勇気と侠気を手に入れろ! 第1回

(初出:第47号 01.2.20)

勇気と侠気を手に入れろ! 「おじゃる丸」Ver.
    原案・制作 萩原晃一 
全シナリオ(決定稿版)01.2.13
解説:
というわけでまえがきです。
この話は、元々知人の劇団創設に際し、初演用に考えられたネタのボツ案を、僕の今一番ハマッている「おじゃる丸」の世界を借りて完成させたものです。ほぼ全ストーリーを網羅しているので、個々のキャラクターや特徴的なやり取りに関してはまさに「おじゃる丸」そのものであると自負しており、「おじゃる」ファンにはたまらないものとなっていると思います。しかしストーリー自体は全く別物であるため、「おじゃる」ファンは却って混乱するかも知れません。
「おじゃる丸」という作品には、今回出したエピソードの他にもたくさんの印象深いキーワードが登場します。おじゃる丸のプリン好きは言うまでもなく、カズマの石好き、金のツッキー好き、小町の虫嫌い。電ボのホレっぽい性格、おじゃるのまったり道。キスケやカメトメ、貧ちゃん..出したい要素、キャラクターはたくさんありましたが、有り余るネタから必要分だけをチョイスしております。例えば満願神社のオコリン坊、ニコリン坊は、この話に最初は登場させたのですが、あまり本筋に関わらないためやむなくカットしました。
そう、この話を完成させる上で一番気を使ったのは、「この台詞、このやり取りを出したいから話(元ネタ、本筋)をそういう方向に持っていく」のではなく、「話を進める上で最適な台詞、やり取りを持つキャラクター、エピソードを用いる」ようにセレクトしたことです。一応「パロディ作品」の範疇に入る作品ですから、この作品はこのままひっそりと公開するに止め、決してこれを世に出すことはありません。しかし本編は、「おじゃる丸」の世界観、キャラクターをそのまま借用したものではありますが、初期設定、物語をもろにパクッたものではないと。自負しておりますので、全く違う話として評価していただきとうございます。勿論、「おじゃる」作品の持つ様々な魅力の半分にも及んでいませんが...何とか、「子供と一緒に子供番組を観て、思わずハマッてしまった親が観られる演劇」には仕上がったと思っています。
シナリオを公開することに伴う著作権侵害や盗用の問題は、以上の理屈で解決としましたが、小説やそのもの芝居ではないため、どこまで話をイメージ出来るかいささか心配なところであります。ネットでの公開もあるので、効果音やBGMを聞けるようにするとか、せめて舞台上の演出、キャラの位置関係などをもっと詳しくナビするべきだと思ったのですが..その技量もスペックもないことに涙するしかありません。
舞台は小劇場。音響、照明等最低限の設備有り。背景やセットは全て書割。という設定で作られております。台本中( )書きされている説明を参考に、「演劇」という形で皆様想像して下さいませ。
それではまずは概要からご覧下さい。

発行人より注釈:
パロディとしての著作権等の問題につきましては現況を鑑みて問題無しと判断しております。
「おじゃる丸」について説明しておきますと、NHK教育にて月〜金朝7:46〜、夕17:30〜放映中の10分アニメであります。今までご覧になったことのない方が、この作品を読んで少しでも興味を抱かれることを願います。(01.2.20 ページ作成・SD発行人 高橋 基樹)
「おじゃる丸公式ホームページ」http://www.nhk-sw.co.jp/chara/ojaru/

概要:
主人公のオズマくんは小学4年生。ある日のこと、ママに「町内会長さんに回覧板を戻してきて」と頼まれます。
「うん、わかった!」と元気良く家を出たオズマくん。果たして「無事に」回覧板を届けることが出来るのでしょうか?
非日常が当り前のように起こる町、「日光町」を舞台に、少年の「旅」がここに始まるのです!?
 

<登場人物紹介>
( )内は先祖の名前。キャラクターはかぶる。
谷村オズマ:主人公。小学4年生の割にしっかりしているが、ちょっとズレたところもあり。
パパ、ママ:オズマの両親。いまだに新婚気分?
デンポ:藤原朝の昔から時を越えてやってきた伝書鳩。礼儀正しく、ちょっとおっちょこちょい。
浜(浜舞ノ介):「喫茶満腹」のマスターであり、日光町の町内会長でもある。「紅茶仮面」として町内の奉仕活動を行っているのは公然の秘密。
タケシ(源太):自分探しを続けるフリーター。今イチパッとしない、かなりの抜け作。
長井髪世、川下、小本田:いずれも名前のみか名前は出てこないキャラクターだが、性格や特徴は「おじゃる丸」に登場する名脇役達に拠っている。
冷血斎、シロミ:街角の占い師。とはいえ、実際に占うのはハツカネズミのシロミちゃん。冷血斎にその才能は無い。
坂下おじゃま丸:やんごとなき身分のかわいらしいお子様。今回はちょっと悪役。
うま:おじゃま丸専用の馬車を引く馬。しゃべる。
アカベエ、アオネ:回覧板を狙う魔王エポックの手下の小鬼。いきなり登場して、あっさり退却する。かなり弱いし、お人よし。
コシヨカナタ:長老的存在のおばあさん。妙なものを欲しがり、交換したがる。
銀太郎:銀ちゃん。腹巻をした子供。優しい太っちょ。
ツバサ:普通の女の子だが、お年頃らしく異性に過敏に反応する。貧血気味。
ギターさん:名前は出てこない。時間の経過を表してくれる隠れキャラ的存在。
魔王エポック:回覧板を狙う張本人。欲しがる理由は不明だが、正体は何と..!
谷村江北:オズマの祖父。昔から日光町に住んでいるが多趣味のため家を留守がち。


本編

(オズマ舞台に登場。パパ、ママ登場、陰になっている。)
オズマ「僕は谷村オズマ、小学4年生。どこにでもいる普通の男の子だよ。
見た目はもう大人だけど、これでも小学生。いいんだ、ここは日光町だから。」
ママ「オズマく〜ん、ちょっとこっちいらっしゃ〜い。」
オ「あ、ママが呼んでる。」
(パパ、ママのいる応接間スポット)
ママ「オズマくん、ママちょっとお願いがあるんだけど、いいかな?」
オ「僕よりどう見ても若いけど、僕のママだ。いいんだ、ここは日光町だから..
ママ「オズマくん、何をブツブツ言ってるの?
ママが若いの何のって..誉めてくれなくてもいいのよん♪」(笑顔)
オ「(即座に)違うよ。」
ママ「...それはママが若いということが、かしら?」(マジ顔)
パパ「はっはっは。ママは充分若いよ。それに奇麗だ..」(後半流し目)
ママ「あらやだわあなたったら..まだ明るいのよ♪」
オ(割り込んで)「それより、何?お願いって。」
ママ「そうそう。これ、この回覧板なんだけど..うちが最後みたいだから、町内会長さんのところに届けてきてくれる?
ママこれからお夕飯の支度しなきゃいけないのよ。」
オ「浜さんのところだね。うん、いいよ。」
ママ「ほんと?じゃあ頼んだわね。(回覧板を渡す)
外は寒いからジャンパー着て行きなさいよ。」
オ「分かった。じゃあ行ってくるね!」
(オズマ退場)
(N.A)オ「行ってきま〜す!」
ママ「お店の方に行くのよ〜!気を付けてね〜!」
パパ「私が行った方が良かったかな?」
ママ「大丈夫よ、もう小学4年生なんだから。少しはお手伝いもしないとね。
それにあなたが行ったら、浜さんのお店は喫茶店なんだから、長居しちゃうでしょ。
それよりも。ねえ、あなた..さっきの台詞の続きが聞きたいわ。」
パパ「はっはっは。いいとも。じゃあ寝室の方で...」
(パパ、ママ退場)
(暗転)
(オズマ登場。ジャンパー、キャップ着用。デンポ舞台袖に登場、陰になっている)
オ「えーっと、浜さんの店は...
(ぐるぐる歩き回る)
(止まって左右を見て)
オ「あれ〜?こっちだったっけ?間違えちゃったかな〜?
まあいいか。とりあえず、歩いてれば見つかるよね!」
(逆方向にぐるぐる歩き回る)
オ「おっかしいな?全然見つからないよ!
え〜と小学校..は通ったでしょ?ハネ満神社があって、公衆電(声を出さずに驚く)..ポストの角を右だった!そっか〜やっぱり間違ってたんだ。
...ここは一体どこなんだろ?迷っちゃったよ..」
(キョロキョロと辺りを見回すオズマ。デンポスポット)
デンポ「(オズマに寄りながら)お呼びでございますか?」
(オズマは無視してキョロキョロを続ける)
デ「(オズマのそばで)谷村オズマ様!お呼びでございます、か!?」
オ「うわっ!
君は誰?鳥なのに..なんでしゃべれるの?」
デ「失敬な!私はただの鳥ではございません。
遠く藤原朝の彼方からやってきた、伝書鳩のデンポでございます!」
オ「へえ〜。そうなんだ(平然と)。
ところで僕に何か用?」
デ「何の用も何も..オズマ様がお呼びになられたのでやってきたのでございますよ。」
オ「え〜?僕が?呼んでないよ?」
デ「いいえ、オズマ様は私を呼ぶための魔法陣をお作りになられたはずでございます!」
オ「魔法..陣?...覚えがないなあ..」
デ「そんな!
(手でぐるぐる円を描きながら)このように町内をお歩きになられましたよね?」
オ「...もしかして今まで歩いていた道のこと?」
デ「そうでございます!さらに!
私を呼ぶ際の呪文をお唱えになった!」
オ「呪文?..なんて言うの?」
デ「デンポ!にございます!」(胸を張りながら)
(N.A)オ「(松ちゃんの「兄貴」風に)デンポ?..デンポ?..ポスト?..電話ポスト?..ハネ満神社を通って、公衆電話、ポスト?いやいや公衆電、ポストの角を右だった?..電、ポ。」
オ「あ、言ってたかも..」
デ「で、ございましょ?呼び出されるのは数百年ぶりでございます!
(キョロキョロと辺りを見回して)はあ〜ずいぶんゴミゴミした街並でございますね?今は一体いつの時代にございます、か?」
オ「いつって..えーとね、今日は、2001年の(今日の日付)だよ。..って言って分かる?」
デ「2001年!?...それはつまり西暦にございますか?
そういたしますと..私の時代が601年だから..え〜と(しばらく考えて)..すみません、日本の暦で教えていただけませんか?」
オ「え?っと、平成13年かな?」
デ「ああ!1400年後の未来でございますね?」
オ(ちょっとつまずいて)「..僕小学生だから分からないけど、今のは元号より西暦の方が分かりやすかったんじゃないかな?」
デ「そうでございますか?西洋の文化には慣れていないものでございますから...」
オ「ふ〜ん、まあいいや、今のは流しておこう。
(デンポをしげしげと眺めて)伝書鳩って、そんな昔からいたんだ。」
デ「いえいえ、(全身を客席に見せて、強調するように)このように、見た目は普通の鳩と一緒。もちろん伝書鳩と一緒なのでございますが、私どもの一族はこの日光町にしか生息しない特殊な生き物でございまして...先ほどのように召喚されると、時空を飛び越えて皆様の前に現われ、何かお願い事を一つ、叶えて差し上げるのでございます。」
オ「へえ〜っ、そうなんだ。」
デ「ですからオズマ様、何かお願い事を一つおっしゃって下さいませ。このデンポ、出来ることは何でもいたしますが、出来ないことは何もいたしません!」
オ「..言いたいことは分かったけど、言い方がどうもなあ...
まあいいや。願い事でしょ?えーとね..実はこれから浜さんのお店に回覧板を届けに行くんだけど..道に迷っちゃってここがどこかも分からないんだ。
道を教えてくれないかな?出来る?デンポ。」
デ「お任せ下さいませ!古今東西..いや、日光町のことなれば、遠い昔からはるか未来まで、このデンポの知らないことはございません!!
浜様のお店とは「喫茶満腹」のことにございます、か?」
オ「そうそう、そこそこ!」
デ「はいはい、存じておりますよ!
..して、回覧板とは何のことにございましょう?お届けになるとは何か重要なものでございます、か?」
オ「へ?う〜ん、あんまりよく分からないんだけど..
(回覧板を見せながら)回覧板って、お知らせを書いた紙なんだよ。それをみんな読んだから、最後に浜さんの所に持っていかなければいけないんだ。」
デ「ふ〜む。書状のようなものにございますかね?それをお届けになると..何やら重要な任務でございますね。
よろしゅうございます!願い事を叶えるついでに、私もご一緒致しましょう!」
オ「ホント?助かるよ〜。じゃあね、とりあえず..(左右を見て)どっちに行けばいいのかなあ?」
デ「道を戻る必要はございません!「次元の狭間」をくぐれば、あっという間に「喫茶満腹」にご到着!にございます!
(辺りを見回し、電信柱の陰(舞台袖)を見て)あ、ここから行けるようでございますよ!」
オ「へ〜、便利なもんだね!ありがとう、デンポ!」
デ「いえいえ、オズマ様のお役にたてて何よりでございます!
では早速参りましょうか?」
オ「うん!行こう!」
デ「では参ります。付いてきてくださいませ。
あ、よっこらしょ。」
オ「ここをくぐるんだね?それ!」
(デンポ、オズマ退場)
(暗転)
(背景変更中...続く)



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