タカハシの目 第57回

(初出:第115号 06.11.20)

「のっけから 季節外れで ゴメンナサイ」(薄幸人)
秋の夜長、皆さん何をしてらっしゃいますか?とまあ、語り口調は最初だけにして。読書の秋、とくれば長編一気読みである。別に夏だろうが冬だろうが構う事はないし、そもそも古本屋での出会い買いに季節など関係ない。あった時が買い時、読み時であるからして..しかし今年に限ればポン、と時間の空いたのが朝晩涼しくなってきた今日この頃で、秋の長雨にウンザリしつつ古本屋に入った途端、そうだ、長いの買おう(読もう)と思ったのだから情緒たっぷりである。であれこれ眺め回してみる。
出待ちの作品というとあれこれあって、山田南平『紅茶王子』(花とゆめ)などいつの間にか完結(すでに新作が!)した作品も早く読み揃えたいところではあるのだが折よく最終巻まで置いてある訳で無し(新刊書店にならあるケド)。やっぱり無い、か..。
こういう時はいつか..と考えてはいた作品をドカ買いするに限る。さて、しかしいざ重い腰を上げてみるとなかなか無いものである。このごろは70年代に注目していて、山上たつひこなど文庫になっているとポツポツ買っているから『ガキデカ』(チャンピオン)辺りあれば飛びつきたいところ。しかしもうレアもの扱いだろうからセットで置いてあるのは稀。といって最近の作品で読みたいものは..。
思えば4コマにハマって以来、長編はとんとご無沙汰で、今夏以降で挙げれば柳澤一明『真・女神転生カーン』(ビーム)くらいか。アトラスの傑作RPG「女神転生」シリーズのコミカライズ作品の中で一番オリジナル色が強く(「if...」を土台にした『学園の悪魔使い』の続編ではあるがサマナーも登場する)、個人的な完結編(「真・2」を近未来編としての続編という意味で。訳分からんねスマン)のイメージに近かった。パートナー(仲魔)のピクシー(妖精)との関係性もいい。ただ..これは作者の出世作『ナルミ』(原作山根泰昭/近代麻雀)辺りから気になっていた事だが、どうもアオリがくどすぎる嫌いがあって、本作でも次回へのヒキがかなり大げさ、思わせぶりが過ぎていて、結論は想像の範疇に留まる。正直駆け出しの頃で御大が原作の『パパラッチ』(原作小池一夫/ヤングジャンプ)が一番面白いな..という感想。
ともあれ、最近は原作ありきに面白いのが多いと考えている。「スピリッツ」を久々に読んだ時(1年前!?)も思った事だが、ディテールや設定に説得力の違いがみられるのだ。キャラ萌えする年でもないのでストーリーに重きを置きたい。そこで目に付いたのが藤原カムイ『雷火』(原作寺島優/コミックバーガー→バーズ)。これには伏線があって、実は今年の始め日本神話をベースにしたファンタジーものを企画。結局ボツ稿となった訳だがその際参考にしようかな..と思っていたのである。作者藤原カムイに関しては初期からのファンで短編集はほぼ読んでいる。ただ本作は完結していないようで(全集では凍結とある)、初版、普及版、愛蔵版、全集と版を変えてずっと目にしていたがなかなか読む気運が盛り上がらなかった。ようやく機は熟したらしい、しかもお手頃価格(愛蔵版全12巻で1800円)。これを手に取る(腕に抱える)。
あとは..と、文庫コーナーでも原作付きで目に付いた作品が。谷口ジロー『「坊ちゃん」の時代』(原作関川夏央/アクション)が全5巻揃いで出ている。このコンビといえば『事件屋稼業』(アクション)が即座に浮かぶ(Businessを時折私、ビズニスと書くのはこの作品が典拠。置いといて)。歴史ものは時代劇画はともかく近代はどうも..と、本作は手塚治虫賞受賞作で漫画読みからも好評を博してはいたのだが読んでいなかった(アクション読者であった80年代後半の連載中も)。
ところで本賞を一昨年受賞したこうの史代『夕凪の街 桜の国』(アクション)が映画化されるそうで。ラジオドラマは今イチだったのでこちらも少々不安を覚える。まあ注目されるのは良き哉(蛇足)。
話が入り乱れており、失礼致します。ただ最近のマイブームが1900年代の上海事情で、本作の時代はこれと若干リンクする。予備知識として仕入れておいても良かろうと、いう名目でこれも買ってみた。
文学史については門外漢なのでそこのところ了承して欲しいが、とにかく当時の有名人(文人に限らず)がこれでもかと勢揃いでしかも「出会いまくる」。実際にそうだったのかも知れないしまた演出上の創造もあるようで、「いくつかは(事実にはないと)知りつつも無視した結果」と後書きにも記されている(( )内筆者)。最終的に漱石の半生に帰結するのだが、つまりはドラマチックに練り上げられた「明治群像」ものと言える。従って史実として鵜呑みにするのは少々剣呑であるのだが読み物としては痛快で面白いし、(個人的には)歴史物を構築する上でこの手法は大いに参考になった。やっぱり大物同士は縁づかせたいもの。
ところで「雷火」の感想は?と、これがまだ読んでいないのである。冒頭で秋の夜長..としたのも読んでからと一月延ばした結果の遅れだったのだが..どうやらまだ、食指が動かないようで..。夏にまとめ買いした皇なつきの中国もの短編集(文庫)も一冊(『北京伶人抄』)しか読んでいない。年の瀬は買い置きの本を読む事で精一杯の予感。
でもそろそろ、巡回しておきたい頃合なんだよなあ..。少々ジレンマ気味の晩秋でありマス。



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