新・現在4コマ漫画レビュー 第55回

(初出:第227号 16.5.21)


TOPIC
荒井チェリー『三者三葉』(きらら)、に限らず作者の魅力は断じて萌えや人情(友情)話ではないと思うのだが..アニメのノリは本作も判で押したような深夜アニメの学園ものの作りで観続けるに耐えなかった。高慢、無頓着、腹黒と価値観が全く違うながら妙にウマの合うトリオと周囲の良い意味でギスギスしたやり取りが眼目なので、台詞のテンポとかは気にならなかったけど、描かれ方つまりは演出だよなあ..。キラキラ眩しい青春とか、鼻で笑うタイプの作品があえてでもなくマトモに爽やかに描かれているんだから堪らない。原作を読まずに初見する分には特に違和感も無いだろうから作者読者は共に長期連載のご褒美としてオマケ扱いすればよろしい。傑作集としておそらく習作時代の未収録作品を収めた(希望)コミックスも上下巻で刊行されるようだし。
ただこれではメガヒットには結び付かないだろう。多メディア展開の目的と意義を見失っているように見える。4コマでの人気要素をわざわざ削ってはいただけない。

PICK UP
単行本で全3巻の壁を破れないのは問題なのか適当なのか。今春の終了作品から考えてみたい。
大河恋愛ロマンを期待した王嶋環『夢からさめても』(タウン、終了)。予知夢に右往左往させられる展開はエピソード毎に綺麗にまとまっていたが、やっぱりヒロイン側の心理も描かれてしまっていたからヒキが弱かったように思える。せっかくのダメ男なんだから二度三度とグラついても良いくらいなのに..恋路自体は順風満帆でした。全3巻まで、と言える。
同じく4コマらしいカップリング成立状態のまま進行し、結論が出たところで終了となった市川和馬『鉄仮面のイブキさん』(タイム、終了)。こちらはオチの素敵すぎる展開が好印象。告白してこういう返答は夢があるよねえ。ただ実は試し読みから何となく読んではいたものの、紹介までに至っていなかった作品(全3巻)(編注)。最終回の印象が良かったので記しておく。次作に期待。
渡辺伊織『ナノレンジャー』(ライフ、終了)はクライマックスをこれでもかと言うくらいの青春賛歌に描き上げた。成長譚としては正しく、熱いの嫌いじゃないが全2巻のエピソードでは感涙するレベルまで盛り上がれず。ストーリー4コマとしての波乱も不足。エピソード積み上げ型で名作となるには通常回(平場)こそ重要になる。読者はそこでキャラクターに深入りしていく。本作は割とテーマに沿ったエピソードが多く、気が付けばすんなり頂上に来てしまったという印象。次はサイドストーリーの充実を図ってもらいたいとずいぶんエラそうだな。
つまりここまで眺めていくと、人気エピソードキャラクター等々が膨らんでこないと、3年3巻くらいで収まってしまうということが言えそうだ。
瀬野反人『ポイズンガール』(ライフ、終了)全3巻、櫁屋涼『腹黒舞子さんとの京生活』(くらぶ、終了)全3巻、OYSTER『ど先端ナース』(タウン、終了)全2巻etc...
山東ユカ『ロボ娘のアーキテクチャ』(MOMO、終了)では最終回で、作者柱コメントに「長期連載叶って読者に感謝」としていたが、個人的には5分アニメに最適の作品と推していて、早くアニメ化されないかしらと思っていたから残念無念。全4巻まで伸びた作品だったがもっと読みたかった。
やっぱり3巻前後で終了となった作品は、内容がいくらまとまっていても読み手としては不足あるいは不満を感じる。4コマはロングランが傑作の何よりの証と言えそうだ。

本筋では無いが1作だけ。コナリミサト『宅飲み残念乙女ズ』(ファミリー、終了)が終わってしまった..。酒漫画としては今一番お気に入りだったのに..。全2巻を読み返します..。

REVIEW
津留崎優『箱入りドロップス』(きらら)
読む作品が決まっていて、年々目減りしていっているビジュアル系にあって気付いたら読む作品(作者)になっていた稀有な例。先日ようやく単行本を手に入れ紹介に至る。
家から出ることを許されなかったタイトル通りの箱入り娘が高校入学を機に下宿したアパートの隣に住むことになって公私とも世話してくれと。あり得ない状況から始まる高校生活が楽しくないはずは無い。読み出した頃はすでにこの充実っぷりが日常になっている状況(進級もしてた)だったから、単純に入りやすい絵柄とテンポの良い掛け合いが気に入ったんだがここまでのお手軽設定とは知らなかった。これで通用するのが4コマなンである。
繰り返しているように4コマの恋愛ものはほとんどがカップリング成立の状態で決定打のみ先送りにしてある。本作も実に初回から、何の障害も無くもう付き合ってんじゃんの世界にある。だからオチは気にならず、ひたすら彼らが面白おかしく過ごす学生生活を眺めている。
かつてはもっと新鮮さを、斬新さを求めていたけれど、もはやこのマンネリが愛おしい。時代時代で受け入れられた夢の学園生活を、今では現実とのギャップを苦々しく思うことも無く享受している。
本作は単行本5巻が来月発売。前述を受ければ紛れもなく傑作の部類に入る。


(編注)当該箇所につきましては、事実と違う内容が含まれておりましたので削除、訂正させていただきました。
原文『単行本2巻まで出ているのに、完結分は出ない模様』
→単行本3巻(完結)が8月発売予定です。
次回記事でも補足致します。   2016.6.9 発行人


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