新・現在4コマ漫画レビュー 第17回

(初出:第163号 10.11.20)


-REVIEW-
つくづく「お金持ちになりたい」と思うのは、マニアになりきれないから。4コマ誌を、データ資料として数年分捨てずにいたら、雑誌スペースが一杯になってしまったのは当然過ぎる事態。さすがに学生時分の独り暮らしじゃないので床に積み上げておくわけにもいかず。必然、立ち読みのみで回す月日が長くなってしまい、そうなるとお気に入りを拾い読みして(それでも百人単位だし..)立ち去る、これでは新しい作者作品に出会う機会も無い。
そこでひとまず過去の話は出し尽くしたと割り切って、一気に廃品回収へ。そうすると案の定、再び4コマ誌を買って帰る頻度が上がり、熟読していけば新たな発見、出会いもある。しかし彼らの過去の作品が手元に今は無い..。充分なスペースさえあれば、そもそもこんな悩みを持つことなく、バックナンバーをひたすら収集出来るのに..と、自らの甲斐性の無さを嘆いてもしょうがない。ともかくここ数ヶ月で、だいぶ紹介したい作者が増えたのでようやく本題に。

橘紫夕
すでに連載作品はいずれも単行本化されている立派な4コマ漫画家だが、人に歴史あり。数年前まではペット4コマ誌で愛犬を主人公にした作品のみを描いていたら、その発行元が倒産してしまったのだ。連載寸断の憂き目に遭い、急遽4コマ誌へ持ち込みを。その後の顛末は..『となりのなにげさん』(ホーム)の単行本1巻の巻末に記されているので興味が湧いたら是非。
個人的にはザラに見かけるヘタウマ系のギャグ4コマの描き手とばかり思っていたから、5年も前のペット4コマの単行本を見かけたときは思わず手にとってしまった。その当時の絵が現在よりも細かくて、ちょっといいなと思ったので、改めて4コマ誌での連載を読み出すことに。やはり読まず嫌いは損をする。荒唐無稽な世界観ながら、一度飲み込んでしまうとクセになる味を持っている。

水森みなも
芳文社の新人賞は一本化されたものの、相変わらず各誌で連載チャレンジ企画みたいな新人競作をやっているので、我々読者も投稿作品を読むことが出来る。これは結構有益なことだと思う。本連載にならずにズルズルと1年くらい載って結局流れたりすると酷だが、作者のように連載、単行本化へと花開くこともある。持ち込みの時代から、我々は追うことが出来ている。
「スペシャル」誌の新人枠から出て「ジャンボ」誌に載りだし、現在は「ホーム」誌、「スペシャル」誌でも連載となる、支持は得ていたようだがなかなかターゲットの絞りきれなかった流浪の?デビュー作『笑って!外村さん』(ホーム、スペシャル)が来月ついに単行本刊行。外見で不良と決め付けられ、言動も誤解されまくっている、実は真面目過ぎるほどの優等生という主人公のギャップが眼目だが、正直投稿時代には本作がここまで伸びるとは思わなかった。新人らしい、設定に工夫を凝らした読み切りタイプで、単純にネタが続かないだろうと思っていたのだ。しかし見事単行本化である。オチはある程度パターンになっているけれど、容易に崩れない設定を保ち、誤解ワールドは無限の広がりを見せている。

内村かなめ
ゲームアンソロジーへの執筆多数、同人誌もコミックス化されているほどの人気作家である。パロディも一般誌での連載作にしてしまうほどの力量で、4コマ誌へも「ぱれっと」誌(一迅社)創刊から参画している。『もっと!委員長』(ぱれっと)はド級のM気質を持つ生徒会長が周囲にそれと気付かれずに、いや気付かれそうになるのを無上の喜びとして学園生活を送るという破天荒なギャグ作品。これがすでに4年も続いているのだからその才恐るべし。しかし絵柄はキラキラ少女漫画タッチときているから、入り込むにはちょっと勇気がいる。
ところが今や作者のような作風こそが4コマの本流である。ついに一般4コマ誌でも読むことが出来るようになった。『ピュアせんぱい』(ラブリー、ゲスト)はでも、後述するがしごく大人しいのが悔しい、幼児体型のOLが主人公のオフィスコメディ。
他に『限定彼女』(ぱれっとLite)も連載中。むろんゲームアンソロジー等は追い切れないほどに。

遠山えま
少女漫画「なかよし」誌(講談社)で連載中の現役少女漫画家。4コマ誌参入は『ぽちゃぽちゃ水泳部』(ファミリー)で、連載即表紙を飾るように。大食いという共通項を持つデブヤセコンビは何故か水泳部に入部させられる羽目になり..というストーリー性のあるコメディは、しっかりとした画力と相まって絶大な支持を得るに決まっている。ものの、食指を伸ばして手にした「1LOVE9」(スクエアエニックス刊)で度胆を抜かれ、早くもここに揚げることにした。本作は「ガンガン」誌初出の全3巻本だが、萌え要素が詰まりまくっている。エロに向かわずギャグに徹しているところは一応少年誌らしい指向であるものの、いわゆるギャルゲの世界観そのもので展開されている。
本作があって4コマでの力量も認められて4コマ誌へ鳴り物入りで登場、という流れなのだとしたら、正直悔しくてたまらない。なぜ最初から4コマ誌でやってくれなかったのか。間違いなくエポックメイクとなる作品になったはずなのに..何故か4コマのトレンドを先取りするのはいつも一般誌なのだ。「あずまんが大王」しかり、「らきすた」しかり。あ、「けいおん」が今度映画化ですか。..しかし前述の内村かなめしかり、先行はビジュアル系4コマ誌となったに過ぎない。ジャンル自体が新機軸で、やや特化し過ぎているキライがある。一般4コマ誌に何か「大人しく」という制約が存在するのだとしたら、それは大きな障害である。描ける力量を持つ漫画家には積極的に新境地を拓かせて欲しい。作者の作品も更なる飛躍を望む。

小石川ふに
ストーリー漫画家として結構なキャリアを持ち、また装丁を手掛けるデザイナーでもある。最初のシリーズで挙げた太田虎一郎の作品にもゲストで登場していたりと、ビジュアル系を読んでいれば確実に見知ることになる作者ではあるが、4コマ作品を読んだことが無かったので紹介の仕様が無かった。
先ごろ「ホーム」誌に『センセイあのね?』という、担任に初恋してしまう女子生徒を主人公にした大変かわゆい作品でゲスト登場(3号連続)し、あっさり気に入ってしまう。すると、何とすでに「まんがくらぶオリジナル」誌(竹書房)で不定期ながら『鈴木クンは、やる気ない。』という作品を載せているとのこと。他にも猫を擬人化した『ゆるユルにゃー!』(comicリュウ)これも4コマ作品で、すでに単行本あり。しっかり4コマ漫画家として活動していたのだ。徳間の「リュウ」誌は一瞥する程度だから追い切れないのは仕方ないとして、読んでいる4コマ誌で気付かないとは..やっぱり、買って読むに越したことは無いようだ。

森ゆきなつ
こちらは完全に紹介漏れ。「momo」誌(竹書房)創刊からの「いんどあHappy」(終了、全2巻)も読んでいたし、ふと気が付いたら紹介してなかったわ、と。
連載中の『タマさん』(タイム、タイオリ不定期)もすでに単行本が4巻目。二又で関西弁をしゃべる不思議猫が主人公だが、当人いわく「ただの猫やで」。この毎回登場するフレーズに、作品の世界観は現れている。時にSF、時にギャグの交じる、良質なコメディ4コマである。
あまり作品数は少ないものの、ストーリーものも手掛けている作者。先日は有名漫画家総揃いの「マンガ日本の歴史」にも執筆したらしい。力量は折り紙付きで、今さらながら自信を持ってお勧めする。


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