-TOPIC&PICK UP-(苦しいか)
前回の続き。「MOMO」誌(竹書房)10月号での伊藤黒介『イヴ愛してる』にてコラボ企画は無事終了。よくよく見れば『ベルとふたりで』の主人公の母親が全く違うキャラクターであったり、やはり作品世界のリンクは意図していなかったようだ。ちょっと残念ながらも本作の筋自体は満足のいく内容であったので予想を外したショックは消え去ってしまった。この章の結論となる人間に対する一考察は、センテンスが短くまとまっていて何より読み易かった。
さておき。今年の秋の入れ替え期は長編作品の終了が多くて感慨深い。といって、ほとんどが数多の連載を抱える売れっ子であるから長編なのであって、新作出したからこちらは潮時か、といった程度の扱いでもいいくらいなのだが。長編だけにそれなりの思い入れはある。
佐藤両々『そこぬけRPG』(タイオリ、終了←以下略)は終わる終わると分かっていて、クライマックスはきちんと主人公の成長した姿が描かれていてジンときた。ヒロインは涙の一つくらい流しても良かったんじゃないか。またラストシーンもタイトルに掛かって..いい作品でした。岬下部せすな『えすぴー都見参!』(スペシャル)もずいぶん前から主人公が動き出す=終わる流れになっていて、作者は本作しか今は4コマを描いていないので勿体無いと思っていたのだが。鋭意執筆中のストーリー漫画のようにちゃんと収束して幕が下りてしまった。後藤羽矢子『プアプアLIPS』(ライフ)もまた、逆告白から新生活へ進んだところで大団円。など、近年の最終章型が多かった中。美月李予『貴美TALLEST』(ライオリ)は懐かしのくっついたところで即終了の形。お互い相手を意識しながら踏み出せず延々..のパターンではこの終わり方がベストなのだろうか。しかし今や珍しい型であり、一つの流れにピリオドが打たれた感じがする。勿論飾るにふさわしい大長編だった。
一方、長編であっても相変わらず唐突な終わり方をしてしまうのがコメディ。重野なおき『ひまじん』(タイム)や師走冬子『うさぎのーと』(ホーム)など、読んでいて「最終回です」で驚くパターン。実際はタイトルページで告知されているから読む前だけど。荒井チェリー『ワンダフルデイズ』(MAX)は「きららMAX」誌創刊からの作品だったから掲載誌における一区切りでもある。それなのに、すぐ新作が登場する辺り、売れっ子の作者ならではと思わず苦笑。残念だったのは鈴城芹『くすりのマジョラム』(MAX)も終わってしまったこと。魔法(魔女)の解釈がなかなか面白くて、毎回講釈が楽しみだったのだ。おーはしるい『リフォーム!』(ファミリー)は当初の想定されるカップリングに横槍が入り..と、他作品と似たような展開になってきたなと思ったら結論を出さずに締めてしまった。ムムム、この辺り少々ネタ切れも見え隠れする。
これらの長編は今や単行本でしっかり残されているから、今後も最初から読み出す(返す)ことが可能である。つまりここ10数年で定着した、作品として保存される4コマ群と言える。
これに対し、ようやく出た単行本も傑作集で、読み捨て時代の4コマを継承していた青沼貴子『ぐーすかうめ実さん』(ファミリー)が終了。企画ものに続いての終了に、一つ時代が移った実感がある。まだまだ多くの長編が元気に続いているが、この秋の入れ替えで4コマ誌の様相がかなり大きく変わりそうな気がする。無論ポストビジュアル系4コマの主軸はストーリー4コマである。新興「きららミラク」誌(芳文社)からもいよいよ単行本が刊行され始めた。気になることが一つ、台詞が多いので読むのにえらく時間と体力が要る。特性上、どうしても使わざるを得ない説明台詞は必要悪に思えるが、本来4コマは基本として台詞の多いのはNGである。4コマの仕様自体もまた変化していくのだろうか。そこで冒頭の話を読み返して欲しい。センテンスが短くて読み易い。ストーリーを練り上げると共に、台詞を洗練させる。流行は易きに流れるものではなく、現在を越えるものでなくてはならない。今後お目に掛かる新たな長編に望む。