新・現在4コマ漫画レビュー 第74回

(初出:第268号 19.10.20)


-PICK UP-
時代の変わり目がはっきりとした一点でもって劇的に変貌を遂げることは稀であって。
気が付いたら新時代を迎えていて、それが後々歴史となっていく。「ストーリー4コマ」隆盛の到来を常々提言していたが、もういいだろう、「ストーリー4コマ」、すでに定着している。
何度も出して恐縮だが、自前の定義を上げておく。
従来の4コマ作品のように4コマ1ネタで短い完結を続けながら、物語自体も次々に進展を見せる形を言う。つまり「展開が劇的で、一連のストーリー性がある4コマ作品」である。
恋愛4コマが分かりやすく、交際以降も描かれた「上に」更なる愛憎劇が繰り広げられる展開となればストーリー4コマと言えるものとなる。このパターンからなる作品が、今普通に見受けられるようになった。
なので恋愛に限らなくともクライマックスでエンディングに向かわず、さらに二転三転..と転がるようなら間違い無くストーリー4コマの称号が与えられる。
創始は小池田マヤと判明していて、「...すぎなレボリューション」(講談社)が代表作となる。もう15年以上前の作品になるのか..未だ色あせていない。
だから個人的に、このレベルに匹敵する作品と出会った時が「ストーリー4コマ」という新ジャンルの幕開けと思っていた。

だから榊『異なる次元の管理人さん』(キャラット)が元の世界に戻るラストを迎えたかと思いきやまたも新章突入となり、思わず快哉を叫んだ(心の中で)。
突然異世界に迷い込んで、同じ境遇の異世界人や、その世界の世話人(管理人)との交流を通じて数々の謎を解き明かしていく。ゴリゴリのファンタジーにして主人公以外(ほぼ)女性というハーレム環境で、冴えないのにモテモテという万人受け設定の、まあ典型的なビジュアル系作品ではある。
なので..正直単行本で読み返すほどの内容では無い(失礼)と流し読んでいるだけの不埒な読者である。それでも毎号きちんと目を通しているのはつまり、面白いからに他ならない。
話柄結構説明台詞も多くて初見で受け入れるのが難しい作品なのに、ここまで続いているのは読者が付いてきている証拠。4コマでストーリーを読むことに違和感を覚えなくなった証左でもある。

同じく。
当初は突然「嫁」として転がり込んできた「キツネ」との共生コメディだったはずの海野倫『きっこと申します』(主任)は今や主人公の白日夢とでも言うべきカオスな展開で転がり続けている。
パワハラ上司を事故に遭わせ、出社拒否となり、溺愛する兄がいきなり登場して同居を始め、神が自愛を説く。書いていて訳が分からない内容だが本筋は引きこもりになりかけている主人公の煩悶である。どのように殻を破るのか、劇的な展開に間違いなく、本作もまた、読者が付いてきているというのが頼もしい限り。先月単行本が発刊を始めた。存分に筆を揮って鮮やかに完結を迎えて欲しいと、祈るような気持ちで翌月号を待てる作品である。
「主任がゆく!」誌(ぶんか社)で言えばすでにストーリー4コマのヒット作が生まれていた。
桜沢鈴「義母と娘のブルース」(ぶんか社)は何でノーマークの作品に白羽の矢が立った!?とドラマ化を不思議とみていたが、作品を読んでみればなる程納得。
やっぱり時代はすでに移っていた。ポストビジュアル系としてストーリー4コマは次の時代を象徴していくはずだ。


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