-REVIEW-
先日、読んでいた数少ない作品が終わってしまってちょっとだけがっかりしていた「きららMAX」誌(芳文社)で、早速始まった新作が面白そうでテンション上がる。荒井チェリー『いちごの入ったソーダ水』(MAX)は他作品に輪を掛けた歯に衣着せぬ言動の後輩たちが素敵すぎるし、鈴城芹『ホームメイドヒーローズ』(MAX)は作者の世界観が好きな者にとって魔女論に続いてヒーロー論が読めるとは望外の喜び。ただやっぱりビジュアル系は書店にしか置いていなかったり、付録が付いたりで立ち読みで追いかけることが難しく、定期購読するまでには至らないから単行本で追うつもり。このところそんな流れで今までマトモに読んでいなかった作品を単行本で再確認することが多くなった。良い時代である。
榊 『CIRCLE
さーくる』全5巻(きらら刊)
大学の漫研を舞台にした、まさに王道の学園ものとばかり思っていたら、ちょっと懐かしいタイプの学園もので、ズバリゆうきまさみ「究極超人あ〜る」の系譜に連なる。そこのところ世代的にどストライク。読み出して止まらなく、1月経たずに全巻揃え。男女入り乱れるサークル活動でありながら、会長曰く「なんて健全なんだ俺たちは」でも「これはこれでいい」という日々。先輩後輩といいながらもほぼ同い年の集団行動は、過ぎ去った今たまらないものがある。
現在はビジュアル系ではホントに珍しい会社もの『先輩には頭が上がらない!』(キャラット)を連載中。アラサー、アラフォー!?世代の読者を引き込んでくれる存在かも知れない。
こもわた遙華 『ら〜マニア』全3巻(ぱれっと刊)
今は亡き「ぱれっとLite」誌(一迅社)に載っていて、HPの無料コーナーにも1〜2話が上がっているのでチラチラ気になりつつ、機会があればと思っていたが、最初に出会ったのが単行本2巻。普段ならスルーしてしまうパターンなのに、手に取った瞬間これは買いだ、と。所謂「ジャケ買い」をしてしまう程に格好いい表紙絵は作者の経歴を見て納得。ゲームキャラクターのSD化(2頭身キャラ)を手掛ける原画マンとして著名であり、ラーメンの精(SDキャラ)の完成度が高いのは当然なのだ。さらに、現在は(残念ながら)ストーリー漫画を描いているように展開も巧み。ラーメンブログでカリスマとなっている主人公にナンバー1を決めてもらおうとラーメンの精がやってきたら、実体はダメ人間でまずは更生から..と結果居候することになる、というドタバタコメディでありながら、主人公の成長譚もきっちり描かれている。2頭身キャラと人間を絡ませた4コマとしての構図にはだいぶ苦労したようで、掲載誌の休刊のドタバタがあったせいとも思いたい、オリジナル4コマからは一歩引いた感じの現状だが、再び新作をと待ち焦がれる出版社×→読者も多いハズ。
天王寺キツネ 『うぽって!!なの』(なのA)
角川書店の「4コマなのエース」誌はメディアミックスを公言しているがだいぶオリジナル作品も並んできている。原作のラノベにイメージイラストがあってアニメのキャラクターがいてストーリー漫画があって4コマバージョンがある、となると別人が描けば好き嫌いが出てくる。必ずしもメディアミックスが万能ではないという証左である。そんな中、さすがにオリジナル作品の本人が4コマも描けば受け入れられないわけがない。世界の銃火器の擬人化学園ものは、マニアでなくともキャラクターの多彩さに目を見張らされる。相応の知識と作画力が無ければ成立しない世界観である。そして歴史(現実)が裏に絡んでくる権力闘争、派閥争いは読み込ませる引きを持つ。雁屋哲・池上遼一「男組」を彷彿とさせる。女子高が舞台、というのがイマドキ。
4コマではその初等部を描く。ちびっ子たちのいがみ合いもまた白熱しており、創刊以来順調にストーリーが進展している。恋愛の絡まないストーリー4コマの嚆矢と言えそうだ。
てっけんとう 『うちのざしきわらしが』(きらら)
数あるナンセンス系、さらに王道キャラといえる座敷童子を主人公にした作品の中で推したいのが本作だ。(ビジュアル系としての)可愛さがない、我がまま、食い意地が張っているときて田舎の婆さんから大学生の孫の下宿先に送りつけられるところから物語は始まる。まあ厄介払いというより田舎にはすでに成長した主人公の姉がいて婆さんと同居しており、「あのこらもわたしらと同じようにうまくいくじゃろ」と決して見捨てたわけではないようなのだが。見込みどおり世話を焼かせながら親子のような関係性を築いていっている。このマイナスからのスタートというのが作風にマッチングしていて、さらにネガティブに向かうでもなく進展を見せるわけでもなく。落としどころの見えないナンセンス4コマでいて時折母性愛、父性愛を前面に押し出した回があったりと、読み「進めて」いく内に主人公がたまらなく愛らしくみえてくる辺りに非凡さを感じる。
作者の本領は物言わぬ鳥(ハト)をメインに据えた『はとがいる』(角川書店全1巻、続編『はと日和』が集英社の「アオハルオンライン」にて連載中)にあるのだが、その突出したナンセンス性が下地となり、どちらかと言えばアットホーム系に分類される本作がビジュアル系で支持を得る根源となっている。ある種異能を受け入れる器がビジュアル系には(実は)内包されているのだ。