このデビュー作に出たキャラクターを使って始まったのが、初連載、代表作であり、
今なお未完結の作品「サードガール」であります。 これを含め現在までに20ほどの作品を発表しておりますが、
個々の作品については次回以降で述べるものですから、 ここでは詳しいことは申しません。
表1のキーワードとしては、「兵庫県生まれ」「外語大卒」「劇画村塾」の3つが
挙げられます。
全作品の舞台が神戸及びその近隣であること、そして海を背景に入れた話しが多い
ことは、神戸在住の作家らしいところです。 神戸という港町、その雰囲気に合った小粋な題名が各話、各作品につけられているのは
先生の最も得意とするところでしょう。
現在寡作作家の名を欲しいままにしている、えーつまり読者から見れば働かない先生
なんですけど、その遠因であり、きっかけとなったのがこの劇画村塾にあるようです。
「サードガール」連載中に「COMIC劇画村塾」は休刊になります('88)。
その後発行元のスタジオ・シップ(現小池書院) から出された「コミックHAL」('89)、
及び「コミックコサージュ」('91〜'94)にて連載が続けられていくのですが、
他紙への作品発表がこの「サードガール」 連載の周期とほぼ重なっているわけなのです。
つまり、「サードガール」が始まらなければ、他の作品も読めないと。 そういう事で今年(編注 昨年)は「サードガール」が文庫化され、そこで先生から
描き下ろし新刊の可能性が発表されましたので、 来年は新刊の読める可能性が出てきた?訳です。
さて、このようにデビューが'84年で、今年で12年目を数える漫画家にしては
先生の描かれた作品は数が少ないようなのでありますが、 しかしその知名度はかなりなものです。
「ビックコミックスピリッツ」などの、いわゆるメジャー誌での発表作を持つ点。
男性誌を中心とした活動ながら、女流漫画家に支持されている点などが要因に
挙げられますが、何といっても先生の偉いところは、日記をつけ、それを公表して
いる所であります。まあ日記というか、近況報告ですね。 各単行本の巻末に描き下ろしの「PRODUCTION NOTE」を、そして'88年から
「月刊ニュータイプ」に「神戸・元町下山手ドレス」を発表しております。 作品を発表していない時期でも、
このように定期的に先生の名前を知ることが出来る訳でして、ファンが確実に生まれ、
そして伸びていくのです。
近況報告ですから、当然そこから先生の趣味や性格がうかがえます。 今後作品を解していく上で度々触れることになりますので、
キーワードでまとめてみました。 表2であります。そして、先生の作品を描く際のテーマなるものも、ここからうかがうことが出来ます。次回への布石として挙げておきましょう。
表3をご覧下さい。
‥‥先生の現在までの作品は全て「恋愛漫画」であります。 これから詳しく読んでいくところでありますが、一旦ここでは
「作品の流れを見ると、主人公が女性から男性へと移行し、それに伴いより人間関係に重点を置いた構成をとる傾向にある」と統括的に述べておきましょう。
それでは次回から作品解釈を行っていきたいと思います。 テクストは「サードガール」です。本日はこの辺で。」('96.12.15記)