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今年もまた新人賞発表の季節となった。芳文社はついに白旗。今回もまた大賞(植田まさし賞)は該当無しに終わり、途中形を変えながら7年続けた合同新人賞を廃止することに。今後は各誌での投稿募集→実力次第で即デビューも、と新人賞のフィルターを通さず排出していくという。結局は無関係の姿勢でいた「きらら」系列のやり方に切り替えた感じ。そうなると将来性よりトレンドにマッチした作品が今後優先されていくことになりそうで、行き詰まり感が出てくる危険も..。しかし編集長曰く「今回の選考結果は新たな決意表明であります」、準大賞のかより『パパと遊ぼう!』は仕事に追われ娘と接点の無かった父親がようやく向き合う羽目になったドタバタを描いたファミリー4コマ。また奨励賞3作も設定や絵は類似作が浮かんでくる感じながらつまりは「話が面白かった、面白くなりそう」というのが選考理由で、絵柄が今風でなければならない、独創的なアイデアでなければならないなどの固ハ定ー観ド念ルを確かに取っ払った選考に見える。ビジュアル系に主導権を持っていかれている現状とはいえ、今後も「タイム」系列は王道を貫いていきますよ、そんな決意表明に取れた。この決意は大歓迎な話で、全ての編集部員が共通認識として持っていて欲しい。新人については売らんがなの指導ではなく、持っている力をベタで良いから素直に伸ばしていく方に導いてもらいたい。新人賞という査定が無くなったことで、トレンド追従ばかりを求めないことを望む。
一方の竹書房。こちらはまだ頑なに新人「大賞」というものにこだわり続けている。冠だけ替えて中途半端に高いままのハードルを残した結果、「何で毎月の大賞は決められて、年間の大賞は「該当無し」となるのか。←この段はおそらく来年の今ごろも使うことになるだろう。」という昨年の予言が的中してしまった(何と準グランプリも該当無し!)。ここまでくると逆に、新人は何をやっているのだろうかという方向に矛先を変えてみる。
芳文社にしても年間(昨年)448名の応募があって7年掛けて、現在連載を持っているのは2〜3名ほどである(さすがにもっといるか?しかし金山ぶぅ改めきんのりふみ『もいんの高校野球日誌』(タイム)くらいしかパッと浮かばない)。竹書房にしてもおそらく同程度の人数が応募し、各月間賞12名から最終選考に残った5名(作)がいずれも「学園もの」であった。「学園もの」といえばビジュアル系はその縛りがあるというくらいド主流で激戦区である。そこに食い込む気概よりそれくらいしか浮かばない底の浅さが透けてみえる。従ってとりあえず「話が面白かった、面白くなりそう」という選考で佳作止まり、は頷けてしまうのである。大賞を出さない新人賞の存在に対する疑問不満は置いておいて。
これはさらに広く見ると、ここ10年来の4コマ界がまさに黄金期であったことを示している。思春期に、初めて読んだ、4コマに、何の不満も感じず、好きになった4コマを自分も描こうとなれば創造の破壊者となるわけがない。特徴的なカラーを持たない竹書房の4コマ各誌が新人に望むのはやっぱりほぼ共通していて、作者本人の「好き」を追求してくれという作家性、独創性。しかしそれ自体が現状の4コマに満足している上なら、模倣に過ぎなくなるのは当然である。敢えて壊そう、ひねろうという工夫が付け焼刃になるのは極々自然なのである。新人不作と言えるここ数年来の状況は、現状の4コマ界の成熟度と比例している。読者としては「まあいいか」と言えなくも無い。また、なるほど実際に金を払う読者と相対して活動している同人界から即戦力は生まれてくるわけだ。
そんな身勝手な4コマの一読者に語れる資格は無いのだが、新人さんに一言すると、もっとどっぷり4コマにハマって頂いて、好きを通り越して飽きてもらいたい。そうすれば、こうするともっと面白いのにという不満が生じてくるはずだ。そこが目を引く突破口となり得る。あるいは4コマ特に興味なしという方、チャンスである。そのまっさらな視点で描き上げた作品は少なくとも新鮮に映る。いずれにせよ何らかのジャンルについて一家言持てるくらいの専門性が必要になってくるのだが、それは新人(ヤング層)が簡単に持てるものではない。そこを求めているような、大賞を出さない竹書房の4コマ新人杯にはどうも欲張り過ぎな不快感を持ってしまうのだ..あ、出版社批判に戻ってしまった。
ちなみに双葉社も新人賞を創設。ストーリー、ショート4コマ問わず「カミカゼ賞」と題して秋まで募集、年末発表の流れに。伝統の神風をついに募集という形で待つことになった。今月創刊の「月刊アクション」誌、予告ラインナップには「他社」で活躍中の4コマ漫画家がズラリ並んでいる。形はどうであれ、新人を育成する土壌は残しておかないとジリ貧になっていくのは明らかであります。