4コマが進化している。
すでに1年ほど連載中の、カネコサトシ「ふら・ふろ〜flat&flow」(キャラット、1巻6月28日発売)は1ページ毎に小見出しがついたショートの連作品。これを最初に読んだ時は衝撃を受けた。コマ数もサイズも普通の(ストーリー漫画の)割り方で、決して4コマ作品ではないのだが、内容が極めて4コマ的だったのだ。つまりアパートで同居しているフリーター?女性2人のビンボー(あくまでカタカナの、)ライフというコメディ..これを4コマ誌で1ページ1ネタの構成で描いていることに新鮮さを感じたのである。当初はそれを斬新であると考え、強引でも4コマ漫画(家)として紹介しようと思ったのだが..。気が付けばこの、変型ショートの形式は珍しくない。例えば紹介済みの山口舞子「もうすこしがんばりましょう」(白泉社)がまさにそれ。本作は担当の勧めで描き始めたという、してみると画期的な新手法とはどうも言い難い。
ページ1ネタのショート作品は、思いつく限り和田ラヂヲetc...ギャグ漫画家が描いている形式なのでその辺りを嚆矢とすることが出来そうだが、直接的な影響や繋がりはどうも見受けられない。ページ毎に話が完結というリズムはやはり4コマをイメージしているように思われる。従ってこれらの作品はショート作品の4コマ化、あるいは4コマのバリエーションの一つ、ということが出来るのではないだろうか。
また。
以前述べたように、休刊から復刊したものの依然隔週刊までとなっている老舗週刊漫画誌「漫画アクション」(双葉社)が現在4コマのラインナップでいうと非常に充実しているように見受けられるのだが、ここに一つの問題作がある。問題としたのは内容のことではない。福満しげゆき「うちの妻ってどうでしょう?」(アクション、先ごろ1巻発売)は、作者の奥さんの生態を綴ったエッセイもので、4コマの形式を取りながらショート作品、なのである。均一のコマ割りで、1ページに4コマ2本の構成は基本通り。しかし話は途中でブツリと切れ(<「〜な妻」おわり>などのト書きが一応のサイン)、次のコマからは別の話になる。作者は私的エッセイ「僕の小規模な生活」(モーニング)も連載中で、こちらは完全なショートスタイル。「アクション」誌では4コマを頼まれたが4コマ1ネタの大前提がどうも身に付かず..といったところなのか。
同じように判断に悩む作品が4コマ誌でも連載されている。カラスヤサトシ「おのぼり物語」(くらぶ)は作者版まんが道でストーリー性が強い分連続してみえるだけかも知れない。4コマ1ネタに一応..なっている感じ。
コマ割の均一なショート作品は、ゲーム誌でのエッセイ漫画に多く見て取れる。時にゲームの批評解説やショーのルポなどが描かれるこれらの作品は型にはめた方が読みやすく、定型化されたのであろう。しかし悪く言えば単調なこのコマ割は、内容によって(1コマ当りの)情報量の差が激しく、逆に読み辛かったりもする。福満らの作品はこれらと違い4コマの構成が基本にある上、情報量がバランスよく振り分けられている。これもまた4コマのショート作品化、4コマから派生した新しい形ということが出来そうである。
いずれにせよいわゆる4コマ的な作品の裾野が、発展しつつ広がっていることは間違い無いと言えるだろう。
今回は厳密には4コマでは無い、ということにしてマクラで紹介するに留めるが、4コマにしか興味が無いという方にもお勧めの作品、作者たちである。前置きが実に長くなったがエッセイ4コマの新たな紹介者はこちら。
カラスヤサトシ
作者は通常の4コマ作品も描いているので改めて挙げる。漫画家として常にイケてない感じの自分に視点を当て続けているところは共通するのだが、神経症気味の鬱々としたネタが時折見受けられる福満しげゆきと対照的に、躁的な作風なのが作者。ただし絵柄は何と言うか朴訥そのもの。読者の人気を得たいと話題の萌え現象を追っかけた「萌道」(momo、終了)は、売れるキャラを生み出したいと切り出しながら毎回担当が出す課題に七転八倒する「キャラ道」(momo)へと継続。描けっこないと作者読者とも分かっていながら自虐的というには脳天気な、この一連のルポものショート作品は作者の根っこがギャグ漫画だからだろうか。意味無しがナンセンスに昇華して話題の企画ものとなっている。
これが作者の会得した持ち味であろう、『でかけモン』(タイオリ)は旅ものの4コマ作品で、強引にこじつけただけの動機で近郊の小都市に出掛け、ひたすら歩き回って見つけた作者の心に刺さったもの、出来事だけを綴る。記憶にも残らないこの旅行記は、しかし読者の身近にもある何か妙なもの、ちょっと面白いものを見つけるきっかけを植え付ける。そして作者の真骨頂が前述の『おのぼり物語』(くらぶ)となる。私イコール先生さまではない、読者と等身大の存在であることを強調することで協調感を生み出す作風は決して卑屈に依っているのではないはずである。「笑われ」系を一概に馬鹿には出来ないのだ。
いのうえさきこ
惜しくも終了してしまったが、エッセイ4コマ『かなりあやしい!?』(タイオリ、終了)は言葉についての考察がかなり面白かった。作者は時に専門家とも組んで世の中の珍妙な事象を探求し続けている。私生活はかなりワイルドらしい、連載中の『倒れるときは前のめり。』(ヤングチャンピオン)にその辺りは綴られている。しかし..「ヤンチャン」がエッセイ4コマを載せてますか..。いや別に嘆息する話ではなく、4コマの活躍範囲が広がっている証拠で大いに喜ばしいことなのだが。「ヤングサンデー」(小学館)が相当深刻な不振と聞いたし、ヤング誌=学生が読むもの、という括りは今どき有り得ないのかも(蛇足)。