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昨年後半から「作者体調不良につき〜」で各社過去作を掲載していた植田まさしが先ごろ復帰。がんが見つかり治療していたということで、まずは6月から休んでいた新聞4コマを再開の様子。『カリアゲくん』(タウン)が令和になって実写ドラマ化という慶事に作者不在で気掛かりだったがひとまず。日刊、週刊、月刊と実に幅広く連載を持つ超大御所だから無理せず..と思っていたら各誌続々と再開を発表。いやはや何とも(ポリポリ)。
空きスペースが一杯で、雪崩が起きそうなので泣く泣く昨年の4コマ誌を手放す。未練がましく読み返していると、意外と多くの新作が連載叶わず消えていっていることに気付く。立ち読みではタイトルすらうろ覚えで載らなくなるから定期購読が習慣化した昨年に限ったことではないのかも知れないが。
休刊による統合で一気に枠が限られてしまったからか、竹書房では4コマ王受賞作、雲井橙「けっぱれ!なまはげちゃん」といった新人作から初登場と謳う進出作まで軒並み立ち消えになってしまった。いつの間にか新人賞も無くなっている。「それどころじゃなくなった」感の強いこの辺りの不義理がいずれどう出るか。
対してまだ余裕のある芳文社は新連載の定着率は高いものの、未刊のまま完結などこちらも攻勢には回れていない。ゲスト枠もキャパオーバーか飛び飛び掲載が相次ぎ、投稿作紹介のコーナーも不定期となっている。この投稿作とゲスト登場作が噛み合っておらず、デビューまで育てるという過程が果たして存在しているのか少々疑問。ペンネームや絵柄に見覚えがあって、かつての投稿新人?と思えるのは極々稀だ。
ぶんか社、双葉社はこのところ4コマにこだわらない誌面構成でショート作の比率が高まってきている。おりはらさちこはこの2社で切れ目なく連載を持ち続けているがショート作のみとなってしまった。
最新の今月売りでは『先輩に推されて仕事になりません!』(ホーム)のあしや稚浩が竹書房に初登場、ショート作「食欲しか勝たん!」(双葉社)が単行本にまとめられたえきあがぶんか社に初見参と、躍進の場は確実にある。今年は「初」4コマ作品で登場という流れが見たい。
-PICK
UP-
ショート作のスケラッコ「ここは鴨川ゲーム製作所」(ライオリ)を読んでいてあっ!となったのは、柱にある登場人物紹介。その回に出てくる端役まで網羅されている、親切!というのも芳文社の某歴史ものが著名なキャラのみで固定されていて、「あれこれ誰だったっけ?」となったのに分からない!ことがあったから。定期購読者としては特に必要なものと思わなかったが、このように欲しい時もあると分かって何となく漁ってみると、実に千差万別。
きっかけとなった竹書房は本作にしか付けられておらず、柱部分は単行本PRに余念がない。コミックスの宣伝コピーがあらすじ紹介になっているということか。
この点優秀なのは双葉社。4コマ作品は全て人物紹介がある。唯一、ボマーン『まあみさんとレトロ遊び』(タウン)だけ付いていなかったのはゲスト作だったから。連載となって晴れて人物紹介が付けられた。この辺りの線引きも明確だ。
ぶんか社はさらに豪勢で、各作品の前ページが丸々「あらすじ」と「人物紹介」になっている。当初は右ページが空いている場合だけ「今月のスポットライト」と称して掲載していたが、好評を得たか「もっと魅力まるわかりガイド」となって全作に付くように。しかし定期購読者にとっては空気のような存在であるのも確か。
芳文社に明確な基準はなさそうで、作者次第のようだが最近作の掲示率が高いのは時代の流れというべきか。そんな中、非常に助かると思えたのは過去作のキャラクターが登場したり、裏話をネットで公開したりと相変わらず旺盛に筆を振るっている大ベテラン(笑)胡桃ちの『ミッドナイトレストラン7to7』(タイオリ)。短編集型(3話以上を費やした短期連作が続いていくタイプ。ストーリー作品では探偵ものなど昔からある形だが何と表現すべきか)なので、あらすじが現シリーズの経緯紹介になっている。定期購読者としても、数ある連載の中で混同しがちな展開を把握することが出来る。
このフレキシブルさを見習えば、路線変更の可能性が高く、キャラ設定の定まらないゲスト作にも紹介は付けられると思われる。苦い経験としては定期購読から本格的に読み始めたものの、年の差カップルの経緯(特に出会い)が分からないまま完結してしまった近衛桜月「負け恋。〜ズルい恋の始め方〜」(芳文社、未刊)がある。
ぶんか社の「もっと魅力まるわかりガイド」に付けられた惹句「初めましての方もお久しぶりの読者もこの1ページで大丈夫!」は習作にこそ必要である、と読者として要望したい。
-REVIEW-
あきさと『午前0時のおねだりごはん』(タイム)
職場では上司部下の関係がプライベートでは逆で、というオフィスラブコメはド定番であるが、本作の眼目は女性同士というところ。部下ちゃんの実家の食堂で作ってもらう料理に癒され励まされという食漫が主軸であって、既存のマイナスラブというだけで特に目新しさは..いやいや、少なくとも部下の方は本気で嫁の座を伺っている。といって百合ものとも括れない、コメディが全面に出ている作品であって、ジェンダーレスの時代を感じさせてくれるところに新しさがあると思っている。
かつてならこの手のカップリングであれば煽りは「話題作」「問題作」と付けられ、何らかのメッセージが込められていた。現在は読み手も含めてプレッシャーを感じることなくアットホームな作品として純粋に楽しめている。
作者はたぶんまだ駆け出しと思われるが、グルメ漫画、漫画家に接点が多く、もしかしたらアシスタント経験者かも知れない。ぶんか社のムック「俺流!絶品めし」で連載を持ち、別名義ではエロも嗜むそうで、4コマでも大いに活躍してもらいたい。