駄目だコ〜ラの巻 石垣ゆうじ
コーラは骨を脆くする。事実、コーラ好きの友人は、ドロップキックの着地に失敗して手首を折った。まあそれは中学生の頃の話だけれど。
私としても以前、頻繁に通っていたステーキハウスでウィスキーコークをよく飲んでいた。何かの雑誌でロデオカウボーイが飲んでいるのを見て真似をしたかったというのもある。ただ、ウィスキーコークを好んだ一番の理由はといえば、ビール以外で手頃に安く酔えるのが、この琥珀色とカラメル色の液体混合物だったのだ。
今ではたたんでしまったその店は、米国テキサス州の別名である「ひとつ星」が由来である。何でもいいから、一番デカイ事がこの州の住人の誇りであり、Tボーンステーキの大きさといったら、こんなもの一人で食いきれないよというボリュームであったが、私はただの一度もその肉を塊を賞味した事はない。(貧乏は悪だ!!)
お目当ては、一時間毎に演るカントリー音楽の生ライヴと、カウガールに扮したウェイトレスとお近付きになる事だ。
振り返ればダサかったと自分を責めるばかりだが、私はそれが格好良いものと信じていた。カウボーイハットは被らなかったが、夏でも長袖のウエスタンシャツにラングラーのブルージーン(それに私はスーツ同様に折り目を付けて穿いていた。西部ではジーンズも正装だからだ)、そして刺繍入りのカウボーイブーツという出で立ち。そんなもん、モテるはずがないのだ。
それでも、この店のチーフディレクター兼カントリー歌手のコーリンとはだいぶ親しくさせてもらった。私は日本人でカントリー音楽好きだが、彼は米国人で空手家だった。歳は彼の方が一つ下だったと思う。お国が変わっても先輩後輩の上下関係は、あって然るべきである。
私はコーリンに命じて(懇願して)、お気に入りのカウガールにウィスキーコークを運ばせた。ぐいぐい飲む。彼女は彼女で意識したのか、その時以外は私のテーブルには近づいて来ない。ともすれば、自分の脳ミソが空っぽなのも忘れて、グラスを空けるのに躍起になるだけだ。
結果「一夜限りの妻」というのは、男が女を捨てる、その反対なのだと学習した。そして、女は男心を、コーラは骨を脆くする事も。暫く体が痛んだ。
Hot Stuff
物凄いていたらくぶりだ。映画を観終えて自転車を漕いでいると、某らくだ印の煙草メーカーの看板が目にとまる。『最高の自由、最高の満足』まったくもって、チープ&プアーな世界。それでいいのか、と叫びたくなった。その前に観ていた映画『モーヴァン』これも酷かった。私がもう少し病んでいたなら、間違いなく金返せコールをしていた。モーヴァンというのは娘の名だ。彼氏が「この小説を出版社へ」というメッセージを残して自殺するのだが、この娘は多少の動揺はきたすものの、著名を自分のものに変えて原稿を出版社へ送り、その契約金や彼氏の貯金を遣って遊びまくる。ただそれだけの映画だ。自殺した彼氏や書かれた小説について語られるのは極わずか。モーヴァンときたら、遺体のすぐ隣でクリスマスプレゼント(彼氏に届いた品だ)を吟味したり、風呂に浸かったりしているという始末。彼女の友達は決して親友という訳ではなく、馬鹿騒ぎ用の相棒に過ぎない。とにかく許せないのは、彼氏に対するリスペクトの気持ちがない事だ。まったくただ単に擦れた娘の人生を描いたって何もあるはずがないのだ。唯一、人間は死んだら終わり、それだけは分かった。