新・現在4コマ漫画レビュー 第36回

(初出:第191号 13.4.20)


-TOPIC-
月末売りの「まんがライフMOMO」誌(竹書房)を読んでいて、ももせたまみ『せんせいのお時間』がいよいよ来月号で最終回かあ..など思っていたら、「まんがライフSTORIA(ストーリア)」誕生!という告知に驚く。4コマ誌の冠でストーリー誌、と言えばすでに芳文社「まんがタイムきららフォワード」誌がある。ただこちらは4コマ誌の、というよりビジュアル系の括りでのストーリー誌。竹書房のは4コマ漫画家が?4コマ作品の?、ショートバージョンを描く?、と。よく分からないまま即出ていた創刊号を購入。
一読してまず思ったのは「これ、続けられるの?」という不安。表紙を飾った神仙寺瑛『動物のおしゃべり』は初期の名編を思い出させる人情話、続く大井昌和『ちぃちゃんのおしながき』は(何故かショートバージョンである「ちぃちゃんのおしながき繁盛記」(くらオリ)のタイトルを付けず)、ラストに回してもおかしくない主人公20歳になったらのエピソードetc...創刊号だから張り切っているわけだがこのスペシャル感は果たして継続出来るのだろうか。またやっぱり感じてしまったのは「情報量の物足りなさ」。ショート作品がひたすら並ぶとあっさりし過ぎて拍子抜け。サクサク読めるのは間違いないのだが、ストーリー経験の浅さからくるものか、コマ割りが単調なせいもあってウリになるような特長が見出せなかった。その代わりストーリー巧者の作品は光る。いがらしみきお「トゥルキィトゥヴァレット」は発想の素晴らしさで、柘植文「中年女子画報」はエッセイならではの情報量の多さが逆に有難い。また宮成楽『晴れのちシンデレラ』は本編でも時折出している幼少時代のエピソードで、これはショート作でのスピンオフを充分狙えそう。
そもそも4コマ誌はショート作品やエッセイ作品を常に抱えていて、4コマ漫画家がそれを手掛けることも多いので、それだけを集めた4コマ(系列)誌という考え方は間違っていない。課題は、人気作をショート作品でも読ませますというスペシャル感から早く抜け出して、ショート作品の巧者、名作を生み出していくことになると思う。そういう選択が行われなければ、現状の季刊発行、増刊扱いのままで立ち消えになりそうな脆弱さを孕んでいる。
大半は4コマ作品のショートバージョンということで一応追いかけてみるつもりでいるが、単なる特別号で終わらないことを望む。

-PICK UP-
ストーリー4コマが隆盛となっていく上で、必ず変化していくだろうと思われるのがコマ割である。転換点となる場面では見せゴマが必要となっていくから「同サイズ」4コマ2本で1ページの進行に不満が出てくるのは当然。偉大なる先達、小池田マヤは『バーバー・ハーバー』(モーニング刊)にて毎話中盤に大ゴマ(半ページ分)を使ってメルヘェ〜ンな妄想を描いていた。この作品は読み方も変わっていて、残念ながら定着は見なかったのだが、2コマぶち抜きでヒロインの全身像を見せるなどの手法はよく見られるようになった。コマの枠線がキッチリ引かれない作品も出てきた。4コマ目でオチない(終わらない)割合が高くなると4コマとショートの境目が危うくなってくるのだが..ひとまず置いておいて。
単純にストーリー+4コマという流れもあるんではないか、と思っていた。ショート作品で、ラスト1ページだけ4コマ(2本)というスタイルは犬上すくね「うぃうぃ・days」(竹書房刊)、深谷かほる「エデンの東北」(ライオリ)がやっている。逆に、4コマメインでドラマシーンだけストーリー漫画の進行にしても良いのではないかと。そうしたらすでにありました。鈴城芹『JC探偵でぃてくてぃ部!』(comicREX)は毎回冒頭とラストの数ページがストーリー漫画、中盤が4コマで進行するスタイル。しかも中盤の4コマは小見出しの付く正統派。何ちゃってとは言うが探偵ものなので、事件発生の冒頭部と謎解き(or後日談)のクライマックスはストーリー漫画のコマ割が違和感無い。作者はまさにその考えで今まで4コマしか描いたことが無かったのに挑戦してみた。惜しむらくは4コマ誌を持っている一迅社で本作が載っているのはストーリー漫画誌であること。そしてそのせいで単行本の試し買いで発見したのがつい先日となってしまったこと(本作は2011年から連載中である)。このスタイルが4コマ誌で見られることになれば、ストーリー4コマの新たな展開が期待出来よう。いや、すでに「きららミラク」誌(芳文社)の連載作にあるかも..。

-REVIEW-
クール教信者
前述の「まんがライフSTORIA」誌でも連載中の4コマのショート作品を載せており、そう言えばここ1年くらいでよく見かけるようになっている。つまり試験作が悉く連載となっているわけで、正直現在のトレンドを現しているのが作者だと思っている。口数の少ない優等生が主人公で、基本人情話だがちょっとだけ鬱設定が入っている『小森さんは断れない!』(タイオリ)や、高ビーなお嬢様に出来た初めての友人が無口な変人で、振り回し回されつつも徐々につながっていく『おじょじょじょ』(ライフ)は、学園ものの王道プラスドラマ性を持ったストーリー4コマの萌芽と言って良い。WEB漫画では別ジャンルを手掛けているようだが、4コマの勘所もしっかり掴んでいるとは逸材である。


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