続・現在4コマ漫画家レビュー 第20回

(初出:第135号 08.7.20)

前回は前置きが長くなってしまったので今回は早々と本編いきます。括りとしては..実績or実力ありとでも申しますか..かなりアバウトデス。

南京ぐれ子
ファンタジー系漫画誌で割合硬派なストーリー作品を描いている作者を、よもや4コマ誌で読む機会が訪れるとは思ってもいなかった。『ポンチョ。』(ラブリー)はハイテンションな女児と姉の彼氏が織り成すコメディ。恋愛ものには程遠い、というのも彼氏は付き合いたてでとにかく会いたいのだが、彼女の方はバイトが趣味で年中留守にしている。結果いつも肩透かしで妹を相手にすることになってしまうのである。両親不在のアパート暮しというのが謎で、彼氏との馴れ初めも不明だったが先日特別編でようやくその辺りのいきさつが明かされた。
重厚なテーマで語られる事の多いストーリー作品とうって代わって、気分転換としか思えない脳天気な内容だが、絵柄にとてもマッチしていて実はこちらが本領なのでは?と感じてしまう。4コマ進出は大正解だったようだ。さらに今後ストーリー作品は別ペンネーム(高嶋ひろみ名義)でやっていくとのことで、実績(ネームバリュー)は4コマに残し、ストーリーは新境地を開くつもりなのかも知れない。それもまた楽しみである。

神堂あらし
ゲームのコミカライズ作品など、新進誌で描いている作者がそのままのテンションで4コマ誌にも進出。『もののふことはじめ』(ホーム、隔月連載)は江戸時代からタイムスリップしてきた武士の居候コメディ。『すもも・あんみつ』(パレット)も鬼ケ島からやって来た姫様の人間界留学記と、ファンタジーの王道設定を衒いも無く描き切っている。よくある異文化コミュニケーションと言ってしまえばそれまで。笑わせて笑わせてちょっとだけ泣かせて、という大衆的な受けの良い展開をスマートに描き切れるのはセンスの為せる技で、作者はそれを持っている漫画家の一人。

猫田リコ
ボーイズ系出身の作者の作風は江口寿史を真似た悪名高い末松某を、真似たような黒と白のコントラストが強調される絵柄。これでギャグまで似通うようならソッポを向いていたであろうが、女性らしい乾いたテイストでまるで見当違いであることに気付く。何度も中断し、再開される毎に見た目の誤解が解けて読み始めるようになった、貧乏姉妹と取り立てたくても結局挫けてしまう借金取りとのちょいラブありコメディ『ココロは錦』(MOMO、終了)はめでたく単行本化されて完結。
その後『LOVE ME TENDER』(タイオリ)という、クールな猫を飼い始めた高校生を主人公にした作品を見かけたが残念、試験作で終わったようだ。「MOMO」誌(竹書房)で「地獄のバニーちゃん」という学園ものが始まったがこちらはショート作品でやっぱり今イチ食指が動かず。4コマの発表を心待ちにしている。

野広実由
ゲーム4コマ出身で、今は亡き「ぎゅっと!」誌(双葉社)でも連載していたようだ。以前紹介した新創刊「まんがドカン小町」誌(メディアックス)に『ぽんきゅ』という作品が2〜3話分収録されており、どこかで見た覚えがあったからあるいはその時のが再録されたのかも知れない。さておき。
料理教室のお嬢様先生が主人公の『なないろレシピ』(スペシャル)、菓子職人を目指す専門学校が舞台の『パティシエール!』(ジャンボ、ファミリー)と女性らしい題材が目立つ。「パティシエール!」などは長期連載であるのだが正直あまり興味の湧くネタではなかった。注目したのは『うちの姉様』(くらオリ)という、東大主席の秀才ながら万事につけて変な姉を主人公にしたファミリーもの。些事にこだわらない、紙一重の天才らしいと言えなくもないこのキャラクターに心惹かれ、他の作品を眺めてみれば「パティシエール!」の主人公も専門生にしては異例の20代後半姐御キャラ。「なないろレシピ」もつまりお嬢様と一工夫あることに気付く。取材もきっちりされており、なかなか読みごたえのある作品揃いで1年ほど前から急に連載が増え、人気漫画家の一人に。
「パティシエール!」は先頃卒業という形で一旦終了(最新情報)。しかし次号から早速新米パティシエ編なる新章がスタートとの事。単行本でじっくり読みながらの後追いでも損は無い。

宮原るり
正統派少女漫画の系譜に列ねることの出来る4コマをまたも読ませてくれる作者が登場した。『恋愛(ラブ)ラボ』(ホーム)は品行方正な生徒会長が恋愛に妙すぎる憧れを抱く裏の顔を持っており、たまたまその妄想現場に出くわした性格男子のワイルド少女を恋愛マスターと誤解し、異性交遊禁止の厳格な校風の中で、密かなヘッポコ恋愛啓蒙活動を繰り広げるという..まあここまでなら通常コメディの域。ネタバレになるので詳述しないが、その後更にスッたモンだあってタイトル通りの集団が形成されていく。ここまでで単行本1巻分を費やしており(4コマなので約2年!)、作者曰く「長い前フリだなと言われ」(単行本後書きより)たそうだが学園の異端児が閉塞された状況環境を打破していくという展開はまさに少女漫画のそれで、「すぎレボ」(小池田マヤ)以来の本格的ストーリー4コマと言って良い。当然?大反響を呼んだか、男性向け少女誌の「エール」誌(芳文社)にも同時連載が始まったそうだ(ごめんなさい、未確認)。
「ホーム」誌(芳文社)では「恋愛ラボ」と同時に巻末目次4コマも担当。姪っ子の愛らしい言動を逃さずネタにしていて、「おはなしあやちゃん」と題し先ごろは2P掲載も果たした。投稿系「全部本音の笑える話」誌(秋田書店)でもエッセイものを連載と、観察系がそもそも得手のようだ。
『みそララ〜今日も明日もタノシゴト』(タイム)は若きライターを主人公にしたルポもので、実際に企画段階から記事になるまでがネタになっていたりと丁寧に取材された内容。
ノンフィクションにフィクションにと、マルチな活動で遺憾なく実力を発揮しており、今さらながら一番の注目株と言える。



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