大勢が見えないと軽々に扱えない案件と思っていたら、3ヶ月も見に回ってしまった。
長年読み続けてきた経験が今回は災いし、勝手に振り回されただけというか..時系列で私見を記しておく。
(編注:今回は芳文社括りにつき表記を割愛しております。)
ようやく「まんがタウン」誌(双葉社)休刊を消化出来たと思った年末にこの展開は胃に悪すぎる。12月売りの「まんがタイムオリジナル」誌2月号、表紙裏にため『鈴宮さんのダジャレをスルーできない』(タイオリ)待望の1巻発売が告知され良し良し。惹句にアオハルなんて使っちゃって、なんて浮き浮き。本編も記念の巻中カラー扱い、なのにラストページには次号クライマックスの文字。ええ、終わっちゃうオチ!?
そう言えば..その前に載っていた単行本未刊の2作品が次号最終回となっていた。
らぱ・『夏っちゃんはととのわせたい』(タイオリ)
やまうち『ヤンキー、ザコ男に片想い』(タイオリ)
ちょっと、多すぎないか。この疑念が後半確信に変わる。ゲスト扱いだった巻末の5作品が全て次号最終回。
namiki『敷金礼金ヤンキー付き』(タイオリ)
鬼龍駿河『カントリー少女は都会をめざす!?』(タイオリ、1巻のみ)
金田ライ『通勤通学クエスト』(タイオリ)
かわのゆうすけ『氷室君は板野さんの事が覚えられない』(タイオリ)
真木たなひ『オネェの恋のはじめかた』(タイオリ)
トドメは目次横の超長期連載、『やくみつるのズバリ!!一発勝負』(タイオリ)は芳文社との思い出が語られ..次号予告にこれも最終回(276回まで)の文字。
その次号、創刊500号のメモリアルで、クライマックスとなっていた「鈴宮さん〜」の紹介に最終回の文字は無い。無いけれども..疑心暗鬼で読み返せば、どの作品も近々に完結しそうな流れに見えてくる。年度末で休刊の流れが見える。
年明けて「まんがホーム」誌2月号は戦々恐々でめくるにふさわしい匂わせの渦巻く展開。巻頭むんこ『らいか・デイズ』(ホーム)が21年目にしてサザエ時間を動かす宣言。「来年卒業します」の「最後の1年」(作中より)は時間軸と同期するのか。各作品とリンクしているむんこ『花丸町の花むすび』(タイム)では中3の生徒会長として登場しているが中学編に突入するとかは無い、の?
杜康潤『孔明のヨメ。』(ホーム)は次号特別編で本編は次回4月号からと告知。少なくともそこまでは「ホーム」誌、出ると。しかし新手の数作を除いてどれもこれもクライマックスが訪れている展開。
桐原小鳥『ヲトメは義母に恋してる』(ホーム、全3巻)
週末にはラスト「まんがタイム」誌2月号、読むのが怖い。案の定、あれも卒業、これもクライマックス、そして数作が現実に次号最終回。
あきさと『午前0時のおねだりごはん』(タイム)
せおの回路『校長フライハイト』(タイム、ゲスト)
ここまでは「どれが休刊になる?」としか思えない、18年〜20年の休刊ラッシュと全く同じ流れ。
ところが事態はここから停滞する。個人の勝手な推測からすれば、なのだが。
現在各誌とも、変わらず続々と最終回作品が出ていて、いつ「休刊」の文字が現れても不思議では無い状況。
ため『鈴宮さんのダジャレをスルーできない』(タイオリ、全2巻)クライマックス=最終回でした..
おりがみちよこ『若王子主任は後輩ボイスに抗えない!』(ホーム、全2巻)
町田すみ『女神に胃袋つかまれた!』(タイム)
きなこ『お天気おねえさんの晴れ舞台』(タイム)
しかしながら鍵と見ていた「オリジナル」誌は最新4月号、通巻501号目にしてリニューアル?「アソビゴコロがオリジナル」から「元気がでるオトナマガジン」として表紙と目次ページのレイアウトが変わる。新連載が一挙3作品で内訳はワイド1、ぎんもく『沖浪荘202号の漫研部』(タイオリ)、ショート2作品。高津ケイタは満を持しての新作で初回24Pって、ストーリー漫画じゃないか。ゲスト扱いの4作品分..4コマ誌としてのバランスが気になるものの、この力の入り方からすれば存続は固そう。
そして思うところあって、唯一買っていた「きらら」誌(12月号)を掘り返す。前回取り上げた独立創刊20周年号だが、最終回が1作品、新連載が3作品。次号が最終回も1作品ある。そう、節目だからというのではなく、ビジュアル系は常時入れ替わりがあって、それは主に「単行本になる話数」から来ている。
すでに一般4コマ誌も同様になりつつあって、そう言えば近年は春秋の改編期で終了した作品、なんてテーマで語ることも無くなっている。
つまり最終回作品が多い号が休刊への布石ではなく、通常営業だとしたら。「オリジナル」誌のコンセプトチェンジにすわ休刊だ、と右往左往しただけなのではないか。
こう思い直して各誌を眺めていくと、単行本未刊の作品もゲスト扱いでの登場も変わらず存在している。そうか、新連載の枠を確保するための大量完結が異様に見えただけだったか。妙な勘繰りで先走らなくて良かった、と胸を撫で下ろしたものの..一抹の不安が拭えずにいるのは来るべきXデーでの狼狽を体験してしまったからか。
ただ少なくとも、「育成枠の放棄」というのは今回はっきりしたのではないかと思う。新人の紹介は変わらず不定期に各誌掲載されているが、2Pに寸評が付いたまんま投稿作。つまり誌面掲載だけの作品は向後確実に減っていくだろう。未刊作品は出るだろうが、それはおそらく短期間での終了作品に限られていく。反響が少なければ随時入れ替える、ビジュアル系の戦略が採られるのだ。
そして電子版との融合も進んでいる。「オリジナル」誌は新連載のラインナップ然り、単行本然り、同社独自の配信サービス、「FUZ」とのつながりが鮮明になっている。手元にあったデータを突っ込んだまま、まとめられないでいるように見える外部配信サービスでの展開と違い、一応全話を網羅した(していく)形にはなっているようだ。
とはいえ過去作も一緒くたに連載になっているとか、まだまだカオスの状態に見えるのだが。某TVCMのように未読コンテンツ満載の魅力的なフィールドとしているのだろう。
比べれば順当な単行本化、新人(新連載)の趨勢、ワイド4コマの快進撃と、決して状況が悪化、劣化している訳ではない。言えるのは読み手側の変化。つまり紙媒体を購読する人が増えることは無く、スマホで読む人が多くなったのだ。
これは外食産業の現状と似ている。つまり567禍で「家呑み」が定着し、戻って来ない。原材料高騰が続き、コストが増えているのに価格転嫁出来ない。採算が取れず、撤退が相次ぐ。「家呑み」を「スマホ読み」とすれば4コマ(出版)界もピッタリ当てはまる。
いずれにせよ紙媒体の4コマ界は併呑ではなく瓦解の道を進んでいる。ライバル誌(社)の台頭が原因ではないところが悲しい。
古の兵どもが夢の跡
完全移行もいよいよ迫ってきたわけだが、4コマ誌としての体裁で提供されなくなれば個々の作品のファンがおすすめに従って同系統をつまむくらいで、マスとしては更に縮小を余儀なくされるだろう。
18年〜20年の休刊ラッシュは枝葉切り、今回(22年〜)は幹まで倒れている。次の5年後、サイクル早まっているから2年半後か、私はどこで4コマを読んでいるのだろう。