新・現在4コマ漫画レビュー 第32回

(初出:第186号 12.11.20)


-TOPIC-
かねて読みたいけど見かけないとこぼしていた「まんがタイムきららカリノ」誌(芳文社)は、3月1度の季刊ながら順調に巻を重ねている。一体どこに売っているのだ!?と「本屋の雑誌」コーナーを物色しては心の片隅で思っていたから、全く思いもかけないところで実物を見た瞬間思わず二度見してしまった。それは「古本屋の大判単行本」のコーナー。本屋古本屋問わず、4コマ好きには必須の場所に、しかし4コマ誌は置いていない。この考えがつまり、盲点を産んでいた。判型が4コマの単行本と同じ、そして本誌は「まんがタイムKR(きらら)コミックス」シリーズで出されている。この手のアンソロジー集的な単行本形態の漫画誌は以前から出されており、古本屋でも確かに雑誌のバックナンバーコーナーではなく単行本のコーナーにまとめられているのだが、まさか4コマ誌がこうなって出されているとは思っていなかったから、タイトルが見えて一度やり過ごしかけてタイトルが読めて「これかあ!」と二度見。古本屋で発見できたのは今回が初めてで、お陰で年初の創刊号を今になって読むことが出来たわけだが、この単行本コーナーで売られているという事実に気付いていればもっと早くこの話題は出来たハズ。改めて、「本屋の単行本」コーナーを眺めてみると、案の定「カリノ」誌最新号(vol.4)は置かれていた。季刊だからタイミング的に今まで気付けなかったのか、心の眼が曇っていて映らなかったか..実物を手に入れた途端見つけられるという。
ちなみに本誌は(4コマ連載陣も参加する)ストーリー漫画誌であり、4コマ誌とは厳密には言えない。しかし「きららフォワード」誌の先例もあって漫画雑誌のコーナーにあるとばかり。980円という価格、内容も判型も明記されていたというのに、返す返すも百聞は一見に如かず。
ただまあ、そんなわけでNOT4コマなので、内容についての詳述は省いて気になった点を少し。今をときめく蒼樹うめのストーリー作品を初めて読んだが、ほぼ頁4コマで進行しているのに初々しさを感じてしまった。無論ストーリー漫画を描くのは初めてでは無かろうが。そして全体的なカラーを探ってみると、「学園ものあるいは主人公が学生」という括りはあるものの、特に「これがウリ」という点が見つからない。フルカラーでもなし、これで千円弱という値段設定はかなり疑問。ひたすら目を惹くのは蒼樹うめの表紙、そして連載。つまり近年大いに貢献している作者への論功行賞の意味合いを強く感じる。そこにはまるで反発を覚えないけれど、せっかく採算度外視で1冊作っているのであれば、4コマに限りなく近い形のショート作品のみを集めるとか、逆にストーリー漫画家の初の4コマ作品をここで載せるとか、何がしか4コマ漫画の可能性を広げる冒険をしてもらいたい。「まんがタイム」の冠がついている以上このくらいは言わせてもらう。

-PICK UP-
前述の出会いに限らず、このところ古本屋では収穫が多い。いきなり蛇足になるが、水谷さるころ「30日間世界一周!」(イーストプレス)全3巻を先日読破。1年ほど前、この2巻を見つけて作者の作品なんてほんとに久しぶりに見かけたので買おうと思いつつ、続きものの端本なので均一本になるのを窺っていたら、ずっと残っているものの一向に落ちず。している内にちょこちょこ立ち読みしていたら読み終わってしまい。その後1巻はさすがに見つけた時に即買い、そして全3巻と知っていながら最終巻なので滅多に出てこないよな..と半年ほど間が空いていたのだが、このほど出ていてはい、立ち読みにて読了。いや、面白くて読み出したら止まらなくなって読み切ってしまったというのが本当の話。これは旅行記(エッセイ漫画)だが私の4コマ単行本の買い方というのがこのスタンスなので記した。
師走冬子の作品は4コマ誌の連載は全て読んでいる。しかし単行本はというと初期のものくらいしか持っていない。何本も連載を抱え年に数冊単行本が出ている状況で読み返す必要性を感じていないから。そんな中、単行本だけで読んでいるのが『あいたま』(コミックハイ!)になる。2年ほど前に3巻まで買って以来、続刊を目にすることなく、終了したのかどうかも調べずにいたのが先日4、5巻が出ていて嬉々として購入。で後述の単行本を新刊で買いにいったら6巻が出ていたのでまだ連載中と判明(この項書くためにネットで調べて確定)。しかしこの6巻は買わなかった。買えばまた1年半、新作を読むことが出来なくなるから。4コマ誌だけで2日おきに1冊のペースで読んでいて、一般コミック誌まで手を出せる余裕は無い。コンビニ勤務の頃は出来ていたけれど。従ってファンとしてパトロンたるを放棄して古本屋の出待ちである。週刊誌を熟読しつつ新刊を買い揃えるというあるべき姿は、学生時代の終わりと共に続かないと実感した。好きな漫画家が多すぎる。そして未だ見ぬ作品への興味も尽きぬ。そんなわけで古本屋での出会い買いをメインにしているのである。もちろん今、「あいたま」の個人的な新刊はヘビロテ中。すでに三読四読、飽きません。駆け出しのアイドルたちの学園コメディなのだが、いわゆる業界ものではなくてあくまでプライベートを描いているところ、そしてこれも後述するがお約束の先を描けるところで本作は見過ごせない、断然チェックするべき4コマ作品になっている。ただまあ、オチ(連載終了)に関しては特に興味が無い(つまりは永遠に続いて欲しいということ)ので最終巻まで手に入れられるかは未知数。無論現在では古本でもネットでリクエストして入手出来るのだが。基本受け身で間に合う、いい時代になった。
そんな不心得者でも、発売日を目にして本屋に駆け込む時がある。11月12日、阿部川キネコ『パンクかあさんとロリータむすめ』(まんがタウン)1巻。これを何故新刊で買ったかといえば、第1話がいつだったかさっぱり見当が付かないくらい昔だったから。初出を見て納得の2007年。つまり5年越しで単行本化、しかし収録は今夏の掲載分まで。何と当初は年イチの読み切り作品だったのだ。記憶にあるのが隔月連載、それも10年夏以降である。これは試験作からという流れではなく、スペシャルゲスト(作品)の扱い。高橋留美子の正月の「ビックコミックオリジナル」誌での短編シリーズのような感じ。そのくらい、花も実もある大ベテランである。個人的には前述同様に古本屋での出会い買いに任せて読み進めて結果挫折した『辣韮の皮』(ワニブックス)のホロ苦い思い出(5巻..までは読んだと思う。もう手元には無い..)があるので、本作は確実に読み返したいと新刊での入手となった。それぐらい気に入っているのはまず絵柄。作者は作品の雰囲気によって画風を変える器用さを持っていて、本作ではキモかわ系の太いラインを使っている。これがパンク母、ロリータ娘、コテコテの大阪人父という強烈なキャラクターにドンハマり。その三者三様の信条がギャップを生んでトラブルを巻き起こす、コメディ作品であり、親子間の確執と愛情を描いたアットホームものであり、男の子がおしゃれ師匠で親友である小学校が舞台の学園ものでもある。記憶に残っていたのは合間合間のオチ部分でしかなかったのだが、読み返すと毎回の導入が「ある日娘がこんなことを言い出した」という母親の視点だったところが気に入っていたのだと気付く。大人が添え物でしかない作品は巷に溢れていて、大人と子供を主人公に立てた本作はやっぱり新鮮だったのだ。
そして作者に限らず、実力派、長い人気を支持を得ている漫画家は年の功(失礼)を作品に反映している。例えばいじめっ子に対する第3者の介入、という学園ものによく出てくるシーンでは、外(廊下)に連れ出す、戻ってくるといじめっ子が半泣き状態で解決というのがお約束。なにがあったのかまでを具体的に見せてくれるのが前述の「あいたま」であり本作である。後は荒井チェリー『三者三葉』(きらら)で見たことがあるくらい、たいていが流している部分だ。それ自体がテーマではないから現実的な解決法ではないが、応用できるヒントにはなる。その程度には練られていて、よくぞ書いてくれたと納得できる。また作中で主人公自らの主張を省みられるというのも経験の差である。好き嫌いの尺度でしか態度を改められないキャラクターの何と多いことか。こういう視点もある、こういう考え方もできるという提示をしてくれると、読者の成長にもつながるのだが。ただしその主義、主張は強すぎると「こむずかしく考えすぎ!」たつまらないものになってしまう。そこを笑いや関心につなげていくのがプロのお仕事。Tシャツ漫画家がファッションを題材にした作品を描くというのも含め、いやあ、お見事。本作は単行本化を期に月刊連載開始とのこと。あれ?となると以降続刊は個人的には放出待ちの可能性が高くなってしまうな..。


「過去原稿」ページへ戻る

第33回を読む