新・現在4コマ漫画レビュー 第56回

(初出:第228号 16.6.21)


-TOPIC-
冒頭は陳謝からさせて頂きたい。前回記事で市川和馬『鉄仮面のイブキさん』(芳文社刊)について完結分は単行本化されない模様としていたが、直後ゲスト登場した「まんがタイム」誌(芳文社)柱に「単行本3巻8月発売予定」となっており、事実と異なる内容を載せてしまっていた(HP公開版の当該箇所についてはすでに訂正済み)。
連載終了時に単行本告知を見た記憶が無く、裏取りで出版社のHPを確認したのだが、単行本の刊行予告は2月先まで..。また、このニュースは後日取り上げようと考えていた、「ビジュアル系が牽引してきた「保存する4コマ」のピークが過ぎたのではないか。完結分が単行本化されない」という話の好例として捉えてしまっていたので、何というか..先走りました。個人的な感想も絡めて大変失礼な内容でしたので申し訳ございませんと平謝り。終了後早速次作が載る辺り、作者の人気は決して留まっておりませぬ。
さて。
年イチペースで蔵書整理をしているのだが、ここ数年で新古書店の買い取りシステムがデータベース化されている。かつては単純に初版年月で値段を付け(−状態)ていたようだったのが、今ではバーコード読み取りで作品名が出るわ値段が全国一律だわ(−状態は変わらない模様)。で明細レシートにそれらが列挙されているので、読んだ作品の現在のランクが分かるから面白く眺める。これは単純に売れるかという基準だから、人気作でもダブついているようなら安いし意外と取っ掛かりになる1巻だけが高かったり。基本的には新しいもので、4コマだとコメディ作品が高価買取であるとまあ予想通りだが、作者によっては割合古い作品であってもそれなりの値が付いていて、ちょっと嬉しくなる。トレンドというだけでなく、実力も兼ね備えた漫画家の作品は読み続けたい、読み揃えたいという根強い需要があると、単なる売れ筋ランクながら読者の本音も見えてくる。
勿論最良は新刊で買って直接作者を支えることであるからここで提案。せっかく古本でもこのように単体単位(?)で把握できる状態になったのだから、1%でも印税に贈れないだろうか。4コマ誌を通読しているから新刊を都度買いする気になれず、まとめ買い、出会い買いを求めて古本屋に通う、我がまま読者の夢見る未来である。


-PICK UP-
「続きが読みたい!」と思わせる強烈なヒキを見せるのがストーリー4コマの特徴なのだが、エピソード積み上げ型の終章でも見受けられるので線引きが難しいところ。
現在はえのきづ『ナデシコ!』(ジャンボ)で主人公がお客さまサービスからアメリカ支社への異動を受け入れて新章突入か!?とドキドキしているのだが..。2年経とうというのに単行本が出ていないのも微妙なところ。別の作品『トラロッコ』(くらぶ)はボス的キャラの登場が最終回を受けてのものと判別出来ている(次号最終回告知あり)ので残念、ストーリー4コマにならず。こちらは既刊1巻..前回話した「3巻の壁」がまたも立ち塞がる。作者の作品は『漂流系女子高生』(タウン)も突然無人島での生活を強いられている女子高生3人というミステリー仕立てなのだが長く続く作りでは無さそうだし、ストーリー巧者であることは間違いないものの、純粋なストーリー4コマとはまだ言えず。「ナデシコ!」の今後が実に注目される。
小池定路『父とヒゲゴリラと私』(くらぶ)もいよいよ同僚との意識しまくりの状況が前進しそうでなかなかのヒキ。ここは弟の時と趣向を変えてこじらせまくって欲しいところ。自己完結に収まってしまうのではなく、しぶとくあきらめない姿勢をライバル共々見せるのがストーリー(恋愛)4コマの分かれ道。
ストーリー4コマの話は置いといて。少々興を削がれてしまった展開となったので記しておきたい、クール教信者『おじょじょじょ』(ライフ)。主人公の過去が闇設定であるというのは作者の作品ではお馴染み(作者の各作品はリンクしている=同じ世界観)ながら、本作の主人公に限っては現実の、マイノリティの希望の星となって欲しかった。常人には受け入れ難い変人が高嶺の花と縁あって、結果何かを成し遂げる、あるいは何かをやらかす。ここに「一般人ではない」という設定は要らなかった。作者自身がそうだろうに..遠くに行っちゃったなあ..と、その後の話に身が入らぬ。本作においてはサイドストーリーにも注文。脇役同士くっつくのは想定内ながら、あっさりとし過ぎ。ちゃんと彼氏は帝王学を学んだ身としているのだろうか。だとすれば、いずれも今後きちんと人物設定に基づいた波乱を巻き起こしてもらいたい。
無論、描ける人だから描いて欲しいという願望である。


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