新・現在4コマ漫画レビュー 第43回

(初出:第203号 14.5.20)


-TOPIC-
今年はね、新人の話はしませんよ。
季節柄、各誌最終回が目白押し。今年の特徴としては連載5年くらいの長編が色々と終わっている。世代交代、というよりはネタ切れ設定チェンジの定期入れ替えといった感じで、おーはしるい『Welcome!つぼみ園』(タイム、終了)、ひらふみ『つくねちゃん+30』(くらオリ、終了)など、従来通り最終回に一気に大団円へという呆気ない幕引きで少々物足りなさも残る。クライマックスに時間を掛けたてっけんとう『うちのざしきわらしが』(きらら、終了)、とく村長『ラン様の放課後遊戯』(ジャンボ、終了)は最終回にエピローグとしての余韻があった。エピソード積み上げ型は一応ストーリー要素も含まれているので、今後はオチに向けての一章を設けた方が良いように思う。単行本の売れ行きが違ってくるハズ。胡桃ちの『S・Aで会いましょう』(くらオリ、終了)は最終回自体は従来通りだったものの、連載初期の設定にはないSF要素を絡めて作者得手であるファンタジックな完結に。さすが、先を読んでらっしゃる。

-PICK UP-
その、クライマックスに向かう展開で最終回間近と見せかけて、更にその先を描くとなれば、つまり再三申し上げているストーリー4コマの定義に当てはまるわけで。現在もの凄く期待しているのがえのきづ『桜乃さん迷走中!』(ジャンボ)。
単行本を読み返すたびに思っていたのは、本作は最初の2話が実に秀逸だったなと。戻れる場所があってのビンボー生活、しかしそれは、転落人生の第一歩。あれ?おかしいな、こんなはずじゃ..まあ、いいか、何とかなるさ。本当に大丈夫なのかな?このスリリングな展開は相当見応えがあった。で、運良くいい人に巡り会えて、その後はのんびりフリーター生活を送るコメディに終始していて、勿論面白いのだが、うーん、こんなもんかな..とやや物足りてなかった。今月売りの「ジャンボ」誌(芳文社)を読んで久々にシビれる。第一話で縋ったぬいぐるみが、その後確かに主人公の趣味(ホビー)として度々登場していたけれども、まさかこんな活路になるとは!!そうして単行本を読み返してみると、実に主人公はコメディの笑いに紛れつつ、毎回のように啓発されて成長していたんですね。そんな歩みが結実しそうな展開にジーン!ときたと同時に、これ終了フラグ?とも思ってしまうわけです。そう簡単に上手く行かないで欲しい、もう二転も三転もさせて我々の想像を越えて欲しい。ついついハードルを上げてしまっています。
サイドストーリーが盛り上がってきているのが佐藤両々『わさんぼん』(タイム)。主人公の矢印も徐々に報われつつあるようだけれども、こちらは一旦整理が付いているので、正直どうなっても特に感慨は無い(今のところ)。それより東の都で現在繰り広げられている、明確に連れ去ろうという男と、好きなんだけれど婿にも入れないし..と煮え切らない男が、全く気付いていない相手と短期間同居という展開が面白すぎる。この娘の里帰り譚も良かったしねえ。ヒロインより肩入れしてしまうキャラクターです。『崖っぷち天使マジカルハンナちゃん』(MOMO)はもう1年近くドタバタな状況が一向に好転しない長い1章が続いているし、『あつあつふーふー』(タウン)ではカープ好調をいち早くエピソードに組み入れているし、ストーリー巧者の評価も固まってきました。
同じくサイドストーリーの方に肩入れしてしまうのは小池定路『父とヒゲゴリラと私』(くらぶ)。ん?サイドストーリーは弟の方なのかな。そうすると本筋が面白いという、普通の話になるんだけれど。さておき。同僚の恋路をサポートしている内に、自分も惹かれていって..思い出として残しておくだけ、とけじめを付けるまではいい話。そこから先が今後見られるわけなので、大河ロマンの様相を呈してきました。「ラブ」ストーリーだけがストーリー4コマではない、『ゴーゴーダイナマイツ』(MOMO)はチアリーディングの活動を一から丁寧に描いた本格的な部活もので、スポーツ4コマからのストーリー4コマ初登場となる可能性は十二分にある。
いずれもいずれも、単行本で読み返せるからじっくり堪能出来る「読み捨てではない」4コマです。
どこから読んでも面白い、全く関係性の進展しない辻灯子『よゆう酌々』(タイオリ)が今最も気に入っている単行本なんですけどね。


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