-TOPIC-
年も押し詰まる中、秋の改編がほぼ終わり。1誌休刊(前回参照)が大波乱だった中、個々の作品として印象に残ったものと言えば橘紫夕「となりのなにげさん」(芳文社刊)の終了。単行本4巻を数えた学園コメディは主人公はサザエ時間なのに学生たちは着実に学年を重ねていき、最終回は作品内では2度目の卒業式を迎え完結。うーん、この光景は単行本1巻ですでに見たから違う切り口で行って欲しかったんだが。学園ものでこのオチは逃れられないものなのかな。別の意味で残念だったのはとく村長「メイちゃん大逆転!」(ジャンボ、終了)。前作から即新連載も半年持たずは1発屋の芽が見えてくるちょっと危険な兆候。吹っ切って早めに次へ切り替えてもらいたい。
期待の新連載はまだ突出したものが見えてこないので、安田まさえ『数学女子』(くらぶ)の再開を挙げておく。クライマックス直前で産休に入ってしまうという消化不良で、もう熱も冷めてしまっていたのだが、読みだせばやはり面白く。しかも完結せずこちらは卒業から次のステップへと公私とも続いていき、期待通りストーリー4コマの様相を呈してきた。新章ではさらに専門的な話が出てくるとして、今まで通りのコメディタッチが保たれるのか、作者の更なる進化が求められることになる。
他社誌間の動きも依然活発な状態。「まんがタウン」誌(双葉社)ではおりはらさちこ、沼江蛙が初登場。おりはらは同社でエッセイコミックを出している縁があるとはいえ、沼江を呼んできたのはなかなかの慧眼と見た。ただ、初見かぎりで言えば両作とも設定はよくあるパターンで伸びしろがあるとは..。「主任がゆく!」誌(ぶんか社)にはうずが初登場。4コマ誌を席巻する勢い。もはや間違いなく、次世代の代表格の一人である。
-REVIEW-
藤島じゅん
読み始めた作者を挙げていく現シリーズとは違い、初期の100人レビューでは一応100人を選んで挙げていた。つまり作者の場合はうっかり挙げ忘れていたのではなく、選に漏れた1人だった。開始当時に連載されていた4コマデビュー作「コンビニぶんぶん」(竹書房刊)はコンビニ店員だったこともあって多少同族嫌悪のきらいもあっただろう。その後「きらら」誌の黎明期を支えた「てんしの末裔」(芳文社刊)や「MOMO」誌創刊当初の「あぼばクリニック」(竹書房刊)も紹介の機会だったのだが、興味を持って手にした単行本「ぎゃんぶる太平記」(白泉社刊)がいけなかった。ギャンブルエッセイは御大・西原理恵子を越える作品が出てこず、4コマ界の快男児、重野なおきの嫁で夫婦揃っての4コマ漫画家という申し子であるにも関わらず、結果候補に挙げない作者の一人としてしまったのだ。
年を経て、ようやくドンハマりの作品が登場。『ピンポン・ブー』(スペシャル)は一般的な学園もの、部活ものながら「クイズ研究会」を舞台にしたのがまず目に付いた。そして単なる頭の良さ、知識の豊富さでは太刀打ちできないクイズのゲーム性、奥深さを示したエピソードを描いてくれたことに拍手喝采。あとはもう、ずっと連載を持ち続けている作者の力量に任せて問題ない。完成されたデフォルメ描写、キャラクター性、テンポの良い展開と、振り返って過去の作品を単行本で後追いしていこうかと思っている。
一つだけ、これにドラマ要素が加えられるようになれば大ヒットが産まれるんだが。
神堂あらし
「ぱれっと」誌創成期の「すもも・あんみつ」(一迅社刊)以来、各4コマ誌で目にしていたのだが、こちらもなかなか紹介の機会が無かった。失礼ながら似たような絵柄、取材の足りない設定では作者の特色であるお気楽コメディがお手軽に見えて物足りず。ここへきて、教師と元生徒の年の差カップルを描く『先生ロックオン!』(ライオリ)が普遍的なラブコメとして高評価。隣同士の3姉妹と3兄弟の恋模様『お隣さんゲーム』も同様、従来のファンタジー要素を取り除いた作品で実力が見えた。好きなジャンルではあるのだろうが、回りまわって地に足のついた設定にして大正解とみる。ベテランへの一歩を踏み出した。
桐原小鳥
前作「かみおとめ」(芳文社刊)が4コマデビューになるようだが、デフォルメキャラのバランスの危うさと神様との時間軸を同じにした交流具合が少々不満で候補に挙がらなかった。シリアスに走る必要は全くないのだが、もうちょっと練れたんではないかと。
ところがこの不安定なデフォルメがずばり少女を描くと絶妙なアンバランスさに。『ヒゲとセーラー』(ジャンボ)は叔父さんと中学生の奇妙な同居生活を舞台にした、言ってみればよく見られる設定のファミリーものになる。まだ若いのに親代わりの優しい叔父に徐々に心を開いて家族になっていく、まま繰り返すが一般的なファミリー4コマである。しかし安心して読み続けることが出来ている。まだフレッシャーだが奇を衒う必要は無いと思える。
まもウィリアムズ
ビジュアル系は正直書店での立ち読み頻度が落ちていることもあり、専ら単行本で追っている。たまに試し買いして新しい作者を漁っていく中で、作者の「みりたり!」(一迅社刊)は一応揃えるつもりで買い進めている。冴えないサラリーマンが海外赴任先で戦闘に巻き込まれ、気が付けばそこで英雄に、なんてストーリー漫画で読んだことのあるような設定が4コマではその息子が主人公に。敵国から襲撃されるかも知れないからこの日本の平凡な学生を守るべく幼女部隊が派遣される。随所にみられるギャグテイストも魅かれる要因だが、気に入っているのは柱の注釈。ミリタリーものには欠かせない注釈であるが本作の場合はまめちしき、とあえてひらがな表記にしたいくらいゆるい内容が記されていて楽しい。文才も併せ持つ4コマ漫画家は結構多い。
ちなみにまだ揃えない内に、連載はすでに終了し現在は続編?『みりたり!乙型』(ぱれっと)が始まっている模様と甚だあやふやながら紹介してしまったのは、年明けにTVアニメ化されるのを知ったから。青田買いはとっくに過ぎてもはや今さらなのだが、ひとまずアニメを見て読み出したわけではないということで滑り込ませた。