新・現在4コマ漫画レビュー 第94回

(初出:第314号 23.8.22)


-TOPIC-
ふるさと納税のアニメ版というCMを眺めていたら程なく始まった本編(「邪神ちゃんドロップキック」コミックメテオ)をたまたま観る。原作ユキヲは「まりかちゃん乙」「宇宙ファラオ・パトラちゃん」(ともに芳文社)の!?同時期から連載中の非4コマロングラン作品で社会活動にまで絡むご活躍。
ぼやかすけど今期のオフィスラブコメ、その設定あきばるいき「ちっちゃい先輩が可愛すぎる。」(芳文社)が5年も前にやっている。
アニメ化がステータスの全てではないけれど、4コマ惜しいとこいっていたのになあ。
はまじあき『ぼっち・ざ・ろっく』(MAX)など、ビジュアル系は変わらず送り込んでいるし評判にもなっているのに。周辺だけ盛り上がっている感覚が拭えない。

-PICK UP-
ため『鈴宮さんのダジャレをスルーできない』(タイオリ)の運動会エピソードは、その後の展開が一気に膨らんだ意味でも大変良かった。このところは色々な作品で「次号どうなる?」と思わせるヒキが見られて実に結構。特に芳文社が割合高く、新人枠としてストーリー4コマが定着しつつあるというのは心強い。
しかし展開が進む=完結に向かう流れも止められないようで、井上とさず『オレの愛で世界がヤバい』(ホーム)は転がり続けて全容が見えてきた..ところで次号最終回。今後各個のエピソードが語られていくと思っていたら、早くも主人公に焦点を合わせますか。そして単行本、未刊ですか..?
ストーリー4コマの定義に当てはまる作品として期待していただけに念が残ると同時にちょっと自信を失いかけて完結から20年になる小池田マヤ「・・・すぎなレボリューション」(講談社)を再読。何年ぶりになるか分からないほど久々だが全8巻一気に読める。破顔一笑の展開幾度となく。今もなお手本に出来る秀逸なストーリーテリングだがコンプライアンス的に現在では無理な内容かな、とは思う。そして4コマ誌でも大活躍した作者だが本作は女性誌掲載だった。
非4コマ誌からしかキラーコンテンツは生まれないのか。前述と合わせてそう思ってしまいそうになる。いやいや、近年のワイド4コマの充実を見よ。まだまだこれから。

-REVIEW-
タカスギコウ『お憑かれですね杏子さん』(タイオリ)
別ジャンルからの4コマ進出は珍しいことではないが、この絵柄は強力であろう。成年向けで抜群の画力を誇る「令和の絵師」(初回惹句より)がコメディ4コマで登場した。セオリーも設定も関係ないくらい、キャラクターを見ただけで好感しか産まれない。格安物件に入居したらイギリス紳士の地縛霊が居て..「成仏できないでいる理由ってなんなのだろう」、まだ第2話で早くも核心に迫ろうという展開は短編の予感がしてならないが、すでにして話数がクレジットされていることに期待する。例えばこの2人がタッグを組んで、厄介なトラブルに立ち向かっていく連作ものに膨らんだりしたら..。ワイド4コマに名作がまたひとつ。


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