新・現在4コマ漫画レビュー 第50回

(初出:第214号 15.4.20)


-PICK UP-
このところは恋愛4コマが面白い。ストーリー漫画の恋愛ものと違い、結論が見えていながら遅々として展開の進まないのが4コマの特徴で、かつてはもどかしさを感じることもあった。近年は多種のテーマを内包しつつの恋愛が核、という作品が多くなって普段のやり取りを楽しみつつ時折出てくるわずかな変化=伏線に気付きニヤリ、という美味しさを享受している。
この例ですぐに思い付くのが辻灯子『よゆう酌々』(タイオリ)。同居に周囲がザワつくのをお互い迷惑な話と超然としていた板前と女将の関係性が、いつの間にか相手の存在を意識する微妙な間柄に進展している。また小池定路『父とヒゲゴリラと私』(くらぶ)は、割合スタンダードな展開でしかもすでにくっついた弟、に対し、叶わぬ恋と諦観しているはずの兄への同僚の岡惚れに何だか動き出しそうなエピソードがチラチラ。松田円『ゆらゆら薬局プラリネ』(タイオリ)もシスコンで女性嫌いの難攻不落者に対する密かな想いの外堀が埋まってきた。安西理晃は環境が素直にさせてくれない忍ぶ恋路だった『幼なじみリレイション』(ライオリ)がこのところ単なるツンデレにトーンダウン。寧ろファミリー4コマである『お姉ちゃんが来た』(ライフ、MOMO)で時折見せる、でもいつかは、的なエピソードがこの例に合致する。
他方、恋愛を前面に据えている作品にあっては切り口に注目だ。神堂あらし『先生ロックオン!』(ライオリ)のベタ甘オンリーの内容はいっそ清々しい。後藤羽矢子『おさな妻の星』(主任)は押し掛け女房だった女の子がひたすら従順なだけでなく、イヤ、キモいなどの主張もさせる辺りが新鮮。クール教信者『おじょじょじょ』(ライフ)は周囲の冷徹な指摘に答える形で付き合い後も描かれ続けている。これは作者の一貫した姿勢で作家性と言える。あずま笙子『すずなの恋』(ライフ)は未だ男性恐怖症から抜け出せないでいる学園コメディながらタイトルに恋、と明記してあるからどうしても恋愛要素から目が離せない。実に慧眼。
一方、ストーリー4コマの候補として挙げられる大河作品には少々苦言も。宮原るり『恋愛ラボ』(スペシャル)はそれぞれのカップリングが定まってきたところでほぼ全員が一様にアクシデントを起こした展開がやや乱暴に映る。そのアイデア自体は評価するものの、中味が似通っていて解き方に興味が湧いてこない。そして文化祭が軸になっている辺り、イベントでくっつく即席カップルを連想してあまりよろしくない。まあまだここで納まるような作品ではないけれど。山東ユカ『トリセツなカテキョ』(タイオリ)も志望校に入ったのに安定のぼっち生活を送っているヒロインの一コマが蛇足に映った。切なさは分かるがここまでとなると単なる欠陥に見えてしまう。また高校時代のやり取りが全て無意味だったと言わざるを得ない。もっと別な孤独の描き方はある。一コマで、となると難しいところではあるが。こいずみまり『猫系彼女と草食男子』(くらぶ)は休刊移転の中断もあって主人公とヒロインの絡みが長い間無くなっているのが気になる。ヒロインの謎は絶妙に明かされていっているけれど、主人公が迫っていく描き方でないのでどんどん存在感が..。前作よりはるかにスケールアップした世界観の中で、癒し無しで疲れ切った主人公が立ち回れるのか少々心配。付き合い後も相変わらず予知夢に振り回されている王嶋環『夢からさめても』(タウン)が結局一番らしいストーリー4コマと言えるのかも知れない。
とまあ、思い付く辺りをざっと挙げてみたが、他にも数多恋愛4コマは連載中である。ほんの少しの動きがあっただけで、今回のような話が続々と挙げられる状況なのだ。



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