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年末ということで今年を振り返ってみると、象徴的な出来事が2つ挙げられる。かきふらい『けいおん!』(きらら、キャラット、終了)の終了と、先日飛び込んできた宮原るり『恋愛ラボ』(スペシャル)の来年アニメ化の話である。
前者は一度終了したものの、空前のブームのクライマックスとして昨年末公開された映画に合わせて続編で復活。初期メンバーの大学編(きらら)と、後輩達の高校編(キャラット)の2作が約1年ほど連載されたわけだが、この「秋」にいずれも幕を下ろした。カッコ書きにしたのは以前書いたように今秋の入れ替えは、世代交代を感じさせる長編の終了が相次いだから。本作について言えば、未だに人気の衰えを見せないタイトルにあっての原作の終了であり、そのまま4コマ界の状況変化を現しているように見える。つまり一本柱にしがみつかざるを得ないような運営ではすでにない、ということ。
そしていよいよポストビジュアル系、ストーリー4コマの台頭だ。その意味で、続々と発表されていく4コマ作品のアニメ化にあって後者のニュースは特筆すべきものがある。まず第一に「きらら」系以外の、一般(4コマ)誌からの初選出である点(植田まさし作品など過去に数多の例はあるが現在の流れとは別)。人気作のドラマCD化など、メディアミックスは一般誌でも行われていたが、そこから一歩突き抜けてアニメ化にまで至った作品は本作が嚆矢となる。選ばれた理由はあくまで推測だが、近年の主に特集号での読者を巻き込んだアンケート企画等の盛り上がりにターゲットとのマッチングを見出したのではないか。元々青少年向けに特化した内容の「きらら」シリーズに比べ、主婦層メインの大人向けから低年齢下が進んできた「タイム」シリーズからのアニメ化は、新規読者(青年)層の取り込みが実を結びつつある結果といえる。これが成功すれば新たな大鉱脈を掘り当てたことになる。一つ不安要素が作画的な問題。連載当初に比べ瞳のグラデーションなど、より少女漫画っぽい繊細なタッチに変化していて、そこのところが吉と出るか否か。勿論原作抜きにハマるキャラクターとなる場合もあるけれど。まあこれは蛇足として、本作はストーリー性のある4コマ作品である。特に最初期の、単行本1巻分を丸々費やしたチーム結成のエピソードはストーリー4コマであったと言え、この点も近年のアニメ化作品と違う。その後はストーリー性がどんどん薄れていって、現状は主流のエピソード積み上げ型なのだが、出だしの描かれ方は重要視したい。アイキャッチで4コマ由来の句読点を打つか、追加エピソードでドラマ仕立てになるか、それとも今まで見たことの無い手法が使われるのか、など演出も気になるところ。いずれにせよ4コマのメジャー化を更に推し進められるかの試金石となることは間違いない。
ストーリー4コマの台頭を裏付ける話がもう一つ。現在芳文社のHP、「きらら」ページ内でパイン『きしとおひめさま』(ミラク)の紹介ページが特設されている。SFヒーローもののストーリー4コマと言える本作は何しろ設定が込み入っており、初見の読者がついていけない可能性が高いし既存読者も連載ペースを考えると内容を追いきれない難点がある。その弱点を補う企画ページの存在は自ずと力の入れ様や人気のほどが伺えるというもの。さらに周辺情報としては、「カリノ」誌同様のアンソロジー形態を取る季刊本「つぼみ」が休刊。注目すべきはいくつかの連載が引き継がれるという点。もし「カリノ」誌に移るのであれば、コンセプト不在とした本誌に百合系という特色が出てくる。これはストーリー誌の話なので関連性が無さそうだが、専門誌の休刊と「まんがタイム」の冠がつく誌への吸収は、今後芳文社が「まんがタイム」ブランドで総合展開を目論む姿勢と見えてくる。つまり4コマ発の多角展開が本格化するということで、当然その成果は4コマにフィードバックされるから新たな展開に期待できる。秋口に感じた世代交代はどうも現実となりそうだ。
とまあ、まるきり芳文社の行く年来る年になってしまったが、これが軌道に乗れば4コマ界に波及して新主軸となっていくわけである。