新・現在4コマ漫画レビュー 第42回

(初出:第200号 14.2.20)


-TOPIC-
結局時代に追い付いていないんだろう。年明けから始まった荒井チェリー『未確認で進行形』(ぱれっと)のアニメは3話目以降録っておくこともなく。百合4コマのタチ『桜Trick』(ミラク)と同様観なくてもいいやの列に。ひたすら萌え要素押しに思える原作の捉え方の違いに始まって、別な4コマ作品のアニメと何ら変わらない作画の制作社カラーの強さ、そして想像と違っていた声。4コマ作品に動きが加わって、新しい魅力が生まれていればこそ観続けるものの、原作ファンとしては話の筋は分かっているからここまでケチが付いては観る気にならず。
とはいえ、時代遅れの酸っぱいブドウ発言と流して頂きたい。ネットで観る安西理晃『お姉ちゃんが来た』(ライフ、MOMO)は、しまじろうがいるだけで声は及第点。何のことはない、想像する声がもはやベテランどころしか浮かんでいないのだ。実際本編とは別物の、一迅社のCMでのキャラクターの掛け合いは面白いと感じられたし。新規で観て違和感のある作品ではないだろう。
但しエピソード積み上げ型の4コマ作品に関しては、竹書房の固執する5分アニメの作り方に軍配が上がる感じだ。原作の1話分はアニメの5分相当が適当と言えるようだ。従って30分では数話分をつなげて膨らましたり削ったりするわけで、そこに解釈の相違が生まれてくる。またクライマックスの無い、あるいは原作でもまだそこまでの展開になっていない状態のものを13話(1クール)にまとめ上げるとなると、後半に向けての盛り上がりみたいな全体の流れは作りづらい。5分ものなら原作のテンションを保ったまま唐突に「またねバイバイ」で終われる。しかし高評価を得てもあくまですき間産業の域を出ない5分もので続編が続出しても時代の寵児とはなれぬ。また最終話に向けてキッチリとストーリー、エピソード作りが出来ているオリジナルものの昨今の隆盛は、4コマ作品のアニメ化の次のメガヒットが生まれていない課題を浮かび上がらせている。
原作には一見関係の無い話ではあるが、メディアミックスを見越した作品作りが進められている中、だから本格的なストーリー4コマのヒット作が必要になってきている、と言うことが出来そうだ。

-PICK UP-
新年度を前に連載陣の入れ替わりが始まってきている。「ホーム」誌(芳文社)を例に挙げると、ユキヲ『まりかちゃん乙』が次号で最終回。珍しく初期設定のキャラクターから増えることなく単行本3巻を数える長期連載を果たしていた学園ものだったが、さすがに潮時か。主人公のアクが強い、いい作品でした。また紹介しようか試し読み中にあさのゆきこ『オトナのいろは』が終わってしまった。数年ぶりの個展開催に踏み切る、ヒロインの成長譚は見ごたえあったが、肝心の書道に出会って人生が変わった主人公とのロマンスは今一つ盛り上がりに欠けた感がある。言ってしまえば同業者同士の結婚、みたいな。ありきたりな流れで大河浪漫とはなれなかった。そしてすでに期待の新連載が始まっている。小石川ふに『まんがの装丁屋さん』は作者本人の職業でもある装丁屋を舞台に、今度は男目線から女の子の魅力をこれでもかとてんこ盛り。オッサンなのでニタニタ、しながら読んでしまっています。
他誌では枕辺しょーま『テイクアウト!』(ジャンボ)が最終回に新キャラを登場させるも枠外に無情の連載終了告知。悪くなかったんだが..単行本化は難しいか。また紹介を前に、にたこ『ぱふぃん〜中国的刺客美少女〜』(スペシャル)が終了。カンフーものでずっと注目していたものの、ツンデレではなくつっけんどんな主人公にはあまりハマれなかった。同じく紹介前の速水螺旋人『スパイの歩き方』(ファミリー)が次号で最終回。かなり奇天烈なSFものだったので、後半は話の筋に付いていけてなかった。出来れば単行本でじっくり読み返してみたい。
「くらぶ」誌(竹書房)ではリベンジなる。『ご近所アドベンチャー』でゲスト止まりだったえのきづが『トラロッコ』ですんなり連載に昇格。時代遅れのゲーム機が最新の?人型になって部屋に転がり込んできて、というコメディながら必死感が妙にそそられる、ちょっとだけ淫靡な匂いのする感じが受けたんですか、ね。
そして双葉社はというと、今度はヒット作『レーカン!』(ジャンボ)の瀬田ヒナコを引っ張ってきました。『ままごと少女と人造人間』(タウン)は超人見知りの女の子と心優しいのに外見がメチャクチャにイカつい人造人間がアパートを切り盛りすることになって..という、うーん、よく見るような設定だけど新連載ですって。新人賞はどうなったんでしょう。

-REVIEW-
カワハラ恋
キャラクターの名前が全て都内の駅の名前、という学園もの『東京!』(芳文社刊)に登場していた、女装教師の高校時代を描くスピンオフ作品、というわけでは無さそうだが、名前とキャラクターはそのまま引き継いでいる感じ。『新宿さんと周りの人々』(ホーム)は女性を目指す美男子の主人公と、彼に恋しながら同性として友達付き合いをしてしまう後輩との和気藹々とした学園もの。過去を描きながら時代は現在、という矛盾はよくあることとて問題無しとして、恋愛要素も絡んでいるのだがそこに執着せず、友人としてお互い励ましあったり、女性を磨いていったりという関係性が何となくイマ時に感じて読むようになった。作者は別名義では少女漫画を描いている、なるほど恋愛感が従来の4コマっぽくないわけだ。前作も飛び飛びながら読んでいたので、改めて単行本を見つけたい作品の一つ。

とく村長
掲載誌では滅多にやらないので、どこで読んだのか、作者だったのかすらかなりあやふやなのだが、企画もの(あ、思い出したかも。宮原るり『恋愛ラボ』(タイム、スペシャル)の応援特集だ)に度々登場していてなかなかの毒舌キャラだったので興味が湧いて作品を読むように。『ラン様の放課後遊戯』(ジャンボ)は学籍を持たないけど家がないから住み着いているのは部室、右手に秘められた力を封印している、バナナ好き、という数多くの謎を持った主人公とのドタバタ放課後生活を描く学園もの。まったく冴えないのに幼馴染や後輩から好意を抱かれているご都合主義の塊みたいな男性キャラには失笑だが、そこを軸にようやくヒロインの存在の謎が見えてきつつある。全体的にラノベチックな設定や展開で、個人的なトレンドにヒット。実は最初の方を全く読んでいないので、単行本(既刊1巻)をチェックしてから紹介したかったのだが、なかなか出てこないのでしびれを切らして挙げてしまった。

沼江蛙
同じく企画もので作者のクセのありそうな人となりを見て、丁度単行本1巻が出るとのことでキャンペーンにも目が行き読みはじめることに。『ゲキカラ文化交流』(スペシャル)は単行本(既刊1巻)も手に入れたので復習ばっちりです。カレー好き過ぎる主人公、インド人のカレー屋店主、イギリス人の常連客という同い年トリオを軸にした学園ものなのか異文化交流なのか..ともかく登場人物が全て変人なのでギャグ作品の括り。日々カレーを啓蒙する主人公に対しツッコミが入るのだが、全てがうどんに結び付く友人を相手にはツッコミ役に回るなど、ボケとツッコミが相方によって切り替わる賑やかな展開。作者としては「萌え4コマ」なんだそうで、フリとは思いつつも確かにギャグ漫画としては可愛らしい絵柄でとっつき易いのでは。

渡辺伊織
ラノベの、こちらは作家たちの日々を描くルポもの『ゆとりノベライズ』(タイム)を後学のために読んでいるのだが、個人的な好みは『ナノレンジャー』(ライフ)。名前はキラキラなのに武闘派と、厳つい名前なのに中性キャラの「名乗れん」名前負けコンビが現状打破を目指して四苦八苦する学園コメディ。輪郭の濃いやや古めの絵柄なので単純な設定(失礼)でも読み込ませる底力がある。深イイエピソードが丁寧に描ければストーリー4コマもいけると思うので「ゆとりノベライズ」にも注目している。

イセダイチケン
今は亡き倉田ジュリ以来、「ジャンボ」誌に酒マンガが帰ってきた。『びあ充!』(ジャンボ)はバイトすることになった酒屋の幼児体型店長が無類のビール党で、知らずビール三昧の日々を送ることに..という見事な酒漬けの内容。独特の作風であっても奇策で受けは狙える好例かと。ポストグルメ漫画として注目の酒漫画、4コマでも大成するか。


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