新・現在4コマ漫画レビュー 第51回

(初出:第216号 15.6.20)


-PICK UP-
立ち読みだけでは幅が広がらない、ということで時間のある時は取り上げた手を一旦止め、そのままページをめくらずにレジへ持っていく。そんな流れでたまにはと買った「まんがタイムオリジナル」誌(芳文社)6月号で何が驚愕だったって、辻灯子『よゆう酌々』(タイオリ、終了)が最終回だったこと。6月号なので4月下旬売り、取り上げたのが前回で4月中旬だったから面白くなってきたと思っていたらクライマックスであったと。そして同じく取り上げていた山東ユカ『トリセツなカテキョ』(タイオリ、終了)も翌月号で最終回。こちらは流れ上終わりが近いことは見えていたものの、「よゆう〜」の方は相変わらずの灯子節というか、説明台詞がほとんど無いので唐突過ぎる印象。どうなって、まとまったのかは単行本で追うことにする(全4巻)。「トリセツ〜」は第1話に絡めたやり取りで大団円となったものの、前述した不満が解消されなかった。彼(彼女)でなければならない理由、をもっと描けなかったか。同じくやや消化不良なのは藤島じゅん『ピンポン・ブー』(スペシャル、終了)で、鮮やかなラストながら全編を通すと同じ展開(ネタ)が多すぎたか。エピソード積み上げ型が百花繚乱の状態では通り一遍描いてネタ切れとは言わないがもう一歩突っ込まずに無難にまとめでは記憶に刻まれない。佐野妙『うしろのカノジョ』(主任、終了)は結末に向かうまでの全ての選択肢をポジティブ側に持っていき、結果ほんの一歩進んだだけで今まで通りの生活に戻る終わり方だったがこの貫き方は作家性にもつながる良い進め方だと思う。何も突飛なことを仕掛けろというのではない、3年3巻のルーティンをこなせる漫画家は、そこを打破する余裕もあるはずという事だ。あさのゆきこ『初恋ヴィンテージ』(ホーム、終了)は若きワイナリーオーナーと雇われ人の馴れ初めを明かしていきながらワインの完成と共に完結。うまくまとまった感じだが単行本はおそらく..未刊になりそう。ハトポポコ『平成生まれ2』(キャラット、終了)こちらは三度の続編へ。悲喜こもごも。


-REVIEW-
真田寿庵『のちの真田幸村である』(ホーム)
歴史ものは気が付けば一大勢力を形成していて、特集で組めるほどなのだが惜しむらくはゲーパロの域を出ない設定が多い。ファンタジーに寄りすぎると史実の面白さが失われてしまう。そんな中、本作は各キャラクターの境遇を上手く伸ばして上田城内をコメディ環境に置くことに成功している。その上で、主人公の幼き幸村を「鹿になりたい」と願うおバカキャラに仕立て上げ、戦国乱世のつかの間の平和である幼少期を描ききっている。作者もまたゲーム好きが高じた歴史好きのようなのだが、独自の世界観を持っているとこのような奇想天外が見られるわけである。

高津ケイタ『おしかけツインテール』(ファミリー)
ヒット作が続出している疑似家族もの(初めて使ってみた)の一つ。「疑似家族もの」とは、ファミリー4コマの定義に変わる現在のファミリー4コマの本流。うーん、ファミリーもので通してもいいのか。ともかく他人同士(せいぜい遠縁の見知らぬ存在)が一つ屋根の下で家族のように暮らしている日常を描いているのが現在の4コマのほとんどなのだ。学園ものに近い形だし、他人であるから恋愛要素も含まれる。ただその中であえて疑似家族ものとファミリーものに括ったのはぎこちなくも本当の家族のような繋がりを形成していくことが主題になっている作品が増えて来たから。だからツンデレはあってもエロには向かわないというのも特徴。とはいえ本作のように年頃の子がオジさんに小言を言ったりお礼を言ったりするの、グッとくるものがあるよ。

長田佳奈『2KZ』(主任)
同じく疑似家族ものからこれも伝統のざしきわらしとの同居もの。本作のざしきわらしは経験豊富なお婆さんのような言動をする子供。そしてもはや純真無垢な子供にしか見えない存在という設定はすっ飛んでしまっている。普段はグータラしていてたしなめられる存在だが、要所要所で含蓄のある会話が出来る。まるでアンドロイド(ペッパー?)かペットのような、世話しているつもりで癒される存在が家に居るというのは理想的な設定なのだ。

藤丘ようこ『ミケさんは役に立たない!?』(ライフ)
疑似家族ものから派生版を一つ、疑似扶養ものというのも近年よく見られるようになった型。メイドさんを主役に据えることが多い。実際の家族における反抗期、思春期の醜い係争を、他人同士の距離感で拭い去っている。リアルから離れているが、理想的な関係を描き出す工夫の結果である。本作はしかし、そのメイドさんが完全にお世話される側。亡き母が良かれと思って天国から派遣した、猫から転生したメイドは、その本来の性格が残されて気まぐれ我がまま働かない..結果息子が養うような形に。この逆転パターンまでは考えられるとして、現在はさらにチェンジするつもりで再び寄越された、今度はハムスターの転生メイドが加わってしまい、負担がさらに増してしまうというパニック状態に陥っている。長期連載で新キャラ投入は定番だが、本作はまだ単行本未刊の駆け出し。この状況で回せるようなら、単なるテコ入れではなくコメディ巧者の評価が出来る。

tugeneko『まほろばきっさ』(MOMO)
まだ話数が一桁なのに単行本発売中、さらに秋葉原で展示会などと柱記事に「??」となっていたら、昨年休刊した「くらオリ」からの移籍作品でした。話数表記は読み捨て文化から脱却したという輝かしい証なのだが、4コマの場合ゲスト登場も頻繁だからちょっとややこしくもある。単に掲載順にナンバリングしていくと単行本収録時に話数が食い違ってきたり。ともあれ、その疑問から読み出した作品なので結果オーライ。喫茶店を舞台にしていながら従業員同士のやり取りがメインの、台詞で読ませるコメディ。会話のすれ違いと言ってやった感に満ちたボケに対するスルー気味の突っ込みが心地よい。上手いなあと思っていたら、小規模ながらイベントまで開かれているのも納得、すでに他作品でブレイク中の人気漫画家でした。非4コマ誌での作品は追いきれない..けど4コマ作品のようなので今後単行本で追いかけようと。

コナリミサト『宅飲み残念乙女ズ』(ファミリー)
少女趣味を引っ張ってきたかのような絵柄で何となく遠巻きにしていたのだが、そこは大好物の酒漫画。読み出すと止まらない。アラサー3人娘の家飲みを日常にした、タイトルそのまんまのやり取りは平凡ながら逆に絵柄で見せる。何とファッション誌でも描いているというその道のプロで、異ジャンルへの入門書として最適では。

迂闊『のみじょし』(くらぶ)
こちらも来月単行本発売予定の乗っている酒4コマ。前者とほぼ同じ設定ながら本作は近頃流行りの官能グルメ系で最初の一杯目を飲んだ後の表情が何とも艶めかしい。しかし話題は尿酸値がどうの肝機能がどうのと丸きりオヤジの会話。酒飲み4コマはこれでいい。今は亡き倉田ジュリの時代がやっと来たんだねえ。


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