新・現在4コマ漫画レビュー 第82回

(初出:第286号 21.4.21)


-TOPIC-
ショート作品なので取り上げなかったが、小坂俊史「新婚よそじのメシ事情」(竹書房)は面白かった。独身生活をこじらせた中年夫(作者)が家庭料理に様々感じまくる本筋もさることながら、個人的には妻(王嶋環!)がお気に入りのバターを行きつけのスーパーで扱ってもらおうと画策する回がピカイチ。食レポだけでなく、買い物まで描いてくれるのは吉田戦車のエッセイ漫画同様に大好物である。
ただ連載は5年で先日終了(単行本も3巻まで)。半フィクションもので永遠に新婚も無いか、と諦めるしかなかったら翌号(今月売り)から「よそじとふたごのメシ事情」(ライオリ)がスタートしてガッツポーズ。立ち読みで予告をチェックしていなかったのが幸い?サプライズ成る。
4コマ作品も精力的に発表している中でエッセイ漫画も手掛けるというのはプラス要素でしかない。

この際なので「4コマ漫画誌」に載っているショート作品、いくつか挙げておく。
ドロ○ジョが敵役に胸キュンしまくるとなれば万人の性癖なのか、トキめかないわけがない。まどろみ太郎「おまわりさんと悪女ちゃん」(ライフ)は一気に連載→単行本化と駆け上がった話題作。見る者を魅了する圧倒的なボリューム感を誇る描写ながら過激化していかないところがネック?すぐに手放される方も多いようで..。ギリギリを攻めればブレイク間違いなしも、この思春期のようなもどかしさが良くて..仕掛けられるキャラも増えてきたのに毎号きちんとラブコメで留まっているのが悶々としてたまらない。
一方、同世代の「独身」女性の連綿と綴られるエッセイ、柘植文「中年女子画報」(ライオリ)は、ズバリ共感が読み続ける理由と思えばさにあらず。ポイントはちょっとだけ年上という事。従って掲載誌を読んでいる時点ではピンと来ない回も多い。ところが副題である「40代女子の中年入門」という言葉通り、だいぶ前に読んだ記憶のエピソードがふと思い出されることがある。お互い入門者として、彼女の辿っている道を追っている実感が確かに、湧く。また単行本の際はさらにその年(歳)の副題が付く。6月に新刊(第4弾)が出るようだが既刊最新は「中年女子画報〜46歳の解放〜」(竹書房)で2年1巻の刊行ペース。最初から読んでいきたいと目論んでいるのだがなかなか出て来ないつまりは良作。

-PICK UP-
流れでショート作品ながら。試験作での模索が続く中、えきあは食エロもの「食欲しか勝たん!」(タウン)で結果を得たようだ。インパクトの強いキャラを描ける力量はあるので、前作紹介にて提案したホラーものなど未開拓のジャンルに挑んでもらいたかったが。昨今は商業誌に未練なく個人営業に戻られる漫画家さんも多いので、4コマ界に留まってもらえるだけありがたい。
そして今年、4コマ界の顔だった作者が戻ってきた。一般誌でのヒット作を続けながら、新年号から始まったのは重野なおき『雑兵めし物語』(ライオリ)。もはや得手である歴史ものにして従来のコメディタッチは失わず、それでも時折史実のリアル感を出してくる。かつては雑学的に紛れ込ませていた蘊蓄を衒いなく押し出してくるようになったのは揺るぎない自信の現れであろう。掲載誌は「帰還」と煽っていたが、間違いなく「凱旋」と言っていい新連載である。元々旺盛な多作家なので4コマ誌復帰も既定路線だろうが、こちらのフィールドで新作が読めることに感謝したい。

-REVIEW-
ふじた渚佐『あさひ大家族』(タウン)
ロングセラーを続けるベテラン漫画家の作品では試験的に「サイレント回」というのをたまに目にする。いわゆる台詞抜きで進行するエピソードで、動きだけで内容を伝えようという話だがあくまで「やってみました」お試しであって変化球に過ぎない。作者はこれをすでに自在に操れる。といって描写に特化した内容ではなく、設定は寧ろ逆で大家族の大騒ぎの日々をネタにしている。熱血系と言えば一般誌ではお馴染みの作風で、作者も由緒正しく秋田書店で描いていたようだが、4コマ作品でお目に掛かれるとは。喧しい、だけでなく、繰り返すが「サイレント」でもドタバタが描けるので、変幻自在の魔球使いである。熱く盛り上がれるファミリーものとは、密避けのご時世嬉しい限り。


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