「ハイ、終わったからねえ。」と若先生がオレの耳元で言う。手を縦に振り、ライトを消すように看護婦に合図をだしながら「耳だれが出てくると思うけど大丈夫だからね。」と若先生。今度はゴム手袋を取り、汚れていない手を消毒しながら言った。(合理的だなあ)と考えながらベットから立ち上がろうとしたオレを看護婦が手で制した。「ゆっくり立ってくださいね。感覚がおかしい感じがすると思いますんで。」何の事か全くわからなかったが言われたとおりにゆっくりと立つオレ。おかしい。感覚が。いつものように垂直に立っているようではない。立ちくらみが長く続いているような感じだ。へんな感じを味わいつつ階下へ。老人のように手摺りにつかまりながらゆっくり降りる。診察室には若先生が待っていた。イスに座り話を聞く。「ちょっといつもと違う感じでしょ?だいたい一日か二日位で直るから。」と言われ診察終了。二日後朝方耳からドロッとした液が出る。耳だれ。クサイ。翌日病院へ。いつもの検査。そして経過報告。手術したのでやはり良好との事。一応もう一回来るように言われる。この頃はすでに普通に音が聞こえる状態になっていた。もうほぼ完全に治ったようだ。三日後病院へ。待合室のドアを開けるといつもはオレが一番のはずが誰かがいる様子。ヘヤには新聞を読んでいる父親と落ち着きのない飛びはねるガキがいた。(終)