勇気と侠気を手に入れろ! 第3回

(初出:第49号 01.4.20)

勇気と侠気を手に入れろ! 「おじゃる丸」Ver.
    原案・制作 萩原晃一 
全シナリオ(決定稿版)01.2.13
発行人より注釈:
パロディとしての著作権等の問題につきましては現況を鑑みて問題無しと判断しております。
「おじゃる丸」について説明しておきますと、NHK教育にて月〜金朝7:46〜、夕17:30〜放映中の10分アニメであります。今までご覧になったことのない方が、この作品を読んで少しでも興味を抱かれることを願います。(01.2.20 ページ作成・SD発行人 高橋 基樹)
「おじゃる丸公式ホームページ」http://www.nhk-sw.co.jp/chara/ojaru/

(本編)
(背景変更中...続き)
(一転して見渡す限りの草原。遠くの山からは煙が立ち上る。)
(オズマ、デンポ登場。尻餅をついた格好)
デンポ「オズマ様!大丈夫にございますか!?」
オズマ「うーん、いてて..デンポこそ、怪我はない?」
デ「私は大丈夫にございます。
フーッ、やれやれ、それにしても危ない所でございました。」
オ「ほんとだよ。でも何とか逃げ切れたようだね..(辺りを見回して)って、こ、ここは何処?」
デ「へ?もちろん日光町にございますよ。...(周りを見て)ヒエーッ!!」
オ「何となく分かってきた。ここって原始時代じゃない?」
デ「ど、ど、どうやらそのようでございます。
逃げることに精一杯で、出来るだけ遠くへ、と、考えたのが間違いでございました〜!」
オ「まあ、でもいいよ。とにかくあそこから逃げられたんだから。
それにまた「次元の狭間」をくぐれば、今度こそ僕が住んでる時代の日光町に戻れるんだもんね。行こっか!デンポ。」
デ「....(キョロキョロと辺りを見回し、首をかしげる)」
オ「どうしたのデンポ?早く連れてってよ。」
デ「それが..「次元の狭間」が無いのでございます...」
オ「えー?だって出たとこから動いてないよ僕達。出口ってこの辺じゃないの?」
デ「むむむ...はっ!
原始時代ということは..まだ地軸が安定していないのでは?地殻変動により地球軸にブレが生じている可能性が...!」
オ「ねえねえ、何の話?」
デ「オズマ様..大変言いにくいのでございますが..簡単にご説明いたしますと、「次元の狭間」が一箇所にとどまっていないのでございます..。
申し訳ございません!私のミスで一番危険な時代に来てしまいまし、た!」
オ「えー、つまり..戻るのが大変..ってこと?」
デ「はい、つまるところ運次第ということになるのでございます!
この時代の「次元の狭間」は、活発に移動しておりまして..どこに、いつ、出現し!いつ、何時、消えるのか!全く予測出来ないのでございます!」
オ「へー、大変だ..。でもあることはあるんでしょ?見つけたらすぐ、飛び込んじゃえばいいんじゃないの?そのうち見つかるよ。」
デ「それまでの間が問題なのでございますよ!オズマ様!
ここが原始時代ということは、主役は人間ではないのでございます!恐竜!火山の噴火!大地震!!
ありとあらゆる厄災が、目の前に待ち受けているのでございます〜!!」
オ「あ、そっか..どうしよう、デンポ、何か身を守る方法は無いの!?」
デ「そもそも私のミスでこの時代に来てしまったのでございます!このデンポ、命に代えてもオズマ様をお守り致します!
..といっても、出来ないことは出来ませんが...」
オ「もー!頼りにならないなあ..。
とにかく、一刻も早く「次元の狭間」を見つけなくちゃいけないね!探そう!デンポ!」
デ「は、はい!それではオズマ様は私の後ろに!絶対離れないで下さいませ!」
オ「うん!行こう!デンポ。」
(二人寄りそうようにウロウロと歩き回る)
(反対側から原人登場。ソーっとオズマ達に近づく。オズマ達が振り返ると隠れる。だんだん増えていく。最も近づいた一人が、棍棒を振りかざしつつ、寄る。ついにはオズマ達が気付く)
オ「デ、デンポ!」
デ「(振り返り)ヒエーッ!!!
..キュー...」
(声に驚き原人が下がる。デンポ倒れる)
オ「デンポ、デンポ!
もー、全然頼りにならないじゃん!ほら起きて!!」
デ「(起き上がり)で、で、出た〜!!にございます!」
オ「君達は誰!?」
(原人がぞろぞろと出てくる)
デ「ど、どうやら原住民のようでございますね。」
オ「話通じるかな?言葉分かると思う?デンポ。」
デ「は、はい、私が通訳いたします。
と、とりあえず..あの皆様..?私たちは怪しい者ではございません。武器をお下げ下さいませ。」
オ「普通にしゃべって、大丈夫なの?」
デ「はい、通じるはずでございますが..」
(コシヨがこちらに寄ってくる)
コシヨ「なーはどっがらきた?」
オ「..なんて言ってるの?」
デ「はい、「お前達、どこから来たんだい?」とおっしゃっております。」
オ「えーと、僕達は..ほんとのこと言っちゃマズいんだよね?
えーと..こっちから。」
デ「通訳致します。「我々は、あちらの方から参りました。」でございます。」
コ「ほかほか。なにすてるのしゃ?」
オ「え?僕達何も捨ててないけど..」
デ「オズマ様違うでございます。「そうかい、で、何をしてるんだい?」と、こちらの..えー、「お名前は何とおっしゃるのでございますか?」」
コ「わが?わはコシヨ、カナタいうでがす。めーらなばなんいうだ?なーばきかせてけれ。」
デ「「私はデンポと申します。こちらがオズマ様..えー、名前はオズマだけでございます。」
(向き直り)あ、忘れておりました。オズマ様、こちらはコシヨ、カナタ様でございます。コシヨが名字のようでございますね。で、コシヨ様が「何をしてるんだい?」と聞いておられまして..」
コ「なーデンバ?、めーオジョマ?はあこれはんちくりんなもんだいね。こーにゃいっぺえおもなーもえっけどそなはんちくりんなもんきーたけんねーべや。
さもめーだねーわらしこだなや、おしょこめんだねんだべ?なじょしゃ?」
デ「あー!いっぺんにたくさんお話しにならないで下さいまし!こちらの返事がまだにございます!それに名前はデンバでもオジョマでもございません!私はデ、ン、ポ!オズマ様はオ、ズ、マにございます!
(向き直り)あーそうそう、オズマ様。今の話はコシヨ様が「お前さんがデンバで、お前さんはオジョマっていうのかい?ずいぶん変な名前だね。ここにはたくさんの人間が住んでいるけどそんな名前は聞いたこともないよ。しかし、見かけない顔だねえ。着ている物も、それ、毛皮じゃないんだろ?なんだいそれは?」とおっしゃっておりましたので、私どもの名前はそうじゃない、と訂正していたところでございまして..えー、何からお答えすればよろしいのでございましたかね?」
オ「...デンポ、このややこしいやり取り、何とかならないの?」
デ「早くも限界のようでございますね。
..よろしゅうございます!少々ルール違反ではございますが、私の力でこの問題を何とかいたしましょう!
ハー!」(ひっくり返る)
オ「...何かした?」
コ「おやお前さん、しゃべれるじゃないか。」
オ「うわっ!おばあさん、しゃべれるんじゃない!」
コ「変な子だね、わたしゃ前からしゃべってるよ。それよりもさ、あんたの着てるもの、何だいそれは?良く分からないけどいいねえ!私のこれと交換しないかい?」
オ「えー?いきなり変な話だなあ。駄目だよそんなの。それより、おばあさんたちこの辺に住んでるの?じゃあこの辺は、危なくないのかな?」
コ「ふん。交換しないのなら、答える気はないね。
あーあ、無駄足踏んじまったよ。」
原人A「おーい、コシヨばあさん。そいつらは何者なんだ?」
コ「ただのはぐれ者さね。さあみんな、戻った戻った。こんな所にいても、何もなりゃしないよ。」
(原人達、退場。銀太郎、ツバサだけが残る)
オ「はー。ずいぶん現金なおばあさんだね。
デンポ、どうする?付いていこっか?あの人達と一緒なら安全そうじゃない?」
デ(ひっくり返ったまま)「お、お待ち下さいませ..このデンポ、今の技で少々動けなくなってしまいまして..少しだけ、休ませて下さいませ...」
オ「そっかー。じゃちょっとだけ休んでから行こう。
でもデンポのお陰で言葉が通じたね。すごいんだね、デンポって。」
(銀太郎、ツバサ、近づいてくる)
銀太郎「大丈夫ですかー?」
オ「あれ〜?君達は戻らないの?」
デ「おや..オズマ様と同じ年頃のお子たちにございますねえ。私はデンポと申します。少々疲れております故、こんな格好で失礼いたします。」
銀「は、はじめましてー。僕銀太郎って言いますー。銀ちゃん、って、呼んで下さいです。」
ツバサ「私はツバサって言うの。花も恥じらうお年頃の美少女よ。」
オ「僕の名前はオズマ。
へー、銀ちゃんにツバサちゃんって言うんだ。」
ツ「はあーん。なかなかの美男子で、ツバサクラクラきちゃう。」
銀「この辺で子供といえば僕達だけなんですー。だからオズマくんを見たときは、うれしかったんですー。お友達になって下さいです!」
オ「うん!
僕達も、この時代..いやこの辺に来たの初めてだから、知ってる人と仲良く出来るのはうれしいよ。銀ちゃん、ツバサちゃん、よろしくね!」
銀「わー!やったですー!うれしいですー!」
ツ「きゃー!男の子とお友達になっちゃった。」
銀「オズマくんとデンポさんは、どこから来たですか?」
オ「え?うーん..ず〜っと、遠い所からって言えばいいのかな?同じ日光町なんだけどね。」
銀「にっこうちょう?...遠いんですか...。
日光町って所には、いっぱい人がいるですか?」
オ「うん、いるね。友達もたくさんいるよ。」
銀「ほんとですか!すごいですねえ!いいですねえ...」
ツ「男の子は!?
あら、いやん。女の子もたくさんいるのかしら?」
オ「うん。
でも大丈夫だよ銀ちゃん。ここの話なんだから。」
銀「え!?本当ですか?ここにいーっぱい人が来るですか!?
はあ〜。友達いっぱい出来るですー...」
ツ「あーん。ツバサ興奮しちゃう〜。」(フラフラと倒れ込む)
オ「う、うん。いつになるかはちょっと..分からないけど、本当のことだよ。」
(銀、オズマの背中の木刀に気付いて)
銀「オズマくん、その木は何ですかー?」
オ「え?これ?
木刀って言って、えーと..(素振りをして)こんな感じで使う武器なんだけど..見たことない?」
銀「初めて見ますー。武器なんですか?オズマくんが使うんですか?すごいですー。」
ツ「オズマくん強そう..かっこいいわ!!」
オ「そ、そう?使ったことないんだけどね..。」
デ(突然起き上がり)「ふっか〜つ!!にございます!
オズマ様銀様ツバサ様。どうもご心配おかけいたしまし、た。」
オ「あ、治ったみたいだねデンポ。それじゃあ..どうしよう?銀ちゃん達の住んでるところに連れていってもらおうか?」
銀「僕達の家に遊びに来てくれるですか?
うわーい!うれしいですー!」
ツ「そしたらツバサ、いろんなとこ案内してあげる!」
銀「僕も案内するですー!」
オ「いいの?うわー有難う!銀ちゃん、ツバサちゃん。
デンポ、そうしよう!」
デ「はい、助かりましたでございますね。
銀様、ツバサ様。お世話になりますでございます。」
銀「じゃあさっそくお家に行くですー!!
僕に付いてきて下さーい。」
(銀、先に退場)
ツ「あらあら、銀ちゃんったら、ずいぶんはしゃいじゃってるわ。」
デ「銀様〜!お待ち下さいませ〜!!」
オ「銀ちゃん!待ってよ〜!」
(N.A)銀「キャ〜〜〜〜!!です〜〜!!」
(一同ストップ)
デ「今のは?」
ツ「銀ちゃんの悲鳴だわ!?」
オ「銀ちゃん!どうしたの!?」
(一同退場)
(暗転)
(銀と恐竜登場。そこへオズマ、デンポ、ツバサ登場。恐竜が真ん中で、両端が銀とオズマ達。)
銀「助けて〜!です〜!」
ツ「銀ちゃん!」(ヘナヘナと倒れ込む)
デ「これは大変なことになってしまいました〜!
このデンポ、わが身に代えても銀様をお助けいたします!えい!」
(デンポ、恐竜に近づこうとするが、牽制されて向こうに行けない。恐竜はゆっくりと銀に近づこうとしている)
デ「くー!これでは銀様をお助けすることが..(ふと気が付いて)
ハー、何か武器になるようなものは..恐竜の頭を叩けて、恐竜を追い払えるような..(チラとオズマの木刀を見て)刀のような武器はありませんかね..」
オ「(気がついて)む、無理だよデンポ!僕こんなの使ったことないんだよ!
それより誰か呼んでこよう!僕らだけじゃこんな恐竜倒せないよ!」
デ「しかし今我々が逃げてしまっては銀様の命が危ういのでございますよ!
オズマ様しか頼りになる方がいないのでございます!お願いでございます!木刀にて恐竜を打ち払われて下さいませ!」
銀「オズマくん..助けてです..」(半ベソ)
デ「銀様もああ言っておられます!オズマ様!!」
オ「でもでも、僕自信がないよ!そんなの無理だよ!できっこないよ!!」(後半絶叫)
デ「大丈夫でございます!オズマ様!ここは逃げるところではございませんよ!
心の声を良くお聞きになられて下さいまし!!」
オ「心の声..?」
(舞台が暗くなる。正面を向いたオズマのみスポット。踏切の音と照明)
(以下N.A)
オ「デンポ!」
デ「はい?なんでございましょうオズマ様。」
オ「占ってもらったのはいいんだけど、僕達お金持ってないよ。
お礼を言ってすぐ行こう。」
デ「し、しかし話の続きを..
オ「だめだよ!これ以上教えてもらったら、只じゃ帰れなくなっちゃう!
おじさーん、どうも有難う。急いでるから、僕達はこれで。じゃ〜ね〜!!」
デ「あ、あ、オズマ様〜、待ってくださいませ〜。
冷血斎様、シロミ様、有難うございました。お礼はいずれ必ずいたしますので、今回は失礼致します〜〜。オズマ様〜お待ち下さいませ〜〜。」
(間隔開けて)
お「皆の者!出てきてたも!
まろの烏帽子が盗まれたでおじゃる!!早く、早く取り返してたも!!
誰かおらぬか!?坂下おじゃま丸から烏帽子を盗んだ不届き者がこれにおるぞよ!!!」
デ「なんということ!我々がいつの間にか悪者になってございます〜?!
こうなればきちんと皆様に説明いたしまして、誤解を解かなければ〜?」
オ「デンポ、無理だよ!ほらみんな、僕達を捕まえようとしてるじゃない!
こういう時は三十六計逃げるにしかず。行くよ!デンポ!」
デ「オズマ様!?あ〜〜ますます収集がつかなくなりました!難しい台詞をスラスラと..小学生とも思えぬ言動ばかり!
み、皆様、我々は決して怪しい者ではございません!盗人などでは..し、失礼致します〜!!」
(N.Aここまで)
(N.A)オ「今回の旅での君の行動だね。」
オ「え?君は誰?どこから話してるの?」
(N.A)オ「僕は僕だよ。僕の中の僕。」
オ「何でこんなこと、思い出すのさ?」
(N.A)オ「今も同じようなことをするつもりだったからさ。
君はいつもいつも、逃げてばかりいるんだね..」
オ「それがいけないって言うの?誰だってああいう時には逃げるじゃない!
冷血斎さんと争って、おじゃまと争って、..それで勝っても負けても..つらいだけだよ...」
(N.A)オ「だけど逃げてばかりいては、何の解決にもならないよ。
冷血斎の優しさは、分かってる?おじゃま丸の優しさは、知ってる?君自身の優しさは..ある?」
オ「..だって僕は臆病なんだ..傷つけたくないし..傷つきたくない..」
(N.A)オ「傷つかなければ、本当の自分は見えてこないよ。」
オ「じゃあどうすればいいんだよ!恐竜と戦って、銀ちゃんの代わりに僕に死ねっていうのかよ!?」
(N.A)オ「結果を考えるのは意味が無いよ。選択肢は無数にあるからね。
...簡単だよ。逃げなければいいんだ。そうすればするべきことは分かるよ。」
オ「...僕は銀ちゃんに優しくされた。銀ちゃんが困ってる。今は僕が銀ちゃんに優しくする時だ。
何をする?何が出来る?
僕は木刀を持っている。銀ちゃんは恐竜に襲われている。
僕が木刀で恐竜を退治する!銀ちゃんは喜ぶ!!」(徐々にテンションが上がっていく)
(N.A)オ「分かったかい?こんな時には...」
オ「逃げちゃ、だめなんだ。」(客席を見据えて)
(恐竜スポット。オズマの一撃で恐竜は悲鳴をあげて逃げ去る。)
(照明戻る)
オ「フーッ。銀ちゃん、怪我はない?」
銀「わーん!オズマくん有難うですー!!」
デ「お見事!オズマ様木刀でもって見事恐竜を退治なされまし、た!!」
ツ「か、格好いい〜!!ツバサシビレちゃって倒れちゃう〜!!」(再び倒れ込む)
オ「エヘヘ、うまくいっちゃった。
いや〜何だかさっきだけシリアスになっちゃったよ。僕、小学4年生なのに。
さ、早いとこ行こっか!またあんな怖い目に会わない内にね!」
銀「はい、そうしましょうですー!」
ツ「みんなのいる所なら安心だからね!」
(銀、ツバサ退場)
オ「あ、デンポ。」
デ「はい?何でございますか?」
オ「僕、もう逃げないよ。」
デ「はいでございます、オズマ様。」(満面の笑み)
(デンポ、オズマ退場)
(暗転)
(コシヨたち原人登場。そこへオズマたち登場)
銀「ただいまー!ですー!!」
コ「おやお前たち。どこに行ってたんだい?」
ツ「おばあちゃん!すごいんだよオズマくん!
銀ちゃんが恐竜に襲われたのを、一発で退治しちゃったんだから!」
銀「そうです!すごかったです!かっこ、良かったですー。」
コ「全く!フラフラしてるからそんな危ない目にあうんだよ!
...でもオズマ、銀を助けてくれて、有難うよ。...何かお礼をしないといけないかね。」
オ「いいよコシヨおばあさん!たまたまうまくいっただけなんだから。」
デ「お礼などというよりも、我々少々こちらに身を寄せさせていただきたいのでございますが...」
コ「(オズマに向かって)おやそうかい。なら何もやらないでいいんだね。
(デンポに向かって)ここに居たいって?構わないね。好きなだけいるといいさ。」
銀「わー!良かったです!」
コ「(即座に)ただし!飯と寝床代は頂くよ。」
ツ「おばあちゃん!銀ちゃんを助けてくれたのにそんな言い方はないんじゃない?」
銀「そうです!ごちそうしてあげて下さいー!」
コ「やだね!只じゃだめだね!」(デンポとオズマをじろじろと眺め回す)
デ「困りましたね、この時代には貨幣などという存在はありませんし...元々私ども無一文でございますし...」
オ「何かあげるものって言ってもねえ...あ、そうだ!コシヨおばあさん、これ、あげるからどうかなあ?」(ジャンパーを脱いで渡そうとする)
コ「いーや、それはもういらないね。それ、もらっても宿は貸さないよ!」(目が木刀に釘付け)
オ「そんなあ。さっき欲しいって言ってたじゃない!じゃあ何が欲しいのさ?」
コ「欲しい物、言ったらくれるかい?
(木刀を指し)これ!これならいいね!!」
銀(割り込んで)「だ、ダメですー!それはオズマくんにしか使えません!
おばあちゃんがもっていても何もなりませんです!」
コ「い〜〜や!これじゃなきゃ駄目だね。
(木刀を触りながら)うーん、長くて..固くて..おっ!軽いんだね!いいもんだよこれは!これをおくれ。」
デ「はあ〜。困りましたでございますね、オズマ様。木刀を渡さなければ宿が無くなりますし、といって木刀を渡してしまっては、先のような事態に対処出来なくなりますし...。」
オ「(原人たちの方向を眺めて、何かを思いつき)大丈夫だよ、デンポ。
コシヨおばあさん、じゃこれあげるから、僕達を泊めてくれる?」
コ「本当かい?(すばやく木刀をひったくり)じゃあこれはもう私のものだよ。返してっていっても返さないからね。」
ツ「もー、おばあちゃん、恥ずかしいなあ..。」
銀「オズマくん、ごめんなさいです...。」
オ「いーんだよ、銀ちゃん。木刀なんていくらでも作れるんだから。」
デ「はて..何か策がおありなのでございますかオズマ様?」
オ「うん、ちょっとね!」
ツ「じゃあおばあちゃん、オズマくんたちにこの辺を案内してくるから、ごちそう作ってちょうだいね!」
銀「作って下さい!」
コ「あ〜いいともさ。遊んでおいで。あまり遠くへ行くんじゃないよ!」
銀「はいです!」
ツ「行こ!オズマくん、デンポちゃん!」
オ「あ、待って。(原人の一人に近づいて)たき木にもならないような固ーい木って、あります?」
原人A「ん?固い木?ああ、建築用資材なら裏の小屋にあるよ。」
オ「ホント!?少しもらっていい?」
原人A「あー少しなら構わないよ。」
オ「有難うおじさん!」
デ「オズマ様!参りますでございますよ!」
オ「うん、今行くー。」
(銀たちに近づいて)
オ「あのさ、資材置き場に連れていってくれない?」
銀「資材置き場?裏の小屋ですか?それならこっちですー。」
ツ「そんなとこ行って、どうするの?」
オ「いいからいいから。僕に任せてよ。さ、行こ!」
(オズマたち退場)
(コシヨたち原人、おにぎりを舞台裏から取り出す。その間に皮ジャンを着たグラサン姿のギターさん登場。ギターさんスポット。ギターを「ジャーン!」とだけ鳴らす。ギターさん退場。)
コ「いつまであそんでるんだろうね、あの子たちは。」
(オズマたち登場)
ツ「ただいまー!」
銀「ご飯出来てますか?」
コ「おかえり。出来てるよ...おや、何だいそれは?」
銀「エヘヘ、おみやげですー!」
(ツバサ、銀、オズマがそれぞれ木刀を出す)
コ「どうしたんだいこれ!?」
銀「オズマくんが作ってくれたですー!」
デ「それにしても便利なものを持っていらっしゃったでございますねオズマ様。」
オ「うん、僕も現代に生きる少年だしね!サバイバルナイフくらい持ってないとね!」
ツ「これ、私には使えないからおじさんにあげる!これでたくさん獲物を取ってね!(そばにいる原人に渡す)」
銀「僕も使えないから持っていて下さい!(同じく)」
(よろこぶ原人たちを尻目に、つまらなそうに自分の木刀を見つめるコシヨ)
コ「ふん、ふん、ふーん!
みんな持ってるんだったら、もうこんなもの、いらないね!」(捨てるふり)
銀「(即座に)あ、あ、捨てるんだったら僕に下さいです!」
コ「(ニヤリと笑い)只じゃあ駄目だね。」
銀「そんなあ!僕、何もあげるもの持ってないです...」
オ「どうしたのさ銀ちゃん。銀ちゃんの木刀なら、今使えないからってあげたじゃない?」
銀「(少しモジモジしながら)はい..ただの木刀なら僕いらないです..でも..オズマくんの木刀なら、僕欲しいです。それを持っていれば僕も強くなれるような気がするんですー。」
デ「銀様...完全にオズマ様のファンにおなりになられたようでございますね。」
銀「はいです...」
ツ「私はオズマくんの全てが欲しいわ...」(指をくわえセクシーポーズ)
オ「ちょ、ちょっとみんな、僕そんなにすごくないよ..。
うーん、でも銀ちゃんのその気持ちはうれしいなあ。
そうだ!コシヨおばあさん、このジャンパーとなら木刀、交換してくれる?」
コ「うん?うーん、そうだねえ...まあそれならいいかね。」
オ「ほんと!?じゃあこれと交換ね。(ジャンパーと木刀を交換)
で、銀ちゃん。はい、これあげる!(木刀を渡す)」
銀「オズマくん!そんなことしなくていいです!僕何もあげるものありません!」
オ「いーんだよ、銀ちゃん。コシヨおばあさんには宿代としてジャンパーをあげて、銀ちゃんに木刀をあげたのと同じことなんだから。それより銀ちゃん。それを使って、僕の代わりにツバサちゃんをしっかり守ってあげてね。二人で遊びに行ったら、銀ちゃんしか頼れないんだから。」
銀「は..はいです!有難うです!大切にするです!使いこなすですー!!」
ツ「..やっぱりオズマくんたち、いつかは帰っちゃうんだね...」
デ「まあまあツバサ様。今はそんな事を考えなくてもよいではございませんか。」
コ「じゃあみんな。ご飯にしようかね。」
オ「(銀に向かって)あ、ご飯だって、行こ!銀ちゃん。」
デ「(ツバサに向かって)ほらほらツバサ様。ご飯を頂きましょう。」
(食事を始める)
デ「おー!!これはおにぎりではございませんか!私大好物でございます!さっそく頂きますでございます!」
銀「僕も大好きですー!」
オ「うわー、おいしそうだねえ!」
ツ「たくさんあるね!おばあちゃん有難う!」
コ「ふん、食い盛りの子供が2人も増えりゃね。こんぐらいあれば足りるだろ?」
(隠れてアカベエ、アオネ登場)
アカベエ「今日の我々は、恐竜でゴンス。」
アオネ「これでオズマたちを怖がらせてやろうって寸法だね。」
アカ「そうでゴンス!オズマはきっと、回覧板を捨てて逃げ出すでゴンス!」
アオ「そうだね!早くやろうよ、アカベエ。」
アカ「ちょっと待つでゴンス。様子を見てみるでゴンス!」
(オズマ達を覗く)
アオ「食事中みたいだね。」
アカ「好都合でゴンス。皆リラックスしているでゴンスから、大慌てするに決まってるでゴンス!」
アオ「..でも何だかおいしそうだねえ。そういえば、お腹がすいたよ...」
アカ「我々の食事は後でゴンス!今は使命を先に果たさなければでゴンス!」
アオ「そ、そうだねアカベエ。今は我慢するよ。」
アカ「そうと決まれば行くでゴンスよ!」
(アカベエたち、恐竜の声色で一気に飛び出す)
アカ、アオ「ガオー!!」
銀「ヒエーッ!で、出た〜ですー!」
オ「..ちょっと銀ちゃん、落ち着いて見てみなよ。あれがさっきの恐竜と同じに見える?」
銀「え?...ちがうみたいですね。」
ツ「(食事を続けながら)何なの?あれ?」
デ「おや、また出たのでございますか?小鬼たち。とっくに正体はバレているでございますよ。」
(アカベエたち、動きが止まる。二人顔を見合わせて)
アカ「ばれているなら仕方ないでゴンス。」
(衣裳を脱ぎ捨て)
アカ、アオ「合体!」(以下前回の登場シーンと同じ)
アカ「聞いて驚け!」
アオ「我等魔王エポック様の一の子分!」
アカ、アオ「ハッ!」
アカ「アカベエでゴンス!」
アオ「アオネだよ!」
銀「アカベエさん、アオネさん、何の用ですかー?」
アカ「オズマに用があるでゴンス!」
アオ「回覧板を渡すんだよ!」
オ「あ、あの..
デ(割り込んで)「おのれ又してもオズマ様の回覧板を狙っておるのでございますね!?
このデンポがそんな事はさせないのでございます!(前に出て)小鬼たち、かかってきなさいませ!」
銀「オズマくんに迷惑をかけるなら、悪者なんですねー!?
(デンポの前に出て)オズマくんに助けてもらったお返しに、今度は僕が助ける番ですー!
僕が相手ですー!これ以上オズマくんに近づかないで下さいー!」(木刀を振り回す)
アオ「な、何だいこの子は?危ないよ!そんなの振り回しちゃいけないよ!」
アカ「そ、そうでゴンス!手荒なマネはよすでゴンス!」
銀「僕は本気ですー!オズマくんを助けるんですー!!」
アオ「ア、アカベエ、どうしよう?」
アカ「うーん、困ったでゴンスー。」
アオ「えーい!こっちには使命があるんだよ!お前の剣なんて恐くないよ!
今日こそオズマから回覧板を..(N.A大きなお腹の鳴る音)」(お腹を押さえ、後ろを向く)
アカ「..はっ!い、今のはオイラのお腹の音でゴンス!気にしないでくれでゴンス!」
アオ「ア、アカベエ...」
銀(木刀を下ろし)「小鬼さんたち、お腹がすいてるですか?」(戻っておにぎりを二つ持つ)
銀(小鬼たちに近づいて)「はい、これをあげるですー。」
アオ「あ、有難う...。
(向き直り)アカベエ、これ、もらっちゃったよ...」
アカ「...今日の所はひとまず引き上げるでゴンス!」
(アオネ退場。アカベエ、端で振り向き)
アカ「おにぎりどうも有難うでゴンス!」
(アカベエ退場)
デ「天晴!銀様青いのの「お腹がすいたな〜」の心を読み、おにぎりを渡すことで見事、小鬼めらを退散させられました〜っ!!」
銀「や、やったですー!オズマくんのお役に立てたですー!!」
オ「う、うん、有難う銀ちゃん。
...でもまた、小鬼たちと会話出来なかったんだよね...。
ずーっと分からないんだけど、あの小鬼たち、何で回覧板を欲しがるんだろ?それに江戸でも会ったし、ここでも会ってる。僕達のこと追いかけてる?魔王って一体誰のこと?
分からないことが多すぎるよね。ちょっと、聞いてみたかったんだけどな...」
デ「はい..そういえばそうでございますね。私もそこまでは...
あ〜〜〜〜!!オ、オ、オ、オズマ様!じ、じ、..「次元の狭間」があそこに!(舞台袖を指し)
あそこにございます〜〜〜!!」
オ「ほんと!!?え、えーと、はっ!い、急がなくちゃ!!」
デ「は、はいでございます!
(行きかけて)えー、皆様!誠に急ではございますが、我々もう旅立たなくてはならないのでございます!時間がありませんのでこれで失礼させて頂きます!申し訳ございません!オズマ様、早く!」
オ「うん!ごめんね、有難う!みんな!」(行きかける。その際、木刀は置いていくこと)
ツ「いきなりどうしちゃったの!?」
銀「ちょっと待って下さ〜い!」
デ「(地団太を踏みながら)申し訳ございません!お名残惜しゅうございますし、理由を説明しておきたいのでございますが!時間がないのでございます!」
オ「(こちらも足踏み)ごめんね銀ちゃん、ツバサちゃん。僕達用事があって、すぐに行かなきゃならなくなっちゃってるんだ。もうちょっといたかったけど..そもそも泊まるほどの用事じゃないんだよね。行かなくちゃ!」
銀「コシヨおばあちゃん!お願いです!ジャンパーを返してあげてくださいー!」
コ「な、なんだいいきなり?駄目だよ!これはもう私のものだよ!」
銀「そ、そんなー!ですー!僕らはオズマくんたちにたくさんの物をもらったのに、オズマくんたちには何のお土産も渡してないんですよー?
泊まってないんだからジャンパーは返してあげてくださいですー!」
コ「いやだね!」
オ「(止まってにっこりと微笑んで)いいんだよ、銀ちゃん。僕はもう銀ちゃん達からいいものをもらってるんだから。」
銀「僕何もあげてません!何ですか?」(半ベソ)
オ「え?あー..うーんとねー...言えないよ!恥ずかしくて!ヒントはこのお芝居のタイトルね!
じゃあね!銀ちゃん、ツバサちゃん!離れていても僕達友達だよ!!」
デ「銀様ツバサ様コシヨ様他皆々様!おにぎりおいしゅうございました!
失礼致します!」
銀「忘れないですー!絶対忘れないです!!」
ツ「来世で二人は結ばれるのよー!!」
(オズマ、デンポ退場。舞台暗転。コシヨスポット)
コ「ふん、青春だねえ。」
(暗転。一同退場)
 

(背景変更中...)
(暗闇に雷鳴とどろき、スモーク、カクテルライトがふんだんに)
(オズマ、デンポ登場)
オズマ「..もう今さらあんまり驚きもないんだけどさ。ここはどこ?未来?それともさっきよりもっと過去なの?」
デンポ「ム、ム、ム、ム..ヒエー!
ヒエ〜〜〜!!にございます!ここは日光町でも..いつのどこかも分からないでございます!!」
オ「え〜〜!?だって僕達ちゃんと「次元の狭間」を通ってきたんでしょ?銀ちゃんたちもいないし、間違ってないよね?」
デ「はー困りました困りました..日光町のことなればいかなる不思議、裏技でも把握している私でございますが、ここでは全くの無力..ただの伝書鳩にございまして...」(グルグルと回り続ける)
オ「結局僕達また道に迷ってるんだね。参ったなあ..ボスでも飲んどく?」
デ「そんな悠長なことを言っておられませんですよオズマ様!
戻る方法がないのだとしたら...子供一人と鳩一羽、どうやってこれから生きていけば...」
オ「だけどさ、デンポ。思うんだけど、ここが日光町以外のどこかだとしたら、そもそもデンポってしゃべれないし、空も飛んでるでしょ?単なる鳩なんだから。
でも今もしゃべってるし、歩いてる。ってことはここってやっぱり日光町に関係してると思わない?」
デ「(立ち止まり)ウッ、かなり鋭いところを突いた話にございますね。確かに私はまだ日光町固有の伝書鳩としての特徴を兼ね備えたままのようでございます。
となると..やはりここは日光町...いやいや、私の記憶にも、センサーにも感知しないのでありますからやはりここは日光町ではなく..いやいや、それでもここは..」(再び回り出す)
オ「まあまあ、デンポ落ち着いて。ここがどこでも、最終的に日光町..出来れば2001年(今日の日付)の浜さんの店の前..に着けばいいんだからさ。とにかく誰かいたら道を聞こう。
おーい!誰かいませんか〜?」
デ「もし!どなたか!?いらっしゃいませんか?」
(N.A)エポック「やあみなさん。私の世界にようこそ!!」
オ「あれ?今の声って..」
デ「(立ち止まり)はあ、どこかで聞いたことのある声でございましたが..誰にございましょう?」
(N.A)エ「私に回覧板を渡して下さい。」
デ「ということはこの声はあの、小鬼コンビが言っていた魔王エポックということに!?」
オ「いやー、何か違うんだよね..もっとこう聞き覚えのあるような..」
(N.A)アカベエ、アオネ「そこまででゴンス!(そこまでだよ!)」
(アカベエ、アオネ歌いながら登場)
アカ、アオ「♪イカしたコンビさ小鬼のコンビ〜(でゴンス!)サワやかコンビさ小鬼のコンビ〜(だよ!)♪」
アカ「今回は登場ポーズは省略するでゴンス!
ハハハーでゴンス!ようやく我々の世界に取り込めたでゴンス!」
アオ「もう邪魔する者はいないからね!今度こそ回覧板を頂くよ!」
オ「じゃあやっと君たちと話せる...
デ(割り込んで)「おのれ又しても小鬼ども!オズマ様の回覧板は渡さないでございますよ!
このデンポ、例え力を封じられているとしても、命に代えてオズマ様をお守り致します!行くでございますよ!」
オ「ちょ、ちょっと待ってよデンポ!
(デンポを制して)あ、あのさ、君たちちょっと聞いていいかな?」
アカ「な、何でゴンスか?」
アオ「そう言えばこうやってオズマと話すのは初めてだねえ。」
オ「そうなんだよ!何だかいっつも僕以外の人としゃべって、帰っちゃうんだもん。
えーっとね、まず...ここはどこ?」
アカ「こ、答えられないでゴンス!」
オ「そっか。じゃあいいや。(デンポズッこける)
じゃあね、君達は何者?どこから来たの?魔王エポックって誰?」
アオ「どれも答えられない質問だよ!」
オ「そっか。じゃあいいや。(デンポズッこける)
じゃあね、何で回覧板を欲しがるの?回覧板をどうするつもりなのさ?」
アカ「そ、それは言えないでゴンス!」
アオ「とにかく回覧板を渡さない限り、元の時代には戻れないよ!」
オ「そっか。じゃあいいや。(デンポズッこける)
(向き直り)デンポ、僕の聞きたかったことって、全部秘密だって。あんまり意味が無かったみたい。」
デ「小鬼ども!ようやくお話しが出来たオズマ様の質問をことごとく断るとは失礼千万にございますよ!(向き直り)オズマ様もオズマ様でございます!小鬼どもの言うことに納得してしまっては話しが何も見えてこないし、解決しないのでございますよ!」
オ「うーん、でも言いたいことは分かったんだよね。つまり回覧板を渡せば現代に戻れるんでしょ?でも回覧板を渡しちゃうと、帰れてもママに頼まれた用事が果たせなくなっちゃうから...。回覧板は渡さずに、帰れる方法を探すのが僕達のするべきことなんじゃないかな?」
デ「オ、オズマ様!見事な論法にございます!このデンポ感服致しました!その通りにございますね!
ではさっそく帰り道を探すことに致しましょう!」
オ「というわけだから僕達はこれで。じゃあねー。」
アカ「ちょっと待つでゴンス!!」(力強く)
アオ「今日の私たちは一味違うんだよ!」
アカ「そうでゴンス!今日は力づくでも回覧板を奪い取る覚悟でゴンスから、退散はしないでゴンスよ!」
アオ「勿論、オズマたちが逃げても無駄だよ!私たちはすぐに追い付けるんだからね!」
デ「くう〜っ、オズマ様、何やらここは小鬼めらにとって有利な場所のようにございますね。いつもとは違う強気の言動にございます!」
オ「でも僕、どう見てもそんなに大したことないと思うんだよね。
ま、いいや。じゃあかかっておいで。デンポは見てるだけでいいからね。」
デ「オ、オズマ様!いつの間にそのような頼もしいキャラクターになられたのでございますか!?」
オ「言ったでしょ。もう逃げないって。さ、回覧板が欲しければ、持っていきなよ、小鬼さんたち。...取れるものならね。」(ファイティングポーズ)
アオ「オズマ本気だね..。」
アカ「どっこい今日は我等も退散しないでゴンス!望むところでゴンス!
アオネ、行くでゴンスよ!」
アオ「勿論だよ!」
(オズマとアカベエ、アオネの対決シーン。「酔拳」で師匠とジャッキーが行う酒瓶争奪ゲームのようなやり取りが続く。どうしても回覧板が取れず、疲れの見えるアカ、アオ。対照的に余裕のオズマ。そこへエポック登場(マントに仮面付きで正体が見えない))
アカ「あ、エポック様!」
アオ「エポック様!オズマは手強いです!」
エ「そのようですね。では奥の手を使ってみてはいかがでしょう?」
アカ「そうでゴンした!」
アオ「それだよアカベエ!」
アカ「オズマ行くでゴンス!」
(オズマに向かう二人。思わず身構えるオズマ。と見せかけて二人はデンポに襲いかかり、ロープでグルグル巻きにしてエポックの元へ連れ去る)
エ「良く出来ました、小鬼さんたち。」
アカ「ハッハッハー!形成逆転でゴンス!」
アオ「さあ、オズマどうするんだい?回覧板を渡さないと、デンポは帰さないよ!?」
デ「クーッ!このデンポ一生の不覚にございます!オズマ様!私のことは構わないで下さいませ!今のうちにお逃げ下さいませ!」
オ「フーッ。それは出来ないよデンポ。
分かったよ、回覧板は渡すよ。」
(オズマ、エポックの方へ向かう)
デ「オズマ様いけません!私ごときのためにそのような!あ、あ〜〜〜!!」
(オズマ、エポックに回覧板を渡す)
(暗転)
(N.A)エ「はい、有難うございます」
(舞台は現代に戻る。デンポはロープが外れている。アカベエ、アオネは動かなくなっている。そして回覧板を手にしているのは仮面とマントを外したエポック)
オ「あ、あれ〜!?おじいちゃんじゃない!」
デ「こ、これは一体!?」
エ「どうか、しましたか?
それにしても助かりましたよ、オズマ。どうやら私の留守中に回覧板が回っていたようで、さっき浜のところに電話して、戻ってきたら見せてくれるようにお願いしたばかりだったのです。良く届けてくれましたね。」
オ「...ってことは魔王エポックってエポックおじいちゃんのことだったの?」
デ「さっきいた場所はどこだったのでございましょう。はっ!小鬼めらがまだ!」
エ「これのことですか。
私が作ったおもちゃなんですが..まだ完成していないので、動きませんよ。」
オ「おじいちゃんまたこんなの作ってたんだ!...(小鬼たちに触るが、反応無し)ほんとだ、ただの人形みたい。」
デ「おかしいでございますね、日光町のことなら何でも知っている私でございますのに..今回の旅では分からないことの方が多かったような気が..」
エ「旅?どこかへ行っていたのですか?あの、あなたは...」
オ「あ、あのねおじいちゃん。この鳩はデンポさんって言って、えーと、遠いとこから遊びに来たんだ!で今からもう帰らなくちゃいけないから...」
デ「そ、そのようにございます!」
エ「へえ、そうなんですか。...確かにもう遅い時間ですからね。オズマも気をつけて帰るんですよ。
あ、そうそう。この回覧板なら明日私が浜のところに返しておきますから、大丈夫ですよ。」
オ「ほんと!?有難うおじいちゃん。じゃ僕達行くね!」
デ「失礼しますでございます〜」
(オズマたちに向いたまま、エポックたち退場)
デ「オズマ様のおじいさまの存在を忘れていたとは、このデンポ全くどうかしていたようでございます。江戸にてオズマ様にご先祖様のことを聞かれた時も思い出せませんでしたし、魔王エポックなる人物が現われた時も、まさかそれがオズマ様の祖父、谷村江北様とは...」
オ「うーん、良く分からない展開だったけど、多分全部に「回覧板」が絡んでいたと思うんだよね。」
デ「ということは「回覧板」が「次元の狭間」や私の機能に影響を与えてたということに?」
オ「ま、そんなとこだろうね。」
デ「それにしても...何故私が囚われた時にすぐに回覧板を渡してしまったのでございますか?」
オ「...理由、聞きたい?デンポ。」
デ「は、はい...いいえ、分かりますから..いいでございます。
...オズマ様今回の旅にてずいぶん成長なされたでございます、ね。」
オ「うん!有難う、デンポ。デンポのお陰だよ。」
デ「いえいえ、私の力ではございませんよ。全てオズマ様自身の努力によるもの..私はそのようなお方と共に歩めて幸せでございました...。」
オ「あ、家だ...。」
デ「オズマ様。お別れの時が近づいたようでございます。
...短い間ではございましたが、町内会長の浜様の店に回覧板を届けに行く、ただそれだけのお願いごとを果たすために江戸に行き、原始時代を彷徨い、最後は魔界のごとき不可思議な場所にまで引き回してしまったことをお詫びいたします。それでもいくつもの時代でそれぞれの出会いなり別れなりを体験出来たことはオズマ様の今後の人生において決して無駄なことにはなりますまいと思っております。勿論私も、オズマ様のような方のお力になれたことは日光町伝書鳩一族の者として誇りに思えることでございますし、とても楽しい思い出として生涯忘れることがないと確信しております。台詞が長いでございますか?確かにこの話の中では一番長い台詞になることは間違いないでございます。つまりここでいいたいのは何かと、申しますればオズマ様との別れがつらいのでございます。あまりにも名残惜しゅうございまして..しかしお願いごとを叶えたからにはもう私は帰るべきなのでございます。というよりも強制的に戻ってしまうのでございまして、すでに私の身体は見た目には分かりませんが半分消えかかっていると思って見ておいて下さいまし。
オズマ様!お別れにございます!!」
オ「うん!デンポ、「また」会おうね!バイバイ!!」
デ「オ..オズマ様!?私と会うには天文学的な確率の召喚方法しかないのでございますが?「また」とはどういうことにございますか!?あ〜もう姿が..では失礼いたしますでございます〜〜!!」
(デンポ退場)
オ「(空を見上げて)...それでも、もう一度会いたいと思った時に会えるような気がするんだよね。いつか、きっと...。(客席に向き、元気良く!)だってここは日光町だもんね!」
オ「ただいまー!!」
(幕が下りつつ、エピローグ)
(ママ登場)
マ「おかえり。ご苦労様オズマくん。
そうそう、オズマくんにお届けものが届いているのよ。」
オ「ほんと?わーい。誰から?」
マ「それがねえ..コシヨ、カナタさんからですって。誰だか分かる?」
オ「あ〜!..うん!!」
(劇終)
 



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