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芳文社の刊行ラッシュが止まらなく、ほぼ長期連載=単行本化の図式が整ってきて目出度い限り。2年続けば分量的にまとめられるのだから出して欲しいという大願は叶えられていないものの、これ4コマの慣習的に言うとちょっと微妙な問題であることに気付く。
好例は今月単行本1巻がやっと出た南京ぐれ子改めだいぶ経つか、高嶋ひろみ『ポンチョ。』(ラブリー)。作品自体の初回は07年で、すでに3年ほど経っているからやっと、と言いたいところなのだが。実は07〜08年は断続的な掲載であり、連載作品ではない。名目上はゲスト登場の読み切りつまり試作品で、好評を得てシリーズ作品となったが単行本化の対象ではない?期間が1年以上あったのだ。09年から本連載となっており、おそらく1巻はここからの回と、それ以前についてはやっぱり選り抜きで収録されるものと思われる。だから単行本化は、1年半ほどの連載でという意味では早いくらいと言えてしまうのである。
昨今の主流として、再三申し上げているようにエピソード積み上げ型の作品が増えているので試験期間といえどつながりのある回は収録候補に挙げられるから、限りなく2年分=単行本化に近づいてきているものの。やっぱり最初期の印象があってのヒット作と考えると完全収録という形が読者にとっては歓迎すべき状況となる。
青沼貴子『ぐ〜すかうめ実さん』(ファミリー)もようやく来月に単行本化。こちらもコミックスは「かあさんはテヌキスト」と改題されることから間違いなくテーマ括りの傑作選となろう。うめ実さん=かあさん=主人公で、改題の意味がイマイチ..よく分からないけど。
とはいえいい流れになってきている中。トノ・アンナ『ヒーロー警報!』(ラブリー)が先日単行本になったばかりというのに唐突な最終回を迎えた。作者柱コメントでは再起を誓っており、巻末も再登場にご期待くださいという妙な感じなので打ち切りというわけではなさそう。作者は同人活動も続けており、体力的にしんどくなったか。単行本化に際し、描き下ろしだPR活動だと連載以外の部分で忙殺される場合が多いようで、あんまり過剰では..と危惧するものの、これは例外と見たい。
-PICK
UP-
よく使われるが、滅多に見られないという矛盾した表情がある。怖い顔、というのは4コマにおいては腹黒キャラが暗黒面をさらけ出している場合に見せる表情で、大抵背を向けられた状態で描かれる。つまり大方「顔は描かれない」。その顔を見ている相手の怯える様、台詞から想像して楽しむパターンで確立されている。しかし極まれにその顔が見られる。無論描けるに越したことはないわけで、作者の腕の見せ所とも言える。今回は師走冬子『奥さまはアイドル』(MOMO)にて、主人公の恐ろしい表情を拝見出来た。役者として迫真の演技をする、出来るというところが主題だったので、一般的な用法とはちょっと違うが、可愛らしさが売りの作風から一歩も二歩も進化した感じでなかなか、良かった。近作はドラマ性が見え出していて、こういった表情も描けるようになれば尚深みを増してこよう。
辻灯子の新連載がどちらも面白い。新連載といってもすでに半年ほど、経ってしまっているが。ロングランだった「ふたご幼稚園」などほとんど終わらせて、始まったのが『ただいま独身中』(ラブリー)と『よゆう酌々』(タイオリ)。「ただいま〜」は作者定番のタイトルであり、今までは職場、学校などを舞台にした群像劇であった。今回はちょっと趣向が変わり、OLである主人公のプライベート、婚活が中心に描かれている。片や離婚を期に小料理屋を引き継ぐことになった若女将が主人公の「よゆう酌々」。譲り受けたといっても一から始めなければならない状態で、ようやく開店までこぎつけた。両作とも展開というか筋を楽しむという、今までと別の一面が見え出している(「帝都雪月花」(芳文社刊)という前例はあり)。ストーリー仕立てとなっているわけだが、元々ドラマ向きというか、実写向き?なキャラ設定なので違和感無く。相変わらず説明不足な感じのオチの付け方も、芝居掛からぬキレの良さにつながってプラスに作用している。
-REVIEW-
佐野 妙
先ごろ終了してしまったが、仲良し姉妹の2人暮らしを描いた『Smile
すいーつ』(ファミリー、終了)で、バレンタインチョコの大人な渡し方を読んで感心したことがある。すかさず新連載、『小悪魔いもうと』(ファミリー、まだゲスト)が始まった作者はすでに押しも押されぬ人気漫画家。竹書房「まんがライフMOMO」誌(竹書房)でも安定した人気を誇っている『森田さんは無口』と、チラチラと読んではいたものの、物静かな優等生という主人公(キャラ)はそれ自体が目を引く要素でもなく。結果特集号を買ってじっくり読むまで紹介を待たねばならなかった。
キャラ設定は今言った通り王道過ぎるくらいなのだが、地に足が付いているというか、納得させる裏付けを持った描かれ方をしている。つまり前述の森田さんは、色々考え過ぎての結果的に無口であり、底の知れない(理由の描かれない)無言ではない。受け身がちの性格から親友は(対照的な)おしゃべり好きで行動力のある、引っ張ってくれるタイプと、かなり説得力がある。読者が共感できるようなエピソードで綴られたアットホームコメディを、流行りの設定で見せてくれる実力派といってよい。