新・現在4コマ漫画レビュー 第89回

(初出:第301号 22.7.21)


-TOPIC-
紙媒体からの撤退と映ったから慌ててWEBに行ってみた。
「まんがライフ」誌(竹書房)が9月号(今月末売り)で「休刊」しますと前号に告知。自社ビル売却移転もあったし苦しい台所事情かと思ったものの、初見にして最大の懸念は「え?本家が無くなるってどういうこと?」。
例えば最盛期で4誌出ていたと記憶する同社の「近代麻雀」誌も今や1誌のみの展開だが「ゴールド」が残ったわけではない。枝葉切りと言う通り、通常は冠タイトルを残すものである。「オリジナル」タイトルのみを残す辺りにいずれ近いうちこれも..という不審が募る。
いがらしみきお『ぼのぼの』(ライフ→ライオリ)がいち早く移籍で告知には「新連載」とあるから「ライオリ」はひとまず存続と見えたがこの疑念があって油断出来ない。
「まんがライフオリジナル」誌(竹書房)8月号の11日発売まで半月ほど、やきもきしている間にWEBを覗いてみたらいつの間にかトップページでは企画もの(柘植文「編集部観察日記」と施川ユウキの映画コラム)しか挙げておらず、情報・PRは出版社の発行物案内ページにて個別に。そして「まんがライフwww」というサイトで近作を中心に作品がアップされているではないか。
これは即ち、漫画誌を発行しているよりWEB漫画を単行本で売った方が割が良いと舵を切ったのだ。こちらの気構えが整わぬ内に新時代が始まってしまった。そう思って「www」の詳細を眺めてみれば最初の2〜3話+最新回(1月の時限公開)のみと単行本PRのお試し読みレベル。ここは本拠では、無い。方向性が見えて来ず、オロオロと「ライオリ」最新号を買ってみれば次号はとりあえず佐野妙『だもんで豊橋が好きって言っとるじゃん!』(ライフ→ライオリ)が移籍。常の統合パターンで一安心。
しかし2誌ともに連載のあった佐野妙『森田さんは無口』(ライオリ→WIN)はWEB漫画への移籍が告知。同じく神仙寺瑛『動物とおしゃべり』(ライフ→?)、『となりの席の同居人』(ライオリ)、胡桃ちの『旅するように暮らしたい』(ライフ→?)、『セトギワ花ヨメ』(ライオリ)はどうなるか。「ばつ×いち」(竹書房)の終わったおーはしるい『醍鹿館のシェアメイト』(ライフ→?)はすんなり移籍出来そうだが..終了(予定)の作品を除いたとしても2〜3作品はあぶれそうな状況。同社は一般誌を持っていないから尚更WEB漫画への移籍作は多くなるかも知れない。逆に「ライオリ」最新号ではWEB漫画からの出張ゲストが複数登場と、異ジャンル交流というより動線誘導?と疑心暗鬼。
いずれにせよ今のところは「単行本」という紙媒体にまとめられるので、WEB版の未読エピソードが追加されて寧ろお得かもと能天気に構えられるものの。ぶんか社のように電子コミックのみの販売に切り替わるかも知れず、此度の休刊は紙読みとして崖っぷちに立たされた感がある。ジャンルの衰退による縮小なのか、メディアの大転換期の端緒なのか、以後数年の竹書房の展開には注視していきたい。

-PICK UP-
道理で長編の完結が相次いでいたわけだ。
今年に入ってたかの宗美「有閑みわさん」(全17巻)、遠藤淑子「なごみクラブ」(ショート、全12巻)、前述のおーはしるい「ばつ×いち」(全11巻)に師走冬子『奥さまはアイドル・』(ライフ・既刊12巻)もおそらく休刊号で最終回となるような運び。他、紹介済みでは氷堂リョージ『高尾の天狗とミドリの平日』(ライフ・既刊3巻)などいずれも単行本にまとめられた作品が場合によっては休刊のあおりで完結となる。
そんな中、ひっそりと幕を閉じたよしもとあきこ「とーこん家族」(ライオリ、終了)は単行本1・2巻(同時刊行?絶版)が1990年初版、続刊が出されなかった超ロングラン作品。
90年と言えば不条理4コマ全盛の頃(吉田戦車、中川いさみ、榎本俊二etc...)で一般誌の盛り上がりを尻目に4コマ誌は数こそあれど「読み捨て文化」継続中の頃。「ライオリ」は創刊が88年なのでギリギリ昭和から始まって順調に単行本でまとめられ、当時の刊行状況から鑑みると爆発的な好評を得た作品だったはず。
90年代後半はオフィスものの隆盛で新人が台頭し、単行本化もそちらメインにシフトしていったから、いわゆる「通しで持ちたい(読みたい)」4コマが生まれ読み切り型は再び掲載誌で読まれてオシマイ、になっていった。ファミリーもので貧乏がネタの未刊行ギャグ4コマだからと言って昭和の遺産と括るなかれ。植田まさし「フリテンくん」(現『新フリテンくん』(ライフ→?))、いがらしみきお『ぼのぼの』と共に同社を30年以上支えてきた作品、漫画家である。あまり熱心な読者では無かったので詳しくは語れないが、とにもかくにもお疲れさまでした、と頭を下げたい。
おーはしるいは「ばつ×いちafter」(ライオリ、ゲスト)と題して脇役たちの後日談を3号連続8Pで掲載も単行本は11巻(完結)がすでに発売中と、未収録作となるのかな。今の時代に贅沢が過ぎる。この辺りが解消されるなら電子化転換もやむなしと思えそうだ。

-REVIEW-
よるどん『ウメボシオニギリ』(ホーム)
キャラはともかく主人公の犬がブサイクを売りにとくれば、動物子供にハズレ無しだから自然、ハードルは高くなる。立ち読みではスルー対象になってしまうが購読でパラ読みし出せば単なるヘタウマ路線と見えたのが表情が実に豊かで「んん?面白いじゃない!」。
飼い犬(オニギリ)がブサイク(ウメボシ)顔なのは常でなく、全てを丸くおさめる必殺技だった。というわけで主人公の周囲はヌクヌクとした平和な世界が広がっている。
どうやら作者は駆け出しのようで、今後各方面に活躍の場が広がっていくのだろうが、ほのぼのファミリー4コマの系譜に連なる本作は大事に育てて欲しい。


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