新・現在4コマ漫画レビュー 第47回

(初出:第209号 14.11.21)


-TOPIC-
急遽の決定だったのだろう。「まんがくらぶオリジナル」誌(竹書房)が15年半の歴史をもって休刊。ほぼ半数の連載が他誌へ移転となったが同月号で即掲載のものから2月号まで待たなくてはならない作品まで、秋の改編に間に合わないドタバタっぷりが透けて見える。さらに終了作品も突然の閉店に「俺たちの物語はこれから!」式の打ち切りパターンを余儀なくされていた。
元々人気作品は「まんがライフオリジナル」誌(竹書房)と2誌連載されていて、移転作品も大半が「ライオリ」行き。つまり姉妹誌が統合されたと言える。そして窺えるのが、竹書房の4コマ誌としては大本として「まんがくらぶ」誌(竹書房)だけを置き、「まんがライフ」系列にてはメディアミックスを図る戦略だ。近年のコンテンツはいずれも「まんがライフ」を冠に戴いている。
芳文社の「きらら」路線に寄せた感じだが、こちらは名目上全て「まんがタイム」表記からの誌名で統一されているし、どちらの枝葉も広がっている。寧ろ双葉社が4コマ誌を「まんがタウン」本誌一本に絞り、ビジュアル系をストーリー誌へ移した経緯と似ていてシェイプ化せざるを得なかった苦肉の策と感じてしまう。
2誌同作連載の形が無くなり、作者の負担軽減にはなるけれど単行本の刊行ペースは遅くなる、どちらも読んでいないと話の筋についていけない分かりづらさは解消されるけれど単行本で未読の回が読める楽しみが無くなる、一方で記念企画を進行し他方では通常回など伊藤黒介『ベルとふたりで』(ライオリ)で見られたパターンは単行本の掲載順には苦労しそうだけれど興味深い流れもこれで見られなくなる。
体制を整える体で実質白旗が挙がってしまったのではないかと、折角伸ばしていた包囲網を4コマから離れたところへ広げようとする今回の休刊を含めた動きは衰退期に向かう象徴的な現象ではないかと危惧を覚える。
4コマ誌の実質1誌減であるから少々いじわるな言い方をしておく。

-PICK UP-
「くらオリ」を休刊にして現実味を帯びてきたのは「まんがライフSTORIA」誌(竹書房)の独立創刊。その原動力となっているのが、隔月刊でまだ8号目にして早くも単行本化、しかも即重版もされた鳴見なる「ラーメン大好き小泉さん」(STORIA、ショート)だ。創刊号では同じくラーメンを題材にしながらも全く別の読み切り作品だった(本作は3号〜)から、6話でコミックス?と信じられないスピードだが、今年4コマ各誌にてゲスト登場していたから十分な話数が確保されています。ショート作品なので詳述は避けるが、タイトルでもピンとくるように色々なヒット要素が取り入れられている中で官能的食事描写というのが特筆すべき点。ラーメンをがっつく女子高生、の様が実に。
成年向けのいわゆるエロ4コマと違い、ビジュアル系は直截的なエロは描かないから家族的な親密さで表現したりと工夫がなされている中、人間の三大欲の一つ、食欲に絡めた先例が年明けアニメ化される川井マコト『幸腹グラフィティ』(ミラク)。絵柄の萌えっぷりに関わらずコンビニでも平気で立ち読み出来る作品が実は多いんだが、本作はなかなか..単なる食事シーンであるのにそこだけが相当に艶っぽい。内容はハートフルな学園コメディなんだけど。
古い話で恐縮だが、「少年マガジン」の一時代、寺沢大介「ミスター味っ子」(講談社刊)と遠山光「胸キュン刑事」(講談社刊)を合わせたような..このグルメ+微エロのスタイルは思春期のハートをわしづかみにしている(はず)。
新しいようで古い、漫画読みとしては騒ぐほどではないと思いつつ、新規読者層の獲得としては実に有効であると歓迎する。そんないい大人が反応したのは、「まんがタイム」誌9月号にゲスト登場した、もちごめゆう『ひだまり』。飼い猫を幼女に擬人化したペットものといえ、その無邪気さのみの描写に終始した内容が実に危うい。ふわふわした説明になりそうなので直感とだけにしておくけれど、作者の変態性が見える。振れようによっては間違いなく奇作になりうる。これが人気を博すようなら何かが起きる、起きてしまうのではないか、と期待不安半々でいたら、今月売りで早くも再びのゲスト登場。えらいところがウケてしまったな、と思ったら今回はその辺り修正が加えられていて、特に主人公(会社員男性)の真っ当な思考が描写されていたのでホッと一息。少々残念。ただすでに強烈な作家性を持っている新人を「タイム」で出してきたことには感動すらしている。
いずれもいずれも20代前半、新人賞を待たなくても次世代は間違いなく世に出てきている。
個人的には後藤羽矢子『となりのエロチカちゃん』(ライフ)くらい明け透けなベテランの艶笑ものの方が面白い年頃なんですけどね。



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