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まず大前提として置きたいのは、我々読者はノーリスクで新人を斡旋してもらっているのだから、どうこう言わなくとも良いのである。まして新人賞の類は形がどう変わっても在って然るべきもので、今から言う話は毎年の事ながら単なるお節介、いや戯言でしかない。
にしても。今年もまた、芳文社と竹書房の新人賞が発表され、両社とも大賞該当無し。特に竹書房Y−1グランプリは4年連続大賞を出しておらず、もはや疑問ではなく確信として、この賞自体に問題があることが明らかになった。5年、わずか5年という「歴史」をもって今年度から「新人杯」に先祖返りである。ライブドアデイリー4コマとの共催も解消されるようだ。今年の準グランプリ(つまり、実質大賞)はそちらからのエントリー作品、おりはらさちこ『Dreams Come True』であったが、ネットでフルカラーで掲載されていたのであろう作品が白黒2色で発表されるから薄ボンヤリとした印象しか持てない。そして本作が今後4コマ誌で読めるわけでもない。グランプリ=最優秀であり、デビューとは全く別物というのはコンセプトとして筋が通っている。それで大賞が5年で一度しか出なかったというのが理解し難い。ここが反省点ではないかと思っているのだが、どうも、懲りてはいないようだ。
新人杯の概要は、毎月締めで月間賞を決める→各月の受賞作から最終エントリー作品絞り込み→年間大賞には賞金+本誌連載と、Y−1グランプリからライブドアを除いたというだけの変更のみ。そして年間大賞になったら連載「確約」というハードルの中途半端な高さ。芳文社が反省を踏まえて「掲載権」を副賞としたのをご存じないのか、他社に倣うを潔しとしないのか。ともかくこれではここ5年でやってきた流れと何ら変わらないであろう。何で毎月の大賞は決められて、年間の大賞は「該当無し」となるのか。←この段はおそらく来年の今ごろも使うことになるだろう。
新人賞の枠が毎月2ページあって、必ずそこに投稿作を載せなければならない、かならず1作でなくてはならない、この時点で何か間違っていると思わずにいられない。広く人材を求める姿勢に見えないのである。
一方、同じく「レベルは高いものの」大賞に値する作品無しの判断を下した芳文社新人賞。「どこかでみた印象の作品が多く新しさを感じられなかった」としながら「読者におもしろいと思われる作品を考えて」という総評には矛盾がないだろうか。「読者のニーズに応えているからこそ」幼女が主人公の作品がずらりと並んでいたり、人情話を締めにもってくるのが主流になっているのは似たり寄ったりではないと。新人らしいチャレンジ的な内容を望むなら、何故に選考者、冠が大御所なのであろう。「お色気、下ネタにいってしまい、まんがタイムとしてはマイナス評価」という、努力賞の幾花にいろ『机ノ上神話』を評したコメントには驚いた。ブランドに見合いつつも革新的な作品、なんてプロでも数えるほどしか生み出していないレベルを新人の投稿作に求めるなんて!
大賞準大賞を選出せずに努力賞なんて急遽設定している辺りも手詰まり感が窺える。権威など付けずにマンガスクールとした方が良いのではないか。実際新人枠はゲスト登場も含めて割合フリーに設定しているようだし、統合してスクール出身で連載まで出世した漫画家、作品の中から「新人賞」は決めれば良いと思う。これは竹書房にも言えることだ。そうすれば読者不在の該当無しなんて興醒めな事態を繰り返すことは無い。プロになってからの賞では同業者同士で軋轢が生まれる?以前に述べた持論を繰り返す。漫画賞をビジネスライクに捉える姿勢を良しとしない歴史は、4コマには無かったはずである。名より実を取れ、奇しくも芳文社ではこれをすでに実践している。まんがタイムきらら系列は新人賞など設けず、眼鏡に適えば即掲載となり、人気が取れなければ即終了という極めてシビアな募集を行っているではないか。それで一般人をして「出版大手より今や稼いでいるんではないか」と言わしめる隆盛を誇っている。この主義を内包していて大賞が選ばれない「まんがタイム新人4コマまんが大賞」は益々空虚な代物に映る。10年に一人の大型新人の為に大賞をしまって置く必要は無いだろう。寧ろ安売りとこき下ろされても積極的に新しい血を求めて欲しい。
というのも、漫画賞(新人賞)を通じて眺めると新人不作と取れる現状は一昔前のストーリー漫画業界に重なるからである。やっぱり4コマは漫画一般から見ればどこか遅れている。試みに今後の新人が生み出すトレンドを予測してみる。といっても簡単で、要するにストーリー漫画の現在の主流を踏まえるだけだ。多様化が窮まれば本物、本格派と評されるにはブレーンの存在が必要不可欠となってくるだろう。それに伴うより高密度のディテールやテーマ性、ドラマ性をもった作品が出てくる。つまりポストビジュアル系はストーリー4コマである。従って新人に求められるのは完成度ではなく、独特な画風作風、これに尽きる。ネタや構成はブレーンが考える、そんな時代に4コマもなっていくはずだ。だからこそ作品を評しての新人賞ではなく、可能性を捉える選考に切り替えて頂きたい。今年はこんな事を思った。