新・現在4コマ漫画レビュー 第81回

(初出:第283号 21.1.20)


-TOPIC-
気が付けば本棚が満杯で買ってきた本がどう組み直しても入りきらず..慌てて断捨離。もう馴れたもので何年も読まなければ読みたくなっても買い直したら良い、と完結作品からどんどん段ボールへ移す。奥にはもう20年も読んでいないストーリー漫画が幾つも残っているが、これらはタイトルを見ただけでワクワクが止まらない自分史である。もう一生分の作品は持っている。この先何かあった時、これらを読み返せばもう一度自分を取り戻せる。これがあるので例え愛読している作品でも、表層にある単行本は潔く手放せるようになった。(勿論4コマ作品にも殿堂入りあります)
さてそうして仕分けした後、残す作品を本棚に整理して戻していくと..だいぶ隙間が出来る。一方段ボールは1箱だけでは入りきらない量。という事で手放そうと思い切った作品の幾つかが戻ることに。基準はパッと読み返して、やっぱり面白いよなあと改めて気付けた作品。一例を挙げると辻灯子「よゆう酌々」(芳文社)、鈴城芹「くすりのマジョラム」(芳文社)。もう一度読み返す機会が得られたから、買い直しの手間が省けたわけで、本の整理はサヨナラだけでなく、再読の機会でもあるわけだ。

-PICK UP-
裏を取らずに書いてしまったら天罰テキメン。訂正文1行では収まらないので改めて取り上げさせて頂く。
前回紹介したせかねこ『ほむら先生はたぶんモテない』(KADOKAWA)の4巻が並んでいて思わず二度見、三度見してうろたえる。慌てて後書きをめくってみると..好評を受けて続編を出していました。1巻が一昨年春の初版、そこから2年経たず4冊出る..驚異的な刊行ペース。さておき。今年5巻で完結予定と。作者のつぶやきなり、ちゃんと確認しておけば気付いていたかもしれない初歩的な怠慢によるミス。一応後書きの言でいけば作者も1巻で一旦完結させたつもりのようだったので、記事の内容は全くの誤りでもなかったというのが救いですが..ウジャウジャ。
そしてこちらはいい意味で、指摘事項を見事にひっくり返される。『はかせの未来』(ライフ)1巻を購入。一般に描き下ろしは本編(掲載分)に対してのインターミッションということで、おまけ、遊び要素が強いのだが、本作では描き下ろしで誕生エピソードという1章を描き切ってきた。そこで、私がしたり顔で言い放った「そもそも機械が存在意義を問うてくるのか」、フィクションとして浅いとしたところがズバリ回答されていた。ちゃんと押さえてましたか、正直嬉しい勘違い。これを踏まえると現在掲載誌で語られているもう一つの誕生エピソードは主人公がさらに想いを乗っけているわけで重みを増す。ついでにこの描き下ろし部分というのはまさに単行本が初出であって、WEB上での発表分とは別個でした。何という多作!
好きになったらあれもこれもと漁りたい、いつになっても変わらないファン心理であって、昨今は極めてオープンに公開されているから探し甲斐がある。作者の旺盛な執筆欲が、権利を独占しようとするはずの出版社との従来の関係性をあっさり越えている。ネットで描かれているのは正攻法の番外編と言える日常ネタで、2巻ではこれがお楽しみ要素として収録されることに期待。活動の幅が広がる作者、付加価値が付いて単行本が売れる出版社、全てを読む機会が増える読者と、WinWinの新しい刊行スタイルが誕生した(してた?)。

-REVIEW-
さーもにずむ『吸血鬼くんと死体ちゃん』(ホーム)
奇跡的に要所の掲載誌が残っていたので、自信を持ってお伝え出来ます。ウェットで能天気な吸血鬼主人と、クールにあしらう死体メイドのタイトル通りゆる〜いワンシチュエーションコメディ。西洋の設定ながら主人公の終始下手に出る態度は日本水の妖怪木ぽくて懐かしく、ダジャレ好きというトホホな設定も取っつきやすさで大いにプラス要素。あ、そう言えば大沖「はるみねーしょん」(芳文社)を彷彿とさせる作風かも。ほぼ日常の会話劇ながら友情をこじらせて今の関係性になった悲しい過去があり、それを何とか元に戻したいという流れがあったり、登場人物が増えてきてだいぶ賑やかになってきた。
ただ、19年末に始まった本作は途中から連続掲載となっているものの未だ「ゲスト」扱い止まり。タイム各誌の巻末には同じような但し書きの付いた作品が「固定化」されて載っている。是非単行本で読み返したいので紹介しておく。
作者昨年末につぶやき始めたようで、フォロワーがまだ一桁..これは意外な青田買いになる!?


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