新・現在4コマ漫画レビュー 第54回

(初出:第222号 15.12.20)


-TOPIC-
今年を振り返ると、いくつかのロングラン作品が終了している。近年は新年(度)を境とはしておらず、割とランダムに改廃は行われているようなのだが、単行本の容量に準じているからでしょう。そんな中、kashmir『○本の住人』(MAX、終了)は次号早速新連載スタートとのことなので挙げるだけにとどめておくけれど、連載作品が全て終了となった伊藤黒介については一章を設けておきたい。
『イヴ愛してる』(MOMO、終了)は次期魔王としての子を成すために適格者の元に潜り込んだ淫魔、しかし肝心の適格者たる男性がゲイであって..なかなかくっつけないという異色のラブコメディ。ラブの要素がほとんど皆無であり、展開は人間が創り出した天使と悪魔が人類の未来の為に煩悶するという現代の神話。野生を捨てられない人間に実力行使で理想を広げようとする天使と、一蓮托生であっても構わないから信じようと阻止に出る悪魔、この三者三様の説は実に読み応えあったし、啓蒙しつつ全編お気楽コメディのテイストを失わなかったレベルは見事。ただ、やっぱり以前も指摘した通り話が壮大だった分、副主人公の男性の存在感が最後は薄く。ゲイの設定も引き延ばし要素に過ぎなかったし、ラブの部分も「顔とかもろ好み」程度の描かれ方しか出て来なかったのはちょっと残念。あるいはその辺り捨て去って性と暴力が渦巻く(永井)豪ちゃんの世界観に突き抜けてくれなかったかなと、これは個人的な我儘ながら、人間が変化(進化)するのを信じて行こうとする結論で、果たして描き切れたと言えるのか少々気になってしまった。萌え押しの4コマ誌では限界があったか。
こちらはギャグの世界にまで昇華した、犬と娘のハチャメチャ小学校生活を描いた『ベルとふたりで』(ライオリ、終了)は、最終回を普段通り遊び回った後の夕暮れの家路風景で締める。才を買われて大賞を取った作品を、売れるために絵柄をちょっと変え、親しみやすさを求め成功したわけだったが、最後は人気取りはもう関係ないとばかりに絵柄を本来に戻している。売れるための画風が身に付かなかったということか、この後の予定が出ていないのが気になるところ。もしかして、ストーリーに向かってしまうんじゃないだろうな。作者が離れるとしたら4コマ界にとって大損失である。一服したらまた新たな4コマ作品を生み出すセッティングを各出版社には求めたい。
また別に感心したのは次号(今月売り)最終回となる、きゆづきさとこ『GA 芸術科アートデザインクラス』(キャラット)。学園ものの王道である卒業式がクライマックスとなり、本作も例にたがわず1章が設けられていたのだが、それが何と主人公たちの先輩のものだったからここで終わるとは思わなかった。個々の道を歩み出す、スタートラインを卒業ではなく3年生と解釈したのは新しい。最後までアーティスティックな独自色を貫いた作品となった。

-PICK UP-
同じく長年親しまれてきたはずのロングラン作品が、こちらはひっそりと終了。吉田美紀子は『裸眼でGO!』(ライフ、終了)、『70’s愛ライフ』(タウン、終了)と、4コマ誌の連載が無くなる。
2000年当時にリストアップした、本稿の最初の100人に挙げた時は「現在の売れセン」という括りでそれこそ読み捨て文化から保存する4コマへ進化する黎明期を支えた一人だったのだが、エピソード積み上げ型でないと単行本化への道は険しかったと、この10年を総括する典型例となってしまった。どうにもネガティブな話になってしまうのは、「裸眼でGO!」(07年)「70’s愛ライフ」(09年)とも単行本1巻は出されているから。読まれていても単行本は売れなかったと、いう事実を前に記録を残せと声を上げづらく。もはやネタバレにもならないので紹介しておくと「裸眼でGO!」は最終回、ド近眼の主人公が憧れるド遠視の同僚と突然くっつけられる。ほのかな恋路は示されていたけれど、どちらかと言えば近眼遠視の対比が主眼のネタ元であって、要はくっつこうが本筋ではない。「70’s愛ライフ」に至っては最後は`80〜現在まで一気に40年の時を進めてあの頃を思い出し大団円と、これもまたかつての4コマ作品の王道ブツ切り終了パターンで、読者は唐突に「ご愛読ありがとうございました」と示されることになった。読めなくなる寂しさはあるけれど、読み返す習慣はなかったから「はい、次は?」を繰り返すことになる。しかし「70’s〜」は後半(というか、本作は一旦終了していて復活連載だったような)は読者投稿も載せつつの企画ものに近い作りであったから、資料的な側面もあるしエッセイコミックとして改めて単行本需要あるのでは。あるいは廉価版でとか、何とか保存する手を打つ努力は見せていただきたい。そして年明けて作者にはまた新たな作品で我々を楽しませて欲しい。
もう一人、こちらは分量的にも単行本化されていただかないと出版社としての品格を疑ってしまうのが、きんのりふみ『もいんの高校野球日誌』(タイム、終了)。漫画賞受賞作が連載化されて4年続いて、掲載どまり?ちょっと、理解し難い。作者に対しては今年こそ高校野球がクローズアップされて野球4コマ復権の大チャンスであったのに、甲子園芸人顔負けのエピソードが描かれなかったのは諸々不足であると苦言を呈したいのだが、終了はさておき新人のデビュー作が記録に残されないのでは文化として世界に誇れないではないか。「所詮4コマ」のレッテルを自ら貼り直している様を見せられているようだ。


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