まとまりのない、600円のコラム 石垣 ゆうじ
無職の身になってからというもの、外出する際には節約として昼食は省いている。我慢するとリバウンドは付きもので、近頃は財布の紐がゆるくなってきているのも事実である。
気付けばサラリーマンのはける頃合いを見計らって、暖簾をくぐっている。
そこで胡麻ジャン麺(600円)をすすりつつ、甲子園の地区予選決勝戦などを眺めていると「オオッ俺も日本人だべや」と妙に嬉しくなったりするのだ。「高校野球って軍隊だよなあ」とひとり言を漏らしては、お冷をグイッと飲み干す。
思わず七回裏から試合終了後の校歌まで観てしまった。私の世の中で最も嫌なもののひとつである高校野球を、ついつい涙ぐんで観てしまったのである。そんな自分が好きだ!!
「青春とは未完成の成熟である」などと頷き、独りごちる。大物になった気分だ。一杯600円のゴージャス。
朝は雨降りだったが、今はもう晴れ間が覗いている。そういえば友人のノガミに「晴れたから街に出てきた」とわざわざメールすると「思いっきり張らせてくれ」と返信が届いた。痛快だ。
しばらく商店街のアーケードを闊歩してから表に出ると、空はまたもどんよりとしはじめた。それでも私は引き続き好調を維持していた。
「くもってはいるが仙台だ」「魅力のない街、仙台に、魅力を感じて29年」「仙台よオレに恩を返せ」と名台詞が次々に飛び出してくる。頭の中で言葉が小躍りしている。
明日はまた節約だが、とりあえず今日という日は、600円の価値はありそうだった。
まるで愛犬ナナのようだ。ナナは眠くなったり、腹を空かせると不満を露にする。極端に不機嫌になるのだが、それを満たすと、ゴロンと横になって社長ヅラをしている。ペットは飼い主に似るというのは本当だ。
この頃は愛車のマーチやブルーハイウェイ号(自転車)まで私に似てきたようだ。車のタイヤは空気圧のせいかバランスが悪く、自転車のホイールも心なし歪んでいる気がする。
私自身、腰痛持ちで、左右の脚の長さが違ったりするのだが、何の根拠もなく、それもいいのではないかと思えてしまう。ふと『自分の好きな色が一番美しい』という、リキテックス絵の具のキャッチコピーを思い出した。
Hot Stuff
某工業大学の美術部作品展。ふつうなら記帳しないのに、その日に限って私は書き込んだ。住所と名前。そして「後藤くん(仮名)、君が一番下手で一番いい」と書いた。自分自身がモノを書いて、誰かに評価されたがっているせいなのか?(ろくでもない作家だ)善くも悪しくも私の粗評が若きアーティストのやり甲斐につながるのではないかと、余計な老婆心を働かせてしまった。「君が一番下手」などと。せめて「決して上手くはないが」と書くべきだった(同じことか)。オルタナ誌『ショウダウン』に寄稿している友人の『巨匠』アトミック海口の文章を読んだ。相変わらずいい味出している。私は思わずメールした。『写真や絵画、上手くても何も感じないものは感じないが、下手でもいいものはいい。(君の文章は)弱犬の遠吠え的な滑稽さの中に愛らしささえ感じます』と。間もなくして返信が届く。『先程のメール、私の文章はヘタなのだね』『俺よりは上手くないが、俺より実力がある。だから不安を感じた』と私。すると『..そう思ってたとは..。あからさまに言われるとショック大』『(自分より)上手い文章だと感じても「俺よりヘタ」とは思いません』私は愚か者だ。