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昨年の話で恐縮です。そめい吉野「農学女子」(主任、終了)が大学生活4年間を12年掛けて描き切って大団円。描き切った?当初はサザエ時間(永遠の一年生)だったから結論に向かっての卒業であったが。分量が4冊目(=4巻)から完結分まで溜まっているのか微妙なのも気になるところ。というのもショート作含め今回相次いで終了した作品は単行本化されていても続巻が出ておらず、「完結巻発売」の告知も無し。電子版で後々完全版を出すつもりなのか、「主任がゆく!」誌(ぶんか社)自体は順調に月刊でナンバリングを重ねているものの、なかなか増刊扱いから抜け出さず、単行本も一部を除き尻すぼみで..読み返せない刊行事情が一向に変わらないのがもどかしい。
そんな中、海野倫「きっこと申します。」(主任、終了)は明らかな打ち切り。完全に話途中での「最終回」告知となった。トビラ絵に描かれた頭の無い女神は何を意味しているのか..。ファンタジーと一線を画す幻想4コマの嚆矢とも成り得た作品、大衆受けする内容でないのは分かっていたはずだから破綻であっても一応の結論は出させて欲しかった。とはいえ個人的には作者にも言いたいことが一つ。終わってからケチを付けるのは底意地が悪いと思いながら、次を見据えての餞とさせていただきたい。
クール教信者「おじょじょじょ」(竹書房)で呈した内容と同じである。
少々興を削がれてしまった展開となったので記しておきたい、主人公の過去が闇設定であるというのは作者の作品ではお馴染み(作者の各作品はリンクしている=同じ世界観)ながら、本作の主人公に限っては現実の、マイノリティの希望の星となって欲しかった。常人には受け入れ難い変人が高嶺の花と縁あって、結果何かを成し遂げる、あるいは何かをやらかす。ここに「一般人ではない」という設定は要らなかった。作者自身がそうだろうに..遠くに行っちゃったなあ..と、その後の話に身が入らぬ。(第56回より抜粋)
本作で言えば唐突に現れて以来ずっと不気味な存在であり続けた、病的に過保護な兄を「安倍晴明」としたこと。あまりの著名キャラ、強すぎる。狂的な趣が無くなってしまった。この設定(明かし)が必要だったか。貴種流離は物語の基本ながら、普通の人が陥る白日夢であって本作の魅力は損なわれない。人間代表としてのダメダメ主人公と人外の対比構造、兄が(常軌を逸脱していても)人間であっては成り立たなかったか。この辺り、テコ入れの考えが入っていたとすれば再考を促したい。
大衆受けし難い展開であっても評価される作品は数多あるし、「主任がゆく!」誌はそれらを載せる格好の媒体と思っている。今一歩、形として残していってもらいたい。
-PICK
UP-
昨年は時代ものを象徴するような御大が相次いで鬼籍に入られた。
「鬼平」中村吉右衛門とくればさいとう・たかを(あえてのNOTゴルゴ)。みなもと太郎、白土三平、年末には平田弘史..。
しかしながら先人が築き上げられたジャンルは4コマでも脈々と受け継がれている。
柳原満月「軍神ちゃんとよばないで」(タイム、終了)は最後まで見事に現代風に戦国の世を描いてみせた。感心した禅問答、ラップバトルに昇華させた攻城戦、そして伏線を回収した川中島の戦いで、まさか主人公自らにタイトルを叫ばせるとは..。さらにこれらを単行本(全9巻)にて一気読み出来る新たな喜び。
杜康潤『孔明のヨメ。』(ホーム)は赤壁まで来ちゃいましたよ。単行本も13巻〜、読み返さずとも今のうち買い進めておくべき。いつか来てしまう一気読みのために。
こちらはまさかの(失礼)真田寿庵『天下分け目の小早川くん』(ホーム)単行本化。関ヶ原での相関図を小学校のクラスに当てはめた学園コメディは、史実を追わず人物像に沿ったドタバタに終始しているお陰か前作(「転生したら蘭丸でした」)のような消化不良気味のオチにはならないはず。壮大な設定にして壮大な展開とはならず。天晴な切替。
まだ始まったばかりながら力量は折紙付きの重野なおき『雑兵めし物語』(ライオリ)、松阪『毒を喰らわば皿までも?』(ライフ)といずれも一気読みが楽しみなラインナップ。
..あれ?面子がだいぶ固まっているような..。柳原満月の新作も当然渇望するがフレッシュな作り手の登場も待たれるところ。
-REVIEW-
井上とさず『オレの愛で世界がヤバい』(ホーム)
学園ラブコメは途切れることなく、最初からカップリングも決まっていて、と4コマ王道は今も健在な中。買って読む度に関係性が変わっていて珍しいなと引っ掛かっている作品。この「買って読む」、567禍においてコンビニも書店もガッチリパッケージされ立ち読みが叶わなくなって日常化したがそのお陰で付いていくことが出来ている。
主人公は「惚れた相手が好きな人と結ばれる」、難儀な縁結びの能力を持つ。この力を巡って恋愛関係が複雑に変化していく。つまり利用しようと「惚れさせる」ために動いていると、主人公の人の好さ(自分の力を分かっているので、片思いを成就させようと積極的に「惚れよう」と付き合ってくれる)に魅かれていき..といった流れ。但し「主人公と実は両想いでした」となると恐ろしい事が起こるという縛りが付いて、単なる予定調和のハッピーエンドにはならない構想。さらに何か企んでいる親友の姉、最近では岡惚れしている同級生など現れて..毎号のように展開がひっくり返っていく。これはまさに「ストーリー4コマ」の定義にピッタリと当てはまっている!
作者は一般誌で活躍しストーリー漫画を手掛けているから本作でも間違いなく物語ろうとしている。短編で終ってしまうかも知れないが、このまま転がり続けてのラストを読んでみたい。
ゲスト登場からまだ1年経っていないが、すでに話数が明記されている。当然、単行本でじっくり読み返せるということでしょうな?