新・現在4コマ漫画レビュー 第16回

(初出:第161号 10.9.20)


-TOPIC-
一安心。今月売りの「ジャンボ」誌(芳文社)で、ナントカ『ヒツジの執事』が復活登場。これはPR用で、実は続刊のお知らせが。「ヒツジの執事−残業−」と題し、ショート版も併録されるとのこと。これで8割がた、単行本に収録されるのではないかと。
売れ行きを見てからの姿勢に見えるのが苦笑ものながら、単行本化から一歩進んで完全収録が見えてきた。いよいよ4コマの円熟期を堪能出来そうだ。

-PICK UP-
4ヶ月の流れが心地よかった。少女漫画的4コマの旗手である芳原のぞみの『さくらんぼ。』(ホーム)で、「まだまだ(接客が出来ていない)」と言われた主人公がようやく「その調子!」と言われるようになったまでが4回に渡って進められたのだ。しかもそれは伏線とでもいうべき小さなきっかけから。そして主人公は本格的な接客マナーを学び出す。結果、前回の来店時に気付かず犯していた小さなミスを修正することが出来たのである。構図の取り方一つで(知らなければ)平気で描いてしまうようなシーンを、物語が進展するカギに選んだのは作者の取材の成果であろうし、その一行為のみを突き詰めて修正出来たとする安直なゴールを目指さなかったのはストーリーテリングの巧みさと評価して良い。
こういうのが奇しくも主人公の踏み出したプロの仕事である、と思う。「通して」「繰り返し」読む「べき」4コマ作品とは、単行本化の冥利に尽きるではないか!

-REVIEW-
仙石 寛子
期せずしてデビュー作から読んでいたようだ。ただし1誌限定であるが。数年前に「ホーム」誌(芳文社)で読み切り作品が隔月ペースで載り、淡白な筆致に似合う淡々としたお伽話風の話が続いてちょっと注目していたが、その後始まった連載が百合ものであんまり馴染めずにいた。しかし作者の得手はどうやら道ならぬ恋路らしい。初単行本「背伸びして情熱」(芳文社)はまんがタイムKR(きらら)コミックスの「YELL!」シリーズから刊行。「コミックエール!」誌といえば「男の子向けガールズコミック」という珍妙なコンセプトを掲げて創刊された(一応)少女漫画誌で、残念ながら私は未読。作者はそこで男子生徒→女性教師、姉⇔弟というきわどい関係性の恋愛ものを描いていたようだ。とはいえ単行本化でのアオリ「賛否両論を巻き起こした問題作」というほど突っ込んだ内容ではなく、当事者同士の主観のみで恋情愛情が云々されるだけの、言ってしまえば同人ノリの抜け切れていない、空想の域を脱し得ない作品と思えたのだが。全体に漂う透明感にこの軽薄ながら純粋な筋書きがとても良く合う。そして一歩、踏み出した瞬間で物語は終わる。先に触れたあまり食指の動かなかった『三日月の蜜』(ホーム、終了)も同様の流れで先日完結。さらに踏み込んだ内容が描かれることを期待したい..というよりは、恋愛ものはこのスタイルで結構なので、他のジャンルの作品を読んでみたいと思っている。
以下蛇足。今回挙げたナントカ『ひつじの執事−残業−』、芳原のぞみ『さくらんぼ。』2巻、仙石寛子『三日月の蜜』と、何と全て揃って10月7日に単行本が出ます。偶然の一致に過ぎませんが、単行本化が常識となった故の慶事と思いたいものです。


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