新・現在4コマ漫画レビュー 第105回

(初出:第339号 25.9.20)


-TOPIC-
数年ぶりになるか、蔵書整理で一部を手放すことに。本棚満杯は変わらずながら70冊ほど、前後で並べたり横にしていた分とサヨナラする。以前も言ったように567禍で(一般)4コマ誌を全て購読するようになってから読書欲の需給バランスは概ね満たされている。特に長編ものを揃える意欲が薄れ、今回はその辺りがメイン。半年ペースで泣く泣く処分する4コマ誌は何度も読み返してから紐で括るけど、段ボールに入れたその場で持っていく。未練も何も無いわけでなく、読みたくなったらすぐ手に入れられる安心感があるから。
例えばえのきづ「桜乃さん迷走中!」(芳文社)は第二話を読んでくれ、転落人生の瞬間が活写された神回だから、となるのだが、手元にすでに無い。買い直そうとも思っていない。WEBコミックFUZでは連載中でもある。同じように先日終了したクール教信者「小森さんは断れない!」(芳文社)も揃えることなく手放すことに。個人的には中学時代の友人の告白が一番ジーンときた、最終回はまあ、泣けたので良かった。そう、ラストを4コマ誌で買って読んでいるので充分、読み返したくなったら電子書籍がある。
未だ使っていないツールに全幅の信頼を寄せるのはすでに各メディアの世界で経験済みだから。手持ちの「永久保存版」は視聴出来る機械が存在せず、大概ネットにあり事足りている。紙もそうで、単行本で残していても奥にしまってあれば数十年単位であることすら忘れているし、全編読み返そうというタイミングはそうそう無いから気が向いた時にあるかどうかネットを漁ってみればよろしい。古本屋を数年掛けて探し回ることもなく、一瞬で可不可が分かる。
その古本屋、査定の間に回っていたら1つ前が200円引き、最新巻は100円引きのお値段が付いている。そっと、棚に戻す。買い取り価格は初めて「全てお値段付きました」と言われたものの1冊あたりは20円ちょっと。薄利多売はもはや有り得ず、物量確保と利ザヤを求めて奔走して居る。これなら直接作者に落とせる購入方法を選択した方が良いと、思えるようになった。いよいよ、紙媒体は終末期と言える。

-PICK UP-
冒頭から暗澹たる現実を指摘したが、紙による提供が衰退しているというだけで描かれている内容は元気ハツラツ、順風満帆。電子書籍では過去作と一緒くたに公開されているから連載中の作品だからと言って新鮮さを売りには出来づらい。同じような展開でどれも一緒、その設定他でも見た、云々。しかし、ほんの小さな違いに気付ければ千差万別、お気に入りは無限に増えていく。表現の自由は諸々の制約を受けてもなお、広がり続けている。
峠野あかり『坊ちゃん、困ります!』(タイム)は期待通り新キャラが続々登場し、ハマったエピソードを伸ばしていって、と大作になる良き兆候。先ごろ単行本も刊行された。
りおり『はらぺこ母娘と元カレ家主』(タイオリ)は対照的に同居するキャラだけで動いているのだが。都合の良すぎる生活と思いきや、「好きだけでは結ばれない」過去、「思い出すのは違う人」といった切ない描写がその杞憂を吹き飛ばす。
プルちょめ『かわいいユミくんとオドオド尾堂くん』(ホーム)はお互いの好意がどこに向かっていくのか定まっていない中で描かれる日常が新鮮だ。
森永まさと『跳べないウサギと神の島』(タイム)、樹るう『チート転生した猫は嫁の膝で丸くなりたい』(ライオリ)は腰の据わったストーリー4コマとしてじっくりと描き進めている。
黄金期のように無数の新作があれば、立ち読みや単行本読みといった取捨選択もアリだろうが、ここまで少なくなったら寧ろ掲載誌を買って全てを読みたくなるのが自然な流れ。履歴から絞り込まれたおススメに沿って読んでいくのではなく、提供される作品を読み散らかしていく内に、新しい出会いがある。これは紙という制約された中で遡って読んだり、繰り返し読む、つまり熟読し易い媒体の醍醐味ではなかろうか。

-REVIEW-
三本コヨリ『もどかしコンプレックス』(タイオリ)
恋愛もので常々読みたいと思っていたのは双方向から描かれる展開。本作の6月号(2話)から7月号(3話)の切り替わりは見事だった。ネット上でのやり取りだけだったのが勢い2人で会う事に。男性目線から描かれたこの初々しい会合を、女性目線でもう一度繰り返して見せた。これで2人の好意と踏み出せない理由がハッキリと分かり、ゴールの見えない、もしくはどうなろうとあまり関心が持てない恋愛ものから一気に突き抜けた。
話数の通り、まだ始まったばかりではあるがこの交互に描かれるスタイルは継続されており、感情の高まりはうなぎ上り。このままモダモダした展開も良いし、ネットならではのすれ違いなんかが深掘りされていくとさらに大河ロマンと化す可能性も秘めている。
すでに単行本を複数出されている油の乗った作者、期待しか無い。


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