新・現在4コマ漫画レビュー 第40回

(初出:第197号 13.10.20)


-TOPIC-
毎年のように新人賞を酷評しているけれど、主に批判しているのは大賞を出さないなどの結果であって、新人さんの活躍は願ってやまないわけです。ふと気が付けば、数年前の入賞者が連載を抱えている状況が見えてきました。「まんがタイム」誌(芳文社)が特に顕著で、誌面の後半には過去の入賞者がズラリ。ただ後半、何ですよね。人気順の法則でいくとまだまだフレッシャーズの域を出ていない。冠であった植田まさしを看板にするタイム本誌という羊水に浸かっている感がなくも無い。それでも数多登場してくる新手の中にあって、作家性の見える作品が多いと思っています。読み飛ばしてしまうことがやっぱり多いところ、引っ掛かってくる作品となっている。
竹書房の新しい新人賞は、毎月の月間賞云々よりそこに載せられる現役4コマ漫画家(先輩)からのアドバイスコーナーがなかなか含蓄あり、優秀な企画ページとなっています。コマサイズの制限された4コマならではの、読み易くするための一工夫や描写テクニックは4コマの特性を示してくれているし、心構えを説いているものは漫画家の日常を垣間見せるエッセイでもある。読者にとっても大変有用。で何となく共通しているのは、売れる為の努力というのはプロとして当然ながら、右に倣えやトレンド追求が必ずしも正解ではないということ。独自のスタイルを作り上げつつ、受け入れられるように改善していくことが実績を生んでいき、やがては次代の4コマの旗頭となっていくわけです。
思えばこのコーナーを立ち上げた十数年前も、マンネリ化した読み捨てのスタイルを逸脱した若手が数多く出てきました。そして今やベテランとして数本の連載を抱えたり、アニメ化やロングラン作品で4コマ界を牽引しているのです。デビュー作がいきなりの大反響というのは才能というよりたまたまトレンドと合致した幸運といっていい。人気の出てこない習作を経て当たりを掴むというのが極普通の歩みである。そう考えると、今はまだ俎上に載せるまではいかないけれど、その内遅ればせながらで紹介する4コマ漫画家が次々見つかる現状は安泰と言っていい気がします。下層がグッと濃度を増して持ち上がってきているような、このところの新人さんの連載はそんな感じがするので大歓迎です。

-REVIEW-
ハトポポコ
積極的に動いていかない4コマ読者が新しい出会いを迎えるのは、出版社側の訴求にプラスアルファが無いといけないという好例。
漫才の掛け合いのような女子学生の日常を、シンプルな筆致で描いている『けんもほろろ』(ライオリ)は前から認識していたものの、特に読み込むでもなく。それが「まんがライフSTORIA」誌(竹書房)にショートバージョンが載って、馴染みのある作品が半分くらいの掲載率なのでクローズアップ。ゆるさ加減がなかなか良いなと思っていたら、たまたまほぼ毎日のように通い出したコンビニで唯一置いてある「きらら」シリーズ、「まんがタイムきららキャラット」誌(芳文社)で今夏『平成生まれ』(全2巻)の続編『平成生まれ2』(キャラット)が連載スタートの告知。前作を全く読んでいなかったのでここでようやく試し買いしてみたら大ハマリという、PRに偶然が重なってもたらされた新たな出会い。
作者の成長か、グループ内でのやり取りと枠が広がった「けんもほろろ」に比べ、「平成生まれ」では2人1組での掛け合いがメインで3組登場し、相関図は正直見たことのある..関係性に留まっているのだが、バカ×バカのカップリングがかなり秀逸だ。とんでもない発言にさらに輪を掛ける。4コマでは滅多にお目に掛かれない、カトゥーンの雰囲気を味わえる。1巻の後半から登場したこのキャラクター、2巻ではさらにパワーアップしていて、続編でもこの2人の活躍を期待して読んでいる。


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