新・現在4コマ漫画レビュー 第15回

(初出:第160号 10.8.20)


-TOPIC-
前回紹介した、青沼貴子『ぐ〜すかうめ実さん』(ファミリー)だが、1年ほど前から、誌内企画(1Pもの)で裏話のようなエッセイ漫画も描いている。先ごろその、単行本化についての話が出たのでお伝えする。
連載はすでに7年を数えているそうだ。そして分量がまとまった頃から、担当が変わる度に「単行本を出しましょう」という話はされていたらしい。しかし..その度に「すいません、上がまだ時期じゃないとのことで..」という流れでご破算になり続けていたと。なので「本当に出るんです」となった今回の話も「わたしは信じない」とのこと(もちろんこれはオチですが)。
ということでやはりというか、推測が確信に至った次第。4コマ誌では上層部=会社の判断で、売れそうにない作品は連載が続いても単行本にまとめられることが「なかった」と。(この作品の場合は当初ショート作品だった記憶があるので4コマ「誌」という括りにさせて頂く)
過去形にしたのは現在ほぼ単行本化される時代に入ったから、もう大丈夫と言いたいから。双葉社もまた、単行本化に関しては「社長のチェックが必ず入って、認められなければ出せない」という話が定説化されているそうだ(誰の話だったかド忘れ!)。竹書房は割と前から単行本化に関してはスムーズにいっているが、それでも続刊が出なかったり、未刊行の例は今も残っている。しかし気が付けば、それらの方を例外視出来る状況に、今は成っている。
「読み捨て」から「保存する」4コマへ。それはビジュアル系4コマの定着から広がり、4コマ全体に普及しつつある。あと一歩、今我々はまさに歴史の転換点に立っている。

-PICK UP-
さっぱり買わなくなってしまい、月に1〜2度、大型書店にてルート営業のように決まった作品をチェックするだけになっている「きらら」各誌(芳文社)なのだが、その決まった作品というのが実に良くて、なかなか終わらない。無論ダラダラ続いているだけなら単なるマンネリであって、取り上げるまでも無い。繰り返すが実に良いから、話題に乗せる。
きゆづき『GA』(きららキャラット)は相変わらず作画的な挑戦に意欲的だ。最近では眼鏡キャラの眼鏡が使えなくなって、見えない裸眼で過ごすことになってしまったというのを4コマのルール(制約)の中で表現していた。枠線の工夫が実に見事である。ぼんやりと、輪郭だけがかろうじて把握出来る視界を枠線ごとボカして画面に広がりを見せている。視点の上下移動など、構図を縦横に取りながらも4コマのサイズに収めてあるという..数多ある学園ものでしっかりとオリジナルを主張できてなお、ロングランであるというのは凄すぎる。
すごいと言えば荒井チェリーは「きらら」3誌+「ぱれっと」(一迅社)での連載を抱えるようになってずいぶん経つ。月刊誌と言えど週刊ペースで新作が上がる、しかも全て違う作品という..。ビジュアル系でまさに引っ張りだこの状態だが、時代がちょっとズレていれば作者の作品は一般誌で読めていたはずなのだ。きらら誌での『三者三葉』のブレイクを期に進出した、ホーム誌での「みおにっき」、本家タイム誌での派生作「ゆかにっし」といずれも当時は水が合わず短命だったものの、単行本化されているので今になっても読むことが出来る。読めばまったく、今と変わらぬチェリー節というか..4コマデビュー当初からノリが変わっていないことに気付く。変わったのはつまり、読者(層)になるか。きっと今なら登場即巻頭カラー(表紙)を飾る受け入れ方をされるはずだが..さすがにこれ以上の活躍は無茶というものだろう。それでもタイム系であれば(ほとんどの)コンビニで気軽に会えるだけについ、望んでしまう。


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