-TOPIC-
今月売りの号の話なので速報になるが、新作の初回だからネタバレにはなるまい。参った。
真田寿庵『転生したら蘭丸でした』(ホーム)は、森蘭丸が主人公という設定は前もって出されていたが、まさか中身が現代の中年営業マンというSFになるとは!早速管理職スキルをもって五月病の武士を立ち直らせたら、それが明智光秀という..!1回目からすでに「本能寺の変」をどう解釈してくれるのか、そこまで描き切るつもりなのか、クライマックスが待ち遠し過ぎる。歴史=ロマン、ストーリー4コマの亜流として歴史4コマは完全に花開いた感がある。
一方ショートストーリー4コマの旗手、えのきづは古巣「まんがくらぶ」誌(竹書房)にゲスト登場。『絆レベルMAXの双子が異世界に行ったらチートだった件』(くらぶ)は、女神に乞われてファンタジー世界へ飛んだら物凄い強さをすでに持っていて..と、近年のアニメヒット作を踏襲したような入口。オンラインゲーム全盛ならではの設定だが単なるコメディで終わるはずもなく、すでに諸々の説明は連載になったらと準備万端の様子。
歴史ギャグ、ゲーパロといった他ジャンルでは箸休め的な存在であった4コマがSF志向で世界観を広げだし、ストーリー4コマの高みには未だ到達していないものの、ビジュアル系ではこの手の作品が主流になりつつある。その流れが逆輸入で一般(4コマ)誌に戻ってきているようで、新人の月間賞作品など軒並み筋書きのある内容である。次の展開に集中し過ぎてキャラクターの立て方がおろそかだとヒットにはつながらないと思うが、続くようなら4コマの新たな一時代が見られることになる。
-PICK
UP-
作品の終了は新陳代謝と考えればよろしいのかも知れません。
コナリミサト待望の新作『ひとりで飲めるもん!』(タイオリ)もまた、前作終了の寂しさを凌駕する面白すぎる出来。周囲の羨望を一身に集める抜群のキャリアウーマンは、チェーン店でチョイ飲みを楽しむ密かな趣味を持っていた。そして大当たりのチョイスと分かれば頭身が縮み方言(北海道と名古屋のミックス)が飛び出す。この気持ち、分かる!
余談ながら。なんちゃって糖質制限で牛丼屋から遠ざかっていて、久しぶりに食べたらまさにこの心境だった。例えば海外出張なんかあったとして数カ月パン生活を余儀なくされ、ようやく帰国して最初に牛丼など食べた日には..美味過ぎて死ぬ。いや、泣くだろう。なんて思いながら「なまらうみゃー!」と叫びたい衝動に駆られるわけである。
今のところ様々なチョイ飲みパターンを紹介するような展開になっていて、どこまでレパートリーが持つのか未知数であるが、まずは単行本化されるまで続いてほしい。
同じくレシピ紹介の流れだった瀬戸口みづき『めんつゆひとり飯』(ライフ)は先日ついにめんつゆ縛りから外れて作者のセルフ突っ込みが入っていた。すでに指摘していた身からすれば思わずニンマリ、いやしかしそれで良い。この方向性を模索しつつの展開は4コマならではであるし、現在は人間関係の広がりの方が読みどころとなっている。縛りが解けて寧ろ安全圏に入ったと見てよい。
-REVIEW-
唐草ミチル『銀子の窓口』(ライオリ)
すでに単行本3巻が先日出て壁を易々と突破し、折に触れ各誌にゲスト登場と引っ張りだこの人気作だがスーパーウーマンのルポものは珍しくも無いので内容はさして興味を持てなかった。案の定特集号でじっくり読んだ結果、これは凄いと気付いた次第。
不精をこじらせてさっぱり過去原稿を再アップしていないので何だが、蒼樹うめを紹介した10数年前、4コマで全身を描くのにデフォルメを使ってバストアップばかりの構図から一工夫していることを指摘した。今やデジタル原稿だから?細密な線が使えるようになり、4コマのサイズでも違和感なく全身像が描けるように。となると作者の描く、はち切れんばかりのピチピチボディが至るコマで登場し、タイトルページに限らず大ゴマ、ぶち抜き当たり前。さらにはショート作品で存分にと、ビジュアルメインでどんどん描写の可能性を広げまくっている。こうなると失礼ながら王道をいく設定、主人公で大正解。あくまで4コマ作品と胸を張ってお勧め出来るわけである。
鳴海はこ『男女の魔法少女は成立しますか?』(ホーム)
別名義(しかくいはこ)ではBLものを描いているようだが、本作は着眼点が面白い駆け出しらしい破天荒な設定。つまり魔法少女に憧れて、為ろうとしている女子高生はまだ分かる。ところが全く同じ志望を持つ男子学生がクラスメイトという学園生活が面白くないわけがない。二人の確執、たまに協調、というのが毎回の見どころであり、ヒーローヒロインものに常の人情話もきちんと描かれている。今のところ順調に回を重ねているが。
欲を言えばもっと男子の珍妙さ、滑稽さを強調しても良いと思う。日常を描く中でどうも男性側は導師あるいは師匠の役回りになってきつつある。ギャグ..というより、未熟さ、青さを見せていって欲しい。ドングリの背比べ、どっちもどっち、でも何か、熱いものが伝わってくる、そんな展開でタイトルに掛かってくれば、昨今のオリジナルアニメ作品のようなスマッシュヒットとなるのではないか。このもどかしさは可能性が無いと感じられない。