新シリーズは以下の3つのコーナーでお送りします。ネタバレも考慮してちょっと時期遅れになるとは思いますが、なるべくトレンドに近い話題を提供したいと考えています。一応。
TOPIC‥従来の枕のような、最近の4コマ事情などをお伝えします。
PICK
UP‥紹介済みの中で特に感じたことのあった作者、作品について触れます。
REVIEW‥従来通り、新たに読み出した漫画家、作品を紹介します。
−TOPIC−
2008年末はアニバーサリー一色といった感じで、芳文社「まんがタイムスペシャル」が20周年、「まんがタイムオリジナル」が何と30周年(「まんがタイムラブリー」も夏に15周年)。これらは特集として折々の表紙画を、歴代担当(or看板)漫画家のコメント付きで掲載。懐かしくもあり、また現在は活動が見られない方のコメントが寄せられず、寂しくもあり..。そして新興「まんがタイムきらら」も(独立)創刊5周年を早くも迎えた。兄弟(姉妹?)誌たる「きららキャラット」の表紙は近年蒼樹うめで定着しており、既存誌の執筆陣と今やほとんど被らず独自路線を行っていながらも芳文社の血を感じるものの、本誌は期せずして最初期の看板が早々に下りてしまったせいもあろうか、「顔」の入れ替わりのサイクルがずい分早いように感じられる。という訳で記念号も象徴するかのように連載キャラクター総登場のいわゆる「ジャンプ」風。ビジュアル系の先駆者も確実に老舗化しているはずだが..節目に柱が不在ということなら先行きが少々気になるところ。まあ、すでに枝葉は充分広がっているけど。
一方、こちらは5年目にしてようやく独立創刊を果たした(09年1月号〜)「まんがライフMOMO」(竹書房)。当初からあまり変わらないラインナップのままで今ごろ?増刊から抜け出したわけだが、これは元々「『もも』せたまみ特集号」とでも言うべき扱いだったものが、他の執筆陣も育ってきて長期的に採算が見込めると踏まれた成果かと思われる。丁度竹書房の「クレヨンしんちゃん特集号」が「まんがタウン」として4コマ誌に正式参入したように。今までの特集号的な、企画ものからカットイラストに至るまで看板に頼りきりな状況から、引き継ぐべきところはすでに他の方に任されてあり、改めてライフ傘下の新機軸として冊子自体の培ってきた独自色を伸ばしていくものと思われる。
4コマ新時代を迎えて久しいが、新局面を見る事はまず確実であろう。次の10年(サイクルの早い昨今は5年一区切りか?)はすでに始まっているようだ。
−PICK UP−
年末〜年度末にかけて、慣例通り作品の入れ替え(=最終回)ラッシュが始まった。特に今年は恋愛もので結構続いていた作品が相次いで終了を迎えている。長期連載が終わるのは勿論寂しいことなれど、4コマにおいてはすぐに新作が始まったり、他誌で何作も連載があったりで嘆いている暇は無し。それより、「どう終わったか」が気になるところ。
満足な読後感を与えてくれたのは山田まりお『ママさん』(くらオリ)になる。一体恋愛もの(ストーリー4コマ)は隆盛を誇る昨今、レベルとしてはリスタートを切ったように素朴で素直な筋書きに終始している。開拓者たる小池田マヤのストーリーテリングがあまりに突き抜け過ぎていて、そこから発展というより、市民権を得て改めて4コマの形式でのストーリー展開を試み始めている感じに見える。本作も義理の母との恋に踏み出すというオチはずいぶん前から読めていて、さて、いよいよ直接告白をして気持ちを伝えるしかない状況で最終回を迎えた。作者のエライところはこの際の決め台詞をキッチリと大オチに持ってきたところにある。その直前まで笑いを交ぜ混んでいて、直後には結論を出さずサラリと締めくくる。告白は、すればそこから新たな関係性が始まるわけで、どうしても結果とその後に触ってしまう作品が多い中、そこは触れずとも十分ということを示してくれた。さてそのたった数語で完璧に決めた、気になる告白の内容は..今月27日発売の最終巻にて。
平凡な締めくくりながらも良かったと思えたのは山東ユカ『みずたま注意報』(MOMO)。最終回の柱コメントで、途中で離れてしまった読者へ「これが今の実力です」と謝辞を記してあったが、思うに展開の淡白さを示しているのかと。ライバル対決も入試の障害もあっさりとクリアさせてしまったと言えば言えなくも無い。ただ中盤以降ほとんど形骸化してしまっていた、主人公の特徴「直近未来の天気が完璧に分かる」というのをラスト、きれいに絡めてくれたことでモヤモヤは帳消しになったような気がする。当初はお隣同士ということで「天気を聞く」だけの存在だったのが、そんなの無くたって..と言わせたところで終わり良ければ何とやら、ストーリーとしては仕上がったように思う。「MOMO」誌増刊号時代を支えて来た大作、1月27日に最終巻が出ます。
反対に、ウーム...となってしまったのが鳴海柚来『どこ行く?』(ラブリー)。一般的なコメディ4コマで、ラストもいつまでもこんな感じで..といった極普通のもの。さらに本作は投稿からデビューにつながり、2年連載と無難尽くめで特筆する苦言は無いような感じなのだが。率直に言おう、トリオ立ての関係性から新たに4人目のキャラクターが出て来た辺りから感じていた違和感が、最終回まで消えなかった。ツッコミ役が2人になってしまいしかも振り分けが上手くいっていなかったように思う。そこでこの4人目は出たり出て来なかったりで、ラストに仲良く並んでいる様が不自然に写った。ネタ切れ、人気低迷での打ち切りに近い最終回だとするならば、その辺りが改善されないと致命的ではないかと勝手に危惧している。作者のハイテンションコメディに期待しているからこそ。
最後これは最新情報にて記すのみに留めるが、年内で井上トモコの諸作品が全て休載になっている。事情が明らかになっていないので、いつごろ復帰されるのか分からない辺りかなり不安である。このまま引退..なんてのは杞憂であることを祈る..。
−REVIEW−
曙はる
作者は長く同人活動をしており、商業誌デビューも早かったようだが改めて、4コマ(誌)での活動を期して首尾良く人気作家の仲間入りをした実力派。
すでに単行本も出ており、紹介するのは今さらながらその、単行本を読んですっかり気に入ってしまったのだから仕方ない。テンポの良い作風で何となく好印象だったものの、『キラキラ・アキラ』(ファミリー)は主人公たちがマンションの(上下階の)お隣同士でノリがすでに幼馴染みの域を脱しており、単調なラブコメディとみなしていた。だからついつい、流し読みになっていたわけで..。まとめて読んでみたらなるほど掲載誌が「ファミリー」なのに納得。もどかしい青春ラブストーリーというより家族ぐるみのハートフルコメディに近い。作者に限らずこのところのヒット作の共通点がここにある。今や萌え、ではなく、心温まる人情味である。そういえば、殺伐とした戦争ものが流行るのは平和の証だとか。なるほど、いや道理で..。
同様に、オフィスラブものと思っていた『ベツ×バラ』(スペシャル)も、平均年齢の高い社内にあって唯一の若者コンビとして姉弟(子供たち)のような関係性が随時描かれている。ラブ要素があるからといって即ラブストーリー的な展開を考えてしまうのは、4コマにおいては早計。寸止めのようなエピソードが延々続いていくのが伝統的なスタイルであり、作者変われどしっかり受け継がれて(しかも支持されて)いることが分かる。