-TOPIC-
予言者では無いので当たるも当たらぬも。前回取り上げた井上とさず「オレの愛で世界がヤバい」(芳文社)の単行本は予想を上回る強プッシュ。「まんがホーム」誌(芳文社)12月号、表紙裏を使ってのフルカラー告知は「ジャケ買いもあるで」のインパクト。一方佐野妙「ホントはダシたい山車さん」(タウン、終了)はとんとん拍子に話が進んで次号最終回の予告。あれ〜?時間軸が戻ったら終わってしまった。読みが見当違いだったな..と苦笑いしていたら凍り付く。「まんがタウン」誌(双葉社)12月号、白背景に文字だけのページには「次号をもって休刊」のお知らせ。3強の1がついに撤退する。
リリースでは「クレしん」が公式サイトでの掲載に「媒体変更」とのことで、つまり屋台骨を鞍替えするから存続出来ぬと。元々「クレしん」特集号であり、現在のラインナップもショート作と半々である。これは言外で明言しなかった「主任がゆく!」誌(ぶんか社)の隔月刊化への縮小にも言えることで、4コマ専門では無かった漫画誌の「増刊扱いに戻します」「他媒体で」といった経営上のスリム化は4コマ誌としての紙媒体離れではないと思いたかったが。
植田まさし『かりあげクン』(タウン)は「漫画アクション」(双葉社)、たかの宗美『派遣戦士山田のり子』(タウン)が「JOUR」(双葉社)へ。大ベテランが紙から紙へ移籍する他は全て「webアクション」での「配信」となる。打ち切りの憂き目に遭った作品も気が付けば「電子単行本」のみでの発売が大半を占めていた。そして休刊号での編集長の挨拶には「昨今の雑誌媒体をめぐる状況の変化を受け休刊にいたりました」と..。
4コマ界でも間違いなく紙媒体は終焉の始まりを迎えている。いや、「何で電子版でしか出さないの」とか言っていた頃からもう始まっていたか。
しかし4コマ作品を見ることが稀になった訳ではない。
その昔「漫画情報誌」というものがあった。今は私でも情報はサイトを見る。また某業界でも動画配信の可能性にいち早く注目した方が大活躍されている。同じく今や私でもTVを観るよりネットで観る割合が格段に増している。日常は変化していく。たとえ4コマ誌が100年持たずに消滅したとしても4コマ作品は健在であろう。
但し先立っての竹書房を見れば移籍作品はすでにほぼ残っていない。20年近く続いた超長編も、WEBに移ったら一年ほどで終わってしまった。継続作品がデジタルネイティブの方々にも愛読されることを願うしかない。他力本願。
-PICK
UP-
あfろ『mono』(キャラット)3巻を入手し一読したところ、自作キーボードのエピソードを読んだ記憶がある。奥付で確認すると22年4、6月号の回。そうか立ち読みしたの1年前になるか..とこの時は思っただけ。それから1月、2月後。本棚に積まれた単行本を何気なく漁っていると、あfろ『mono』3巻の2冊下から現れたのはあfろ『mono』3巻。!!??
思わず2度、3度とめくり返すも帯付き帯無しの違いだけで表紙は同じ。間違いない、ダブり買いしてしまっていた。それにしても10巻〜の大長編で十..何巻までだっけ持ってたの。まあいいや、買っちゃえ、でのダブりとは質が違う。わずか3巻ですでにやらかすとはアラフィフの力なのか..と暗澹する。その通り、買った記憶が全く無いのは認めるものの、そういえば567禍でコンビニですら立ち読み不可になっていたから1年前に立ち読みしたはずがなく。つまり先に買った方はパラ読みしただけで積ん読になっていたのか。それにしてもかき氷めぐりやどんぶりウォークといった好物のグルメ回で再読に気付けなかったとわ..反省しきり。
ただ単行本についてはこのところジャンルを問わずこんな感じで再読三読の作品は少ない。掲載誌購読ですでに読んでいるから最初から読み返しの意識。デジャヴーありきで開いているので違和感に気付けなかった。
同時に現在のビジュアル系との関係も実感出来るエピソードとなった。数年ぶりに立ち読みがまた出来る状況になっているけど、一般4コマ誌は購読中。ビジュアル系は置いている店も少ない(一般4コマ誌もだけど..)上に、立ち読みも単行本買いしている作品の健連在載確中認をチェックする程度。知った方の新連載でもあれば読むんだろうけど..荒井チェリー「むすんで、つないで。」(芳文社)、あら1年も前に終わっていた。
対象年齢から外れている、そう言ってしまえばそれまでの話ながら、4コマ紹介していてスルーしっ放しで良いのか。紙媒体からの撤退が相次ぐ中、4コマでジャンルを絞った専門誌として安定した支持を受けて未だ複数誌展開している成功事例として、「まんがタイムきらら」誌(芳文社)が丁度独立創刊20周年記念号だったので購読してみる。
ワイド4コマ作品って無いのか。意外。セリフの量相変わらず多いな。清々しいほどキャラ構成が一緒。かつてなら「悪い見本」とされていた特徴がスタンダードになっている。20周年企画として読者から「感想文」を募集し、9ページにわたり10名の「イチオシ」を掲載していた。一般4コマ誌なら巻末に載るお便りコーナーの拡大版であるが、想いの丈を掲載誌の募集に応じて送る熱量たるや。誌面を愛する読者に長年支持されていることが分かる良企画だった。
ビジュアル系は4コマ界における人気至上主義の典型だから王道というより覇道と見ていたら、ビジネスライクも貫くとこのように昇華されて漫画家読者共々育む土壌に変わっていた。歴史というものの奥深さを目の当たりにする。
ドキドキ・ビジュアルというキャッチコピー、ロゴは変われどまんがタイムの名を残し、メディアミックスも電子化も順応した新旧併せ持つ希望の星。買い支えは若い方にお任せします。他力本願。
-REVIEW-
茜りう『はなまるゲーセン飯!!』(ホーム)
例えば新連載の宇仁田ゆみ「ねこまた印の染物屋さん」(ライオリ)も同じ作りなのだが、作者の前作が「もぐもぐガーデン」(竹書房)というエッセイだったのでこれもショート作、とスンナリ言える。本作も「ワイド4コマ」とは明記されず、ページ4コマの構成なのだが定型ではなく。
画風といい展開といい別格なので即紹介したかったもののワイド4コマの定義が揺らぎそうで様子見していた。3話目にして、ついにほぼ定型4コマの作りになったので本作は「ワイド4コマ作品」であるとして挙げさせていただく。
田舎のゲーセンで理想郷の日々を送り始めたゲーマーの話である。美少女、ゲームに郷土料理が加われば老若問わず食い付くに決まっている。私は方言と料理にドンハマり。
作者はイラストレーターでもあり、音ゲーをモチーフにした作品で田舎から都会のゲーセンに来た、本作の逆パターンもあるから得意分野にグルメを足した万全の態勢で臨んでいると思われる。コマ割りに少しだけ縛りを加えて、創意工夫も見える4コマ作品として大成させて欲しい。
森永まさと『跳べないウサギと神の島』(タイム)
止まらないワイド4コマの進撃は果たしてビジュアル系のポストと成り得るのか。新連載にして即挙げさせていただいたのは冒頭として満点の出来と見たから。
田舎の島に一人戻ってきた少年が早々に再会したのは幼馴染の1コ上の少女。しかし彼女は空から降ってきて..。ほのぼの甘々恋愛コメディの雰囲気でありながら伝奇ものの設定が満載。といって最初から大風呂敷を広げるでもなく、肩の力は抜けまくっている。これは..この作品は間違いなく読み込める。
作者は脱サラしてデビューしたそう。少年誌でのラーメン漫画が完結してファンタジーで4コマに登場した。この流れは4コマ「誌」として吉兆であろう。紙媒体の一縷の望みは縦への適応ではなく、横に伸びろ、か。