続・現在4コマ漫画家レビュー 第22回

(初出:第137号 08.9.20)

今シリーズも100人挙げる、と密かに期していたらば前回で目標に到達していたことに気付く。これで正続合わせて200人ほどの4コマ漫画家を紹介したことになる。我ながら凄いと思うが6年かけて吟味→公開に及んでいるのでのんびりペースではあった。
というわけで本来なら前回で一応の区切りを付けるべきだったのだけれど、丁度まとまったジャンルが残っていたので延長戦。ラストはヒーローもので飾らせて頂く。

なかま亜咲
4コマでヒーローものと言えばゲーパロ。ゲームのキャラクターが世界観がデフォルメされいじくり回される。従って本格的な戦闘シーンが描かれる、複雑なストーリーが展開される..ということは無かった。
おそらく4コマでの正統派のヒーローものは作者の『火星ロボ大決戦!』(きらら、終了)が初ではなかろうか。3年ほど前にもチラと触れたが本作は元々「COMICぎゅっと!」誌(平和出版)でスタートし、同誌の撤退から「きらら」誌(芳文社)に移籍された(当初は「きららキャラット」誌)。きららコミックスシリーズで刊行されている単行本にはその「ぎゅっと!」掲載分も収録されている。後書きによると、開始時は内容を不安視され3ページだけしかもらえなかったそうだ。実力の面もあるだろうがやはり新ジャンルを目指したことがこれで分かる。
世界征服を企むペンギン帝国の魔の手を阻むため、開発された戦闘ロボット。普通の女子高生だった主人公がその操縦士に選ばれる。しかしその戦いは..詳述しないが敵方の雑魚、ペンギンコマンダー達は尻尾を前にぶら下げている..辺りで察して頂く。下ネタ満載のコメディの範疇である。とはいえ、作中主人公のロボが一度は破壊されたり、味方同士でもライバルがいたり、さらに敵方幹部とのロマンスなど、いわゆるヒーローものの要素はふんだんに盛り込まれてある。戦闘シーンもほぼ毎回登場する。はぐらかしがメインのネタなので、残念ながら行き詰まる展開とは遂になることはなかったが、格好つける、見得を切ると雰囲気だけ存分に盛り上げておいて4コマ目でオトすという基本をキッチリ取った、ヒーローものの4コマ作品であったと言うことが出来る。
作者は同時期に「きらら」誌(芳文社)や「MOMO」誌(竹書房)でも同じようにオリジナルの格闘ものなど描いていたが近年は本作一本に集中しているようだった。次は、どうするのだろうか。ストーリー4コマが存在する今、最後に笑いではなく熱さが感じられるような作品も見てみたいと思うのだが。

まがりひろあき
4コマでヒーローものと言えばこちらの方が得手、と読めば誰もが納得するだろう。でも意外に専門誌では描かれてなかったのである。作者の『よいこのしごと』(ライフ)は悪の秘密結社側が舞台。そこに、うっかり間違えて就職してしまった女の子が主人公。
世界観は仮面ライダーを下敷きにしているのでパロディと括れなくもない。テレビヒーローものが子供向け故の稚拙な設定を突いたネタもある。だが、彼らBC団は悪事を働く会社として描かれており、OLとして主人公は直接悪事に加担することなく働いている。そして幹部らも時間がくれば普通にアパートに帰っていく、給料日もある。すでに彼らの活動(経営?)はテレビヒーローものとは言えぬ独自のものに進化しており、サラリーマンの悲喜劇、みたいなのも描かれているのである。日常活写、世相反映など加味されている辺り、これもまたヒーローものの4コマ作品と言うことが出来る。
作者はデビュー作からすでにライフワークとも呼べそうな大河連載を持っている。4コマ誌でも息の長い作品を描き続けていくようだ。

トノ・アンナ
4コマでヒーローものと言えば同人誌的なノリもアリとなる。つまりif...もの、本編から外れた番外編を創出するパターン。
作者は同人作家でもあり、出来たヒーローもの4コマはかつて戦った面子が一般人となって暮らしている数(十!?)年後の世界。『ヒーロー警報!』(ラブリー)は若き頃壮絶な戦いを繰り広げた悪の総帥がヒーローに夢を破られ、一転実業家に転身して成功者となっているという..おっと、主人公はこちらではなく勿論元ヒーローの方。彼は..持ち前の人の良さが裏目に出て、いわゆる世渡り下手、貧乏なオヤジに成り果てている。ヒーローとしての超人的な能力を持ったまま、戦う相手が降参した現在、単なる馬鹿力として迷惑がられるだけのまさに無用の長物。しかし本人は全く鬱屈していない。
この二人が今や無二の飲み友達となって酒場で語らい始めるのが毎回のオープニングだ。そして往時は謎の美女(現・バーのママ)、頼れる少年助手(今は真っ当な若者)だった主要人物らと面白おかしく過ごすのである。とにかく主人公の無欲恬淡ぶりはある意味悟りにも似た神々しさがあり、無論そんな深い哲学は無いのだけれど、元総帥の溺愛する孫娘にとても懐かれているところはヒーローとしての役割を今も担っていることを現している。現役を退いている状態とはいえ間違い無くヒーローものの4コマ作品と言える。
4コマでヒーローものなんて所詮何かのパロディでしょ、と言い捨てることは出来ない。これら諸作を読んでもらえれば分かる通りあっさりとその域を突破して新たなヒーローもの4コマという一ジャンルはすでに築き上げられているのである。

津嶋やすひろ
当初はもう一人、りーた・伊賀のご近所ヒーローもの『ハルマキ!』(キャラット、終了)を挙げたかったのだけれど、ずいぶん前に終わってからさっぱり商業誌には顔を出さなくなってしまったので(同人活動は鋭意継続中のようだ)、残念ながら触れるまで。
別の漫画家の話をして失礼。ただし作者の『放課後必修倶楽部』(ジャンボ)は厳密にはヒーローものではない。大学の映像研が舞台になっていて、そこでアクションヒーローものを撮るという話が出ていただけ..。フレッシャーの作者には失礼が重なるが、内容といい絵柄といいデジャブを感じてしまう。部活が舞台になっていた、あの頃の作品たちを。
昨年辺り連続ゲストで登場していて楽しみにしているのだが、最近載らなくなっている。ヒーローものの撮影風景も出して欲しいし、とにかく正直本作の続きが見たい。

後書き:
さて、前シリーズと違い毎年のピックアップを順次紹介してきたのが今シリーズ。すでに今年に入ってからも注目株は出て来ている。それらを来年紹介するという形で続けても良いのだが。
さすがにまとまった数を出す事は辛くなってきた。ジャンル分けは尚更である。
さらにシリーズがスタートしたのは2002年。当初紹介した方々について、今もバリバリ活躍しているのに紹介済みだから..と現状をお伝えしないのも勿体無い。期待通り、いやそれ以上に進化した作品を読ませてくれる作者は数多おられる。
そこで次回からは、「新・現在4コマ漫画レビュー」と題し、新たな4コマ漫画家を紹介しつつ、最近注目している作品については紹介済みであっても短信でお伝えしようと思う。再び連綿とした内容が繰り広げられることになるが..どうぞおつき合いのほど。
それでは、ひとまず。



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