新・現在4コマ漫画レビュー 第49回

(初出:第212号 15.2.20)


-TOPIC-
近年のエピソード積み上げ型(notストーリー)4コマにあっては、ラストに向けた1章が設けられる。結論が見えてくるエピソードが始まると「終わるのか」という予兆が感じられるようになり、かつてのように唐突に「応援ありがとうございました」とブツ切れる最終回と違いこちらも受け入れ態勢を整えて迎えることが多くなった。
ところが多様なテーマ、設定で組まれる作品が多くなったせいか、それが新章に向かう前のクライマックスなのか読めないパターンも見られるようになっている。ストーリー4コマの誕生を期待する意識もあって、少々見誤りがちである。
前回、新章への期待を述べたばかりの安田まさえ『数学女子』(くらぶ)がまさかの最終回予告。産休中断もあり、進学と恋路の両面が語られたクライマックスが間延びして見えたのもあったが、考えてみれば再開から1年近く、どちらもまとまった時点で結論を迎えていたのだ。今後女子の数学者への道のりまで描かれると思っていたのだが..学園ものとして4人組が解散となれば終わるのは真っ当か。
同じく学園ものでは10年を越えるロングランとなった真田一輝『落花流水』(MAX)が卒業を迎える。主人公格のコンビは解消されることなくと言えど、卒業=完結は貫き難いところ。
掲載誌の表紙を飾り続け、打ち切りとは程遠い遠山えま『ぽちゃぽちゃ水泳部』(ファミリー、終了)も水泳部としての栄光は語られることなく、恋の行方が落ち着いたところで大団円。
沼江蛙『ゲキカラ文化交流』(スペシャル)ではほとんど触れられてこなかった恋路を一気に告白へと持って行って完結とするようで、これはかつての4コマのパターンだがコメディ作品では王道。いずれにせよコメディからは交際「後」まで描く流れには向かわなかった。
こいずみまり『黒い大家さん』(ホーム)はいわくありの猫を飼いだした頃から最終章に入っていたのだろうか、ぼやかしていた大家さんの謎が少しずつ描かれるようになっていて、何となく終了フラグが予見出来ていた。コメディー作品でもこのパターンが見られるようになった。
一度クライマックスを迎えて後新章に突入して驚かせてくれたうず『きぐるめくるみ!』(タウン)はその新章がクライマックスとなった。これはなかなか..時期的には考えられるけれど、予測しがたい展開だった。幼なじみとの関係性の修復だけでなく、部の活動が成り立つようになったところまで描いたというのは、進展しつつ尚も二転三転させてテーマに沿った結論を出す、ストーリー4コマであったと言える。
ちなみにショート作品ながら展開が面白く読んでいた犬上すくね『明日もコトコト』(ライオリ、終了)もラブストーリーとしてかなりの紆余曲折を絡めた上でのハッピーエンドで拍手を贈りたい。次作はぜひ、おまけ4コマの復活を。
毎度考え込まれた内容で、掲載誌では追いきれなかった分単行本で楽しませてもらう、鈴城芹『ホームメードヒーローズ』(MAX)はやや早めに感じるクライマックス。単純な図式にしなかった対決シーンでもっと遊んでもらいたかったが、マンネリにしたくも無かっただろうし..いずれ単行本にて。

-PICK UP-
職業そのものを題材に描く、いわゆるルポものは社会人を主人公にする作品の多い一般(4コマ)誌にあって王道のジャンルではあるのだが、専門性が高いので散見される程度の割合であった。しかしこれもまた多様化の近年、作者自身の前歴を生かし、とか好きが高じて語れるまでになったとかで多職種繚乱の状態である。
興味本位ながらついつい読み続けている作品も多い(ある意味失礼)。今回は今まで挙げていない作品をざっとご紹介。
かつてのバイト先で得た知識を生かしてという伝統的手法も残っている。風良まり『かでん屋さんの基礎知識』(オリジナル)は家電量販店の商法を披露しつつのキャラ押しコメディ。健在が嬉しい浦地コナツ『鉄工所のヒカリ』(くらぶ)は、前歴?はともかくとして町工場を舞台に人情ものも絡む。
好きが高じてと言えば代表格が鉄道もの。水井麻紀子『ひかり!出発進行』(ファミリー)はのんびりした田舎の駅が舞台でファミリーものの要素が濃く、職業的な描かれ方は薄いものの、鉄分はきちんと含まれている。ミュージアム系もあさみゆとり『みずいろミュージアム』(スペシャル)、大塚志郎『あくあわーく』(MOMO)と人気の水族館の舞台裏が押さえられてある。
専門職、のたまご達が描かれた専門学校も酒菜屋なかさ『かがやけ!工学女子』(オリジナル)、そめい吉野『農学女子』(主任)と何だか○トーークばりのラインナップ。体験を織り込んで描かれてあると思うものの、原作付きの中味がやはり濃い。消防士を描いた小夜鳴ウズ『火消しなでしこ』(原案/田中正露)(ファミリー)の訓練内容を通した成長譚には説得力がある。
プラスアルファの風味付けでも良いのだが、ルポものとして描き切れば必ず作風に反映されていくと思う。読む方も描く方も決して無駄にならないジャンルである。


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