続・現在4コマ漫画家レビュー 第11回

(初出:第118号 07.2.20)

さて、3回目となった今シリーズも昨年注目しだした4コマ漫画家を紹介していくわけですが。1年、2年..と連載が続いていると、通読している上でやはり目に付きます。まして単行本化までされるとそれじゃ改めて..と読み始めたりするのです。
そこでまずは数年来活躍中の漫画家を今さらながら挙げてみました。

神崎りゅうこ
「きらら」創刊から連載を持っているが、その「たるとミックス!」(芳文社刊)は今読み返すとそれなりに評価出来る。作者はマスコットキャラクターの使い方が上手く、本作では式神の月読が元々紙である事を理由に溶ける、燃える、破れるetc...役立たずな道化役として中盤(登場)から大活躍した。当初の主人公兄妹による人格交代からハプニングが巻き起こりつつの退魔行のみであったらもっと早く終わっていたかも、知れない。
その強みは新作でも活かされており、『start fromレベルワン』(きらら)はゲームの世界から飛び出してきた主人公がマスコットキャラ。タイトル通り弱いこと甚だしい主人公が(彼女にとっては)ゲーム世界の現世でレベルアップを計り勇者を目指す..とは言いつつ同居人達とのゲーマー的日常を描く。ならではのパロディがツボにハマった感じだが、作者ゲームアンソロジーでも執筆しつつあくまでプレイヤーとしての視点を本作では崩していないので純粋なコメディとして楽しめるはずだ。
学園もの『ぷら☆みすらんど』(キャラット)でも弱小キャラが主人公。一応アホ毛がホゲーと名の付いているように伸縮自在で本人の意志と関係なく行動出来る。愛くるしいマスコットに付加価値が付いて、強さの意味合いが違うもののまさに鬼に金棒といったところ。

みずなともみ
魔法の世界から転がり込んできた見習い?魔女が主人公の「魔女っ子@home」(芳文社刊)はビジュアル系「きらら」(のち、キャラット)誌から本家「まんがタイム」誌に移籍された珍しい経歴を持つ作品(ただしタイム掲載分は単行本化ならず終了..)。という事で、コケティッシュなキャラクターをメインに据えつつ作風はファンタジーというよりアットホームタイプ。
そこが魅力らしくよろず屋が舞台の『ベンリ屋なっちゃん』(スペシャル、終了)も続いたし、「ジャンボ」誌での『どきどき女子寮ライフ』も男子寮対女子寮の諍いがメインの一つではあるが全体的にほんわかムードが漂う末永く愛されそうな作品。
頭でっかちのデフォルメタッチは大ゴマでもバランス良く描かれ、狭いコマスペースにあって全身姿が割と出て来るのは高評価。アングルが一定で動きが感じられないところが難点か..。
キャラの関係性は充分練られていると思う。作者はゲームアンソロジーでも執筆し、相当な好き者であるようだが4コマ誌では現状通りアットホームを追求していって欲しい。

奈々緒舞流
「ぷちプリンセス」というおマセな女の子が主人公のファミリーものがヒット作ではあったのだが、残念ながら単行本化はされていない。そしてその後に発表されたファミリーものはなかなか定着せずにいる。『16ビートパパ』はロックバンドの元ボーカルが父親で、という面白そうな設定だがまだ試用期間中である。「ファミリー」誌から「ラブリー」誌に移籍した形で継続しているものの、ゲスト登場までで不定期掲載としか言えない作品。
連載作品は土木事務所の紅一点が主人公の『気分は上々』(ジャンボ)で、ガテン系の中でも負けず姐御肌を発揮して憧れの的になっている。御曹子がようやく恋人候補に這い上がってきたものの、男勝りな彼女に振り回されっ放し。ワイルドな女性に鍛えられるボンボンという図式がハマってきた。
作者同人活動では男前を描く事に熱心のようで、その魅せられた要素を男女問わず主人公に持たせていけば需要が望めると思う。趣味と仕事は混同するとロクな結果にならないけれど、キャラ立てという点では大いに強みとなるはずだ。

たかまつやよい
パチンコルポものから成年向けまで幅広く活動する、男女2人組のユニット。はいからさんを彷佛とさせるじゃじゃ馬娘が主人公の大正浪漫「大正まろん」(竹書房刊)は戦時下の恋など絡めて気に入っていたが、以降魅かれる作品がなくて読まず仕舞。気が付けば各社に連載を持つ売れっ子に..。
ペット大好きで私情に走りがちの店長としっかりもの店員のコンビ『ペットショップライム』(ファミリー)、奥さんはまだ学生の『奥様は女子大生』(ラブリー)、社長の娘はあえて普通のOLとして入社..という『はるうらら』(タウオリ→タウン)と、あれ?古巣たる竹書房で連載無し。新作学園もの『Hiスクールゾーン』も「ジャンボ」誌だ。ぶんか社(みこすり半系)でもオリジナルは現在無し(編注:下段に補足がございます)。内容重視故の執筆状況と思われるからつつくような話ではないが。
ともあれ各作品とも設定は普遍的ながら人間関係が密に描かれており、ほとんどロングランになっているのは素直にうなずける。「奥様は女子大生」ではマンション購入→欠陥住宅で仕方なく実家に居候..など、単なるコメディに留まらずドラマ性もふんだんに取り入れられている。シリーズ構成など分担で作業しているユニット漫画家のこれは強みか。単行本でまとめて読みたい漫画家の一人。

森島明子
作家、中村うさぎの浪費生活を4コマ化した「ショッピングの女王」(竹書房刊)は楽しく読めたが後半エッセイコミック化して4コマとしての評価は出来なかった。そのせいか中断もあったがロングラン作品である、3人娘の同居生活『天使の住む家』(タウオリ→タウン)など始めから読んでいたものの紹介まで至らず。先ごろ終了した、亡くなったママの代わりに?女装して生活するという『パパままりばーしぶる』(ホーム、終了)辺りからようやく注目するようになる。オンオフの切り替えを女性らしい目線で捉えた笑いが安定してきて、待望の主婦もの『無敵常人ぐ〜たら奥さん』(タウン)も素晴らしいダメ妻っぷり。
新作『お江戸とてシャン』(ホーム)は考証にもこだわった感じの時代もので、新境地を見せられるか。
ところで、作者はストーリー漫画でぶんか社からいくつか作品が単行本化されている。詳細は存じ上げないがジャンルは女性向けセックスハウツーもの、といったところで、つまり少女漫画の内容で行きつくところまで描いているという..。ぶんか社はこのところ投稿系押しでオリジナル4コマに当たりを見つけ辛くなっているが、さすがエロに対するアンテナは幅広いと感心した次第(蛇足)。

富永ゆかり
OLものを描いている..と漠然ながら見知っていたが、ドジOLの設定は数多あるので正直注目はしていなかった。そんな「かなりハッピー!!」(双葉社刊)が終わってからの作品なのだろうか、『すてきなムコさま』(タウオリ→タウン)は気付いたら通読している妙に魅力的な作品。几帳面過ぎる旦那にズボラな妻、という設定は王道ながら本作はもう一要素、マスオさん状態の夫と義父との(半ば一方的な)確執がある。妻に劣らず怠け癖のあるこの父親が時に家長として、時に駄々っ子のように夫に絡んでくる。仲裁役のはずの妻は旦那の肩を持ったり父親に協調したりと、バラエティに富んだ展開でアットホームながらコメディ要素が充実している。あとはスパイスとして義母がもっと活躍してくれれば..と、これは今後に期待したい。
ただ一作だけでは紹介までに至らない。連載中ではもう一つ、動物もので『クロジとマーブル』(くらオリ)があって、これは特集号に併載されていた(後述)のがきっかけで読み始めた。飼育系は実録ものが隆盛で、そうなると読者としては作者ありきが読む動機となり、他はスルーしてしまう。飼った経験の無いもののこれは本音である。しかし本作はれっきとしたフィクションのペットものであった。実録ものとの違いは飼い主のキャラも立っているというところ。もちろんモデルは過去の自分であったり自身の飼い猫なのだろうが、何のてらいも無く飼い主側のドジ話を描けるのはやはり創作ものならではと言える。このままフィクションとしてコメディタッチで続いて欲しい。



編注:
「たかまつやよい」紹介文において、誤った箇所が確認されましたので謹んでお詫び、補足させて頂きます。文脈上当該部分のみの訂正がきかない為、別記させて頂きますことご了承下さい。(07.3.22 発行人)

誤)〜ぶんか社(みこすり半系)でもオリジナルは現在無し。
正)たかまつやよい『みほカジ』は「みこすり半劇場」誌(ぶんか社)で大好評連載中です!



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