『おじさんは上客』
夜間の客層で昼間と比べて特徴的なのはおじさんである。
夜に仕事帰りと思われる風情でやって来るおじさんはやはり独身一人暮しか単身赴任なんだろうと思うが、中に、こういう所での買い物に不慣れな感じの人がいて、きっと単身赴任して間もなくて不自由しているんだろうなあと、一応一人暮しの苦労を知っている私は同情的な気持ちになってしまう。
誰しも最初は慣れないものであるから、何か突飛な行動を取ったとしてもおおむね温かい目で見ていられるのだが、場合によっては他のお客様の迷惑になることもあるので「不慣れなおじさん」は結構目が離せない。
いかにも単身赴任らしく、弁当を買われる方は多い。
お買い上げいただいた弁当や惣菜は、ご希望によりレンジで温めるのが基本なのだが、中にはお買い上げいただいてないものの温めをご希望になるお客様もおられる。
統計を取った訳ではないので、はっきりしたことは言えないが、そういったご希望をなさるお客様にはおじさんが多いような気がする。
先日も、東横のれん街か南国酒家あたりで買ったんだろうか、という中華まんの詰め合わせをレンジで温めてくれと言ってきたおじさんがいた。容器がアルミ製だったので、この入れ物だとレンジ使えませんよと言って断ったのだが、次にレンジが使える容器で持って来られた時のことを想定して、今から理論武装しておかなくてはならないので頭が痛い。
そういうものは、家にレンジを揃えてから買ってほしいものだ。
店では時々「割引クーポン」のキャンペーンが張られるのだが、そういう時におじさん達の活躍はひときわ目立つ。
キャンペーン中のある日に来店したおじさん。店にやって来るなり、クーポンをばさばさ振って、「これ使えるの?」
「はい、ご利用いただけますが」
「じゃあこれとこれとこれと(以下暫く反復)買うけど、何処にあるの?」
実は反復数が1ダースを超えた辺りで、「んなもの自分で探さんかおやじ」
という気持ちになっているのだが、そこは客商売。満面の笑みをたたえて
「わかりました。おそれいりますが少々お待ち下さい」
と言って待っててもらい、とにかく他のお客様を片付ける。
何故かこういうときに限って店内は盛況なのである。
それからおじさん付きで店内を巡って、クーポン対象商品を取って回るのだが、やっぱりこういう人って普段は縦のものを横にもしないような生活をしているんだろうか。一人暮しでそんなことでどうするんだろう。
でもこういう場合のお客様は一回に買う量がかなり高額で、一冊のクーポンのうち半分近くを使ってくれることもあったりしてたいへんありがたいことではある。
そういえば、昼間仕事をしているおじさんは、どこそこのスーパーで大安売りをしてるのを知っていたとしても行くことができないのである。
ただ、知っていたとしてもどの位の値段が安いのかという判断ができない可能性の方が高いと思われるが、それを考えると、おじさんもいろいろ大変なんだなあ、とちょっと気の毒な気もする。
まあ、他人のことをどうこう言ってる場合ではなく、私もそれらの「暗躍(?)するおじさん達」の仲間に入りつつあるので、いろんな意味での見本を見せていただいたからには、老後の、じゃない今後の参考にさせていただきたいと思う。
でもコンビニの内情を知ってしまっている私は、それを逆手に取るような迷惑な客として店員の間で有名になってしまうかも知れない。
ということは、そうか、ああいう人になってしまうということだな。
やだなあ、もっと良い年のとりかたをしなくては。
しまった具体例が頭の中をぐるぐる・・・個人攻撃はやめましょう(反省)。