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今回は私事。2年ほど前に話題に乗せ、以来やっぱり手に入っていなかった希少本をついにゲット。海藍『トリコロ
MW-1056』(メディアワークス)1巻の特装版は、通常版と違い本編の1巻が付録扱いで「稀刊ツエルブ」2008年13(!)月号に付いてくるという遊び仕様。2冊セットで出て来ることなど無いと思っていたが、巡り会えるものである。
「稀刊ツエルブ」などという刊行物は当然無く、中身は作者の未収録作品を網羅したもの。「トリコロ」の芳文社「きらら」誌での末期、単発ネタオンリーの回から、ある程度続いたものの単行本化に至らなかった作品「ママはトラブル標準装備!」、そして投稿時代の作品まで、おそらくほぼ100%の商業誌掲載作品が収められている。断定できないのは初出が明記されていないからで、資料的価値はその点で失っているが、ファンとしては作者の経歴をつぶさに拝読出来る、実に貴重な付録である。
アニメ風の絵柄でどうして4コマからデビューしたのか当初疑問だったが、試験作を見ればOLものありギャグ調ありと、新人らしい設定から試行錯誤してファミリーものに得手を見出したものと分かる。私が注目し出したのは、作風が固まった頃からであった。そして後日「トリコロ」にて使われたネタなど出てくる辺り、ネタの枯渇が活動休止の遠因かもと伺わせる。
余白ページには最近の画風で旧作のイラストが載せられており、それを見ると最後期にはさらに絵柄が変わっていることが分かる。意外とすでにイラストレーターや原画マンとしてメディア復帰しているのではないかと、思わせるようなトレンドを踏まえた画風である。
すでに語った項であるので繰り返さないが、歴史の1ページを飾る一人として重要な漫画家であることは間違いない。
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UP-
夏に出た「宮原るりコレクション」(まんがタイム増刊)は、巻末企画もの「おはなしあやちゃん」を一挙収録しており、ファンには垂涎の一冊となったが新規読者の反応はどうだったかな?とフト疑問に思ってしまった。取材ネタの単元で括れる「みそララ」(タイム)はともかく、「恋愛ラボ」(スペシャル)は反目があってまとまった経緯を踏まえた上でのグループと、理解出来るだろうかと。こんな事を心配するのはファンだからであって、初めて読む人にとっては何ら意識するところではないのだが。一定期間をブツ切りにして提供するこの手の特集号は、昨今の作品ではちょっと無理が生じている感じもする。
エピソード積み上げ型の作品は、ストーリー4コマと従来の4コマの丁度中間に位置している。つまり1号も外せないわけではない代わりに、どこから読んでも良い、という訳でもない。単行本を1巻飛ばせば、キャラクター相関図の微妙な変化や、以前のエピソードを踏まえたネタが理解出来ない状況になる。
だから今回の特集号は作者本人の責任編集という作りでエピソードがセレクトされており、流れを追いやすいように工夫されている。それでも尚、最初期の展開を読まずして楽しめるのかと、勘繰ってしまうのである。
特集号が出されるのは人気の証。拡販効果も期待できるこの増刊は決して要らないものではないのだが..廉価版の新しいスタイルを模索する時期に来ているのではないかと思う。