新・現在4コマ漫画レビュー 第59回

(初出:第235号 17.1.21)


-PICK UP-
データの裏取りが出来ない状態なので、今回は今さら再評価しているお二方をピックアップするだけでご勘弁。
エピソード4コマ全盛の中で、登場人物が増えない、関係性が変化しない稀有なコメディ4コマが光輝く。単行本6巻目が先日出たsaxyun『ゆるめいつ』(くらぶ)は、初回が2005年なので10年以上のロングラン連載ながら良く見れば全く変わらないシチュエーション(浪人生の集うアパートの一室での日々)で回を重ねている。外に出ない、客が来訪しない永遠の浪人生活。テコ入れもネタ切れも無関係なクオリティ。作家性といいセンスといい、間違いなく本物であると言える、ということにようやく気が付いた。
さておき。切れ目なく新作が出て連載作多数の売れっ子となると、読者としては全部を追い切れるものではなく、自然気に入った設定や世界観の作品だけにえり好みしてしまうものである。
松田円は「さくら町サイズ」(芳文社刊)から読んでいる長い付き合いながら、ポロポロと読んでいない作品が結構ある。基本ファミリーものなどのスタンダードなジャンルが多いながらファンタジー要素の入った作品が間々見受けられ、単行本で読みたいものの買ってまで読みたいかと。「200年の夜と孤独〜おひとりさま吸血鬼〜」(芳文社刊)など吸血鬼なので日中動けないからコンビニの夜勤をしている主人公が良くて連載時欠かさず読んでいたけど終わってしまえば気が済んでしまったような。「ゆらゆら薬局プラリネ」(芳文社刊)も最初の方は単なるシスコンものと思って読んでいなかった(ら途中からラブロマンスが絡んで俄然面白くなり読み出した)から単行本で、と思いつつ..つつ。しかし方やおひとりさまが板に付き、方やダメンズ好きの三十路OLが主人公の単純なオフィスものとスルーしていた『りふじんなふたり』(ライオリ)も途中から女装が趣味の男性社員が絡み出してこちらでもタイトルに掛かっていることに気付いてから読み出して面白く、ちょっと欲が出てきている。絵が進化して、キャラクターの透明感が増したとはちょっと前から思っていた(ex.『スナックあけみでしかられて』(ホーム))が、先日ダメンズ好きの方が結婚相手としては違うと言い切った恋愛話に大人の切り口を垣間見て高評価。こういう含蓄あるエピソードが積み上がってくると、掲載誌で読むだけでは物足りなくなって保存する、再読する=単行本を集める一人になる。未読の作品も多いことから、現在目の色を変えて物色しているんだけど、こうなるとなかなか出てこないのもあるある話。


「過去原稿」ページへ戻る

第60回を読む