新・現在4コマ漫画レビュー 第46回

(初出:第208号 14.10.20)


-TOPIC-
1年ほど前にひらふみ『でり研』(芳文社刊)の最終回後の追加エピソードが単行本に収録されていない件について述べた。単行本のPR企画分でこの時はサイドストーリーのその後が描かれたので本編の完結には影響の無い話ながら勿体ないという話。
今回のとく村長『ラン様の放課後遊戯』(芳文社刊)の場合は切なかった最終回をハッピーエンドに変えてしまう重要な話になっているのでこれが単行本に収録されないなんて!と思っていたら今回はHPに公開されております。期間限定ではありましょうがこれでエンディングがゲームのようにマルチシナリオ形式で書き換えられます。連載のラストに納得いかず、個人誌で改めてラストを、なんて流れはストーリー漫画でありましたが、4コマでもこんな風にストーリーとして色々なパターンで完結させる動きになってきた。それがちゃんと掲載誌購読者以外にも届けられるコンテンツとなったことが嬉しいです。今ならファンは2度楽しめますよ。

-PICK UP-
異人さんが日本へという異文化交流ものは一般的なジャンルとしてすでに確立しているけれど、異「星」人さんが日本へという設定をよく見るようになって新しい定番になるのかなと。以下にざっと挙げてみます。
大沖『はるみねーしょん』(キャラット)
現在連載中の作品においては一番古いか(既刊4巻)。学園もの、主人公が空を飛ぶ、一般常識に誤解がある、と基本設定が揃っています。まあ異文化というより言葉遊びのオンパレードが本作の特徴ですが。
ユキヲの新作は『宇宙ファラオ・パトラちゃん』(ホーム)
自由研究に地球征服をしようとやってきた物騒な王女ですが幼女なので実害なし。和気藹々とした中に成長譚が混じっている辺り、前作と同じ永遠の学園ものにはしない模様。
サカザキ(原作)/はなこ(作画)『銀河系女子高生ありすちゃん』(スペシャル)
ルポもので指摘通りブレーンとしての原作者付きの作品が見られるようになってきた中、学園もので原作付き。何だか人を食ったような作者名ではありますが、正統派と言える異文化交流ものでしっかり読み込める内容になっているのは分作のおかげ?
碓井尻尾『星降り村事件ファイル』(ライオリ)
作者の特色であるヤンキー色が薄い作品にして、個人的には一番楽しめている。宇宙人のマヌケっぷりに輪を掛けるクラスメイトたちの言動はギャグに近く、ほのぼの学園ものながらしっかり非日常が描かれている。面子の張り合いよりこういう伸ばし方の方が良いね。
安堂友子『ぎんぶら〜銀河ぶらりと調査隊〜』(タイオリ)
人間が宇宙へ。この逆パターンにして唯一のギャグ作品は少なくとも2年以上、安定した笑いを提供しているというのに単行本化の話を一向に聞かない。過去に2回、単行本化された『天子さまが来る!』(タイム)もあっさり廃版でリストから消えちゃってるし..。ギャグ漫画家は限りある資源なんだからもっと大事にしてくれないと..。
とまあ、最後はちょっと話が逸れたが一連の作品を眺めていくと、人外海外との異文化交流ものと大差は無く、SF要素が入り込んできたというよりは学園もののスパイスとして取り入れられた設定なのだろう。非日常の住人をも取り込んで日常の気付きをネタにする、4コマの王道は実に幅が広くなった。


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