人はいずこに?」
馬「それが..見失ってしまっただヒン..
お「いや、もうよいでおじゃる。(向き直り、烏帽子を取り出し)皆の者、協力有難うでおじゃる。無事烏帽子は戻ったでの。もうよいでおじゃる..」
(町人、口々に「それは良かった」だの「でもあんな子供がねえ..」とか言い合う。おじゃるはグッタリしたまま。そこへ源太登場)
源「あれ?..みんなどうしたの?あの坊主たちは?」
町人B「何でも逃げたそうだが..烏帽子は返していったらしい。まあ、一件落着ってことだな。」
源「え?そうなの?...ところで俺の木刀は?」
町人B「ん?何のことだ?それは知らないよ。」
源「え〜!?そんな..俺の..俺の木刀が...唯一の武士の魂が...」
お「(復活して)おじゃ..そち、過ぎた事を嘆いても仕方ないでおじゃろう。
ほっほ。まろの烏帽子は無事に戻ったがの。これもまろの日頃の行いが良いからでおじゃる♪」
馬「おじゃま様、烏帽子は元々持っていたはずだヒン?「戻ってきた」というのはおかしいんだヒン?」
オ「こ、これ!何を申すか、うま!」
馬「あ、つい口がすべったヒン!」
町人A「ん〜〜!?」
町人B「そういえば..あの子供達、(おじゃまの烏帽子を指して)こんなの持ってなかったような...」
お「な、何を申す!お、おじゃ..ま、まろを疑うと申すのかそちら...こ、これ!そのような目でまろを見つめるでないでおじゃる!」(か細く)
町人一同「ん〜〜〜〜!!?」(取り囲むように)
お「お、おじゃ〜〜〜!!」(半泣き)
(暗転。一同退場)
(背景変更中...続く)



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